2017年04月24日
M&Aなどの実務では、株式の取得や売却、またその後の会社運営において、会社法で規定される少数株主が壁になることがあります。少数株主は、株主総会の議決権以外にも様々な権利をもち、権利行使により過半数の所有がなくても大きな影響を与えることもあるため、会計士としても正しく知っておきたいところです。
株主の権利は、議決権など株主総会に関するものが多いですが、少数株主権にも株主総会関連のものは多くあります。
まず、株主総会の招集請求権。株式会社の3%以上の議決権を有する株主は、株主総会の開催を請求できます。なお、公開会社では6ヶ月の保有期間が必要です。また、1%以上の議決権、または300個以上の議決権を(公開会社では6ヶ月)もつ株主は、株主総会の議題として一定の事項を取り上げることを請求でき、また、議案の要領をほかの株主に通知することを請求することができます。
そして、株主総会の招集の手続や決議方法を調査するために、1%以上の議決権を(公開会社では6ヶ月)もつ株主は、株主総会にさきだって、裁判所に検査役の選任の申立てができます。
株主には、会社の業務執行や役員の行為をチェックする役割があります。そのため、会社の体制が大きく変更される際などに、会社や役員の不正等の状況を調べるための権利を行使することができます。
まず、会計関連では、3%以上の議決権、または発行済株式の3%以上の株式を有する株主は、会計帳簿の閲覧・複写の請求をすることができます。また、3%以上の議決権、または発行済株式の3%以上の株式を有する株主は、業務執行の不正等に関し業務、財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てができます。
そして、株主は自ら訴訟を起こすこともできます。役員の不正や定款違反による役員解任の議案が株主総会において否決されたとき、3%以上の議決権、または発行済株式の3%以上の株式を(公開会社では6ヶ月)もつ株主は、役員解任の訴えを起こすことができます。また、株式数にかかわらず、株主(公開会社では6ヶ月保有)は役員の責任追及の訴え、いわゆる株主代表訴訟を起こすことができます。
M&A、事業承継などでは、少数株主の存在により予定の計画に支障が出ることがあり、財務的なデューデリだけではなく、法務的なリスクも勘案する必要があります。今回ごく簡単に説明した少数株主権ですが、権利行使の要件や、また少数株主対策の手法では、複雑な法規定のほか、判例なども蓄積されていますので、弁護士らと協同しながら業務を行い、会計人も知見を広げていくとよいでしょう。