2015年7月13日
金融庁に設置される公認会計士・監査審査会はこのほど、監査の品質の確保と実効性向上を目的として行う、監査法人等へのモニタリングに関する基本計画を公表しました。計画からは、金融当局の問題意識、そして重点課題が見えてきます。監査業務を行う会計士は必ず知っておきたいところです。
今年度の基本計画で掲げられた課題は以下の通りです。
(1) 監査事務所の態様に応じたモニタリングの実施
(2) 日本公認会計士協会の品質管理レビュー制度等の総括的検証
(3) オフサイト・モニタリングの強化
(4) 国際的な連携強化
(5) モニタリング実施態勢の検討
今回の基本計画の大きな特徴として、監査事務所の規模による詳細なモニタリングの方針が定められていることがあります。具体的には「大規模な監査法人」「大規模な監査法人に準ずる規模の監査法人」「中小規模監査事務所」に分けたモニタリングを実施するとしています。
まず、大規模監査法人は、国内グループ関係会社等・海外業務提携先との関係も含め、ビジネスモデル、ガバナンス等経営管理態勢等に係るオフサイト・モニタリングを強化。
検査についてはテーマ別検査の徹底など「効率的」な検査を実施するとしています。
大規模な監査法人に準ずる規模の監査法人は、「我が国監査業界における重要性に鑑み、重点的にモニタリングを実施する」としました。
「具体的には、検査を定期的に実施するとともに、海外業務提携先との関係を含むビジネスモデル、ガバナンス等経営管理態勢等に係るオフサイト・モニタリングを併用する」としています。
中小規模監査事務所は、監査事務所に係る情報収集・分析を的確に行った上で、監査事務所の品質管理態勢、監査品質の確認など、基準への準拠性の観点からのモニタリングを実施するとしました。
そして、検査においては、「中小規模監査事務所の体制や設立経緯等に起因するビジネスモデルの検証に重点をおく」としています。
今回の基本計画では、大規模な法人については効率化を念頭にしながら、聞き取り等、オフサイト・モニタリングを強化し、準大規模監査法人、中小規模の監査事務所については、検査などのオンサイト・モニタリングの重要性を強調している印象です。
現在、新規の監査事務所が立ち上げられ、積極的な展開を行っています。
基本計画では、新設の中小監査法人で監査体制が不十分で勧告を受ける事例が増えていると指摘されていることから、組織体制に起因する運営や監査品質の問題点について、厳格なチェックが行われる可能性が高いといえるでしょう。