2017年06月19日
事業活動と投資のグローバル化は、会計基準のコンバージョンを後押ししていますが、それとともに監査の技術、品質もまた国際化が求められています。各国の金融監督を担当する当局で構成、情報共有等を行う監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)は、同機関の事務局を東京に設置することを発表。金融センターとしての日本の地位向上へ関心が集まっています。
IFIARとは、51の国・地域の監査監督機関により構成される国際機関。定期的な議論により、各国の監査に関する情報を共有し、金融規制の協調などのプラットフォームとして機能させ、投資家保護や公益向上を図ることを目指しています。設立時から日本の金融庁と公認会計士・監査審査会が参加しており、2007年の第一回本会合は東京で開催されています。
IFIARは、これまで会議等の開催地の持ち回りで運営されており、常設の事務局を置いていませんでしたが、2017年4月に東京に事務局を置くことが決定しています。国際金融行政機関の本部が、日本に置かれるのは初。金融庁は「IFIAR事務局の誘致成功は、我が国の国際的地位や東京の金融センターとしてのステータス向上の観点から見て画期的な出来事」としています。
アメリカ、IFRSの発祥の地である欧州、そして金融市場として注目が高まるアジア諸都市と比べ、日本の国際金融センターとしての地位は相対的に低くなっている印象がありましたが、今後、健全な市場を担保するグローバルな監査品質の確立、向上のために、日本市場のステークホルダーが重要な役割を担うことが期待されます。
金融庁は、IFIAR事務局設置にあたり、2016年12月「我が国で活動する多様なステークホルダーでネットワークを築き、我が国におけるIFIAR事務局の活動を支援し、IFIARが目指すグローバルな監査品質の向上に貢献する」「IFIAR要人との意見交換を通じ、我が国における監査品質に関する意識の向上を図り、我が国資本市場への信頼を向上させる」ことを目的に「日本IFIARネットワーク」を設立しました。
メンバーとなるのは、日本公認会計士協会や日本税理士会連合会といった士業団体をはじめ、日本経済団体連合会等経済団体、会計監査・税務関連の学会、全国銀行協会、日本取引所グループ等。活動内容の一つとして「我が国における監査に関する議論をIFIAR事務局へインプット」することを挙げており、産官学の知見を結集し、IFIARでの議論におけるプレゼンスを向上させる姿勢を示しているといえるでしょう。
現在、監査品質の統一、向上は、世界的な課題。その意味で、金融監督の国際協調の議論において、文字通り東京が中心地となることの意義は大きなものがあります。日本で活動する公認会計士の方々は、監査基準や手法に関する議論が、世界の市場の在り方に直結していること、自身の会計士としての活動がとりもなおさずグローバルに広がっていることに、意識をもつべきなのかもしれません。