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監査法人に就職の売手市場はいつまで続くか

監査法人の就職に関して「いつまで売手市場が続くか」という質問を多くの方からいただくので、今後の就職市場がどのように動くのか、過去の推移をもとに考えてみました。

1.はじめに

監査法人の就職売手市場が続くかどうかは、考え方としてはシンプルです。 全ては需要と供給のバランスで決まるからです。

つまりは、以下のようになります。

  • 監査法人で必要とする人数 > 合格者人数 であれば売手市場になる
  • 監査法人で必要とする人数 < 合格者人数 であれば買手市場になる

そのため、

  • 監査法人の人手不足はまだ続いているのか、解消に向かっているのか
  • 会計士試験の合格者数は今後どう推移するのか

という2点について検証していきます。

2.監査法人の人手不足の状況

まずは三大監査法人で売上規模の拡大やクライアント数に対し、公認会計士等(公認会計士及び試験合格者)が増えているのか減っているのか、1人あたりの負担はどのように推移しているのかを分析してみます。

単位は1人あたり売上が百万円、1人あたりクライアント数は社数です。

(1)新日本有限責任監査法人

会計士等1人あたりクライアント数・売上高

2010/6期がいわゆるリストラをする直前で最も人が余っていた時期です。

そこからの推移で見ると、1人あたりクライアント数は2016/6期から、1人あたり売上高は2017/6から減少していることがわかります。

これは東芝問題でクライアントが離反したことによると考えられますが、結果的に1人あたりの負担は若干緩和されています。 しかし、グラフ全体の傾向としては2010年以降1人あたりの負担が増え続けている状況にあります。

具体的に言うと、1人あたりクライアント数は2010/6期から22%増、1人あたり売上は2010/6期から14%増となっています。

会計士等の人数の推移

新日本有限責任監査法人(以下、新日本)はリストラをした2011/6以降、基本的に人は横ばいで来ていましたが、これも東芝の事件の影響があってか2016/6から徐々に減少傾向になっています。

売上も減っているとはいえ、採用によって人手不足が解消しているとは言い難い状況です。

また、三大監査法人の中で公認会計士等に締める試験合格者の割合が少ないと言えます。相対的に若手が減って組織が高齢化していると言えるかもしれません。

(2)有限責任監査法人トーマツ

※有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)は2017年から決算期を変更した関係で2017/6期は期間が8カ月となっています。そのため8カ月分の数値を12カ月分に割り戻しているが、クライアント数はおそらく正確な数値ではない点に注意。

会計士等1人あたりクライアント数・売上高

トーマツも基本的な傾向は新日本と同じです。 トーマツの場合はリストラ数値が反映されたのは2012/9なので、そこで一気に負担が増えています。

その後しばらく横ばいが続きましたが、2016/9期以降は負担が大きく増加しています。

具体的には、2011/9期と比較して2016/9期は1人あたりクライアント数で20%増、1人あたり売上高で25%増と負担は大きくなっています。

(※直近数値は、決算期変更の影響で正確な数値が取れないため、2016/9期と比較しています)

会計士等の人数の推移

会計士等の人数の推移を見ると、基本的には2012/9以降会計士等の数はゆるやかなものの確実に増加しています。

試験合格者の人数が三大監査法人で一番多いので、リクルートに成功していると言えるようです。

それでも前述の通り1人あたりの負担は増えているので、売上・クライアント数の増加には見合っていないと言えます。

(3)有限責任 あずさ監査法人

会計士等1人あたりクライアント数・売上高

有限責任 あずさ監査法人(以下、あずさ)は2010/6以前の数値がとれなかったので、2011/6以降の数値となっています。

あずさも傾向としてはトーマツと同じと言えます。2012/6以降は1人あたりの負担が増加し続け、直近2017/6は2012/6と比較して、1人あたりクライアント数で10%、1人あたり売上高で16%の負担増となっています。

特徴的なのは1人あたりの負担は三大監査法人の中で一番少ない点です。

会計士等の人数の推移

トーマツと同じように基本的にはゆるやかに増加傾向にあります。

あずさはリクルートに強いイメージがありましたが、直近の試験合格者数の推移を見るとトーマツ優位に見えます。

また、三大監査法人の中で一番パートナーの人数及び割合が多いと言えます。

3.会計士試験の合格者数の推移

まず、過去の全体の推移を説明します。

左から見ていくと目につくのは、2007年と2008年の大量合格時代の異常さ。合格率で見ても異常、人数で見ても異常です。ここで無理やり合格者数を増やしたことで、監査法人は就職難に陥りました。

前述の表を見ていただければわかりますが、監査法人は三大を全部あわせても会計士は15,000人もいないのに1年間で3,000人も合格したら、それは就職難にもなります。

そして大量合格で人気が出て2010年にかけて受験者数も大きく増加しますが、今度は監査法人が飽和状態で合格者数を大きく絞っています。特に2010年は7.6%と2011年は6.4%と極めて合格率が下がっています。また時を同じくして監査法人の就職難及びリストラという問題も発生しました。

試験は難化し、合格しても監査法人に入れない。そうなると資格の魅力は無くなり、2011年以降合格者数は下がり続けます。

こうなると今度は合格者数が少なく、監査法人では人手不足という状態になり、今に至るわけです。 2016年からは若干増加となっていますが、まだまだ合格者大幅増という状況には至っていません。

4.まとめ

会計士試験の合格者数増加で、今の超売手市場な状況がいつまで続くのかは受験生にとって気になる問題だと思います。

これについて、筆者はもう監査法人も辞めていますし予備校の講師でもないので、あまり正確なことはわかりませんが、定量的なグラフを見てみる限り、以下のことが言えると思います。(※新日本のここ1~2年の動きは、東芝事件による一時的な要因として除外しています)

  • 三大監査法人ではゆるやかに会計士が増加している
  • 但し1人あたりのクライアント数及び売上は増加傾向にあるので、1人あたりの負担はむしろ増えている
  • グラフで趨勢を見る限りその傾向が改善されている気配はない。ここ1~2年は負担の増加割合が大きいといえる
  • 受験生数及び合格者数減少は下げ止まったとはいえ、今のところ著しい増加には至っていない

以上の定量的な推移に加えて、定性的な部分では以下のような状況があります。

  • 複数の監査法人が短答式合格者を採用していますし、新日本や優成監査法人では全く試験経験のない人の採用も行っている
  • また、あずさが新規受注を制限していることが新聞記事に載ったり、ベンチャー企業の監査難民が取り上げられるなど、現在は受注を制限せざるを得ない状況がある

これらの状況から見て、まだまだ売手市場は続くのではないかと思っています。

もし売手市場の状況ではなくなるとしても、順番的には、①まず監査法人が受注を積極的に行うようになる→②短答合格者や試験未経験者の採用は止まる→③大幅な売手市場が解消する→④就職難が再来する という段階を追って推移するはずなので、もちろん保証はできないものの、少なくともまだまだ就職難を気にする必要はないと考えます。



著者プロフィール
会計士GTR
  • 公認会計士・税理士

『ブログde会計 | 公認会計士がブログで会計について考える』主筆。

大手監査法人で法定監査やIPO支援業務に従事した後、現在はベンチャー企業CFO。

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