2016年10月31日
昨年は長い円高基調を抜けて円安が進行、輸出関連を中心に好調な兆しを見せ始めた日本経済だったが、2016年に入って中東の地政学的リスクや原油価格の低迷、中国経済の減速および先行き不透明感、頻発するテロやブレグジット問題などがあり、世界経済は大きく動揺した。
その状況の中で、グローバルな資金は安全資産とされる円の買いに向かい、再び円高が進んだ。夏になっても傾向は変わらず、年初は1ドル120円台半ばだったものが、7、8月には一時99円台にまで高騰した。
そのため国内の企業活動は、輸出を中心に減速、景気の足踏みが長期化の様相を見せている。また、外需ではインバウンド特需が一服。リピーターの姿は見られるが、消費額は減少している。
個人消費では、暖冬の影響により冬物衣料が振るわなかった。春以降ではゴールデンウイークを前に熊本地震が発生し、観光需要に大きな影を落とした。ただ、春以降住宅着工戸数が全国的に高水準を保ち、雇用も非製造業を中心に堅調に推移している。
関西エリアの景気動向は、輸出、生産、公共投資、設備投資が弱含むなど全般に冴えず、先行きの好材料も乏しい。
全国的には順調な住宅着工戸数も関西エリアは6月に6カ月ぶりに減少に転じた。
また、個人消費は改善の動きが鈍化している。一方で、京都・奈良・大阪・神戸など多くの観光都市を擁するだけに、2015年ごろから好影響をもたらしているインバウンド景気は昨年ほどの勢いはないものの継続しており、関西経済の牽引役となっている。
出所:経済産業省 近畿経済産業局「近畿経済の動向(平成28年9月)」より抜粋
4、5年前までのいわゆる「冬の時代」とは180度異なり、旺盛な求人が見られる。アベノミクスなどによる一定の好影響から、上場準備企業、上場企業の増加また、業績好調に伴う連結対象企業の増加、またM&Aの増加、原価管理などの管理会計の強化、IFRS(国際会計基準)導入、公会計制度導入支援など、監査部門、アドバイザリー部門ともに売り手市場であり、積極的な採用が見られた。この傾向は大手、準大手、中堅すべて同様である。
金融円滑化法の期限が満了し、それまで事業再生中心にFAS系ファームに特需があったが、現在は中小企業の後継者難から事業承継のニーズが中心となっている。
事業承継ではM&Aが手法として使われるケースが多いため、トランザクションサービスが盛んで採用枠が広がっている。
また、従来FAS系ファームには事業再生などのニーズから公認会計士が有利なケースも多かったが、事業承継では税務が大きな要素を占め、承継後に税務顧問になるケースも多く、多くのファームでは税理士法人も併設している状況で税理士、税務経験者の採用意欲は旺盛。
さらに公認会計士、税理士の資格がなくても簿記1級の若手で素養があれば採用の可能性もある。
超売り手市場の状況が続いているが、税理士、公認会計士の受験者がかつての25%減など、母集団の形成自体が難しい状況が背景にある。加えて、最近の傾向として人材流動性の高い業界という特性もあり、税務、会計の有資格者の安定志向、また企業側の内製思考がマッチし、一般事業会社へ転職するケースが目立っている。その面からも税理士事務所、会計事務所の人手不足は続いており、大手税理士法人などでも採用基準が緩和されている状況。
また、昨今はインターネットを駆使した新しいタイプの税理士事務所、会計事務所が業績を伸ばしており、そうした事務所では、かつての先生業からサービス業への転換が見て取れる。そのため専門知識に加えて接客コミュニケーション力が求められ、採用基準に変化が起きている。
さらに、他の主要地方都市もそうであるように、大阪はもとより京都、神戸など関西の都市には地主や企業オーナー、またキャッシュリッチな企業が存在し、こうした顧客を対象にした資産税業務は増えており、相続、固定資産税などの科目保有者または試験勉強をされた方は、更に選択肢が多い状況。
関西エリアの事業会社の採用意欲は旺盛。
高度経済成長期に創業した中小企業の多くは次の代に切り替わりつつあり、新体制の人事刷新にあたり、側近となる管理部長などのニーズがある。
また、ベンチャーのみならず老舗においても、業績好調な企業は上場意欲もあり、管理部門強化に伴う管理職候補、スタッフクラスなど複数名採用する企業も多い。
一方、上場企業においてはグローバル化の推進や税務の内製化を進めており、会計士や税務経験者などの知識豊富な有資格者を中心に積極的に採用しているが、超売り手市場の中、採用に苦戦している企業も多く、採用基準については以前よりも緩和傾向にある。