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CHAPTER6 ステップアップ

Section 10 設備投資の検討

多額の資金を要する設備投資は、事前の評価が大切なんだ。

設備投資の対象は2つに大別される

会社が事業を継続・拡大するために必要な設備に投資することを「設備投資」といいます。その対象は、「有形固定資産」と「無形固定資産」の2つに大別されます。

設備投資の目的は、主に次の2つが挙げられます。1つは、設備の維持・更新。従来の設備の補修、また老朽化した設備を新しく買い換えるなどの場合が相当します。もう1つは、経営課題の解決。生産設備の増強や省力化、また新事業への参入にともなう設備投資などがそうです。

導入にあたって採算性をよく検討する

設備投資は生産性などの向上が期待できる反面、多くの資金をともないます。そのため導入にあたっては、事前に採算性をよく検討する必要があります。その投資によって増加する売上高と費用(直接材料費などの変動費や減価償却費、支払利息など)を比較し、見込まれる利益またはキャッシュを投資金額と比較して採算性を評価します。下記図のように「投資利益率」や「回収期間」などを算出し、結果が思わしくなければ設備投資以外の方法も検討しなくてはいけません。

設備投資により導入した固定資産の収益力が悪化した場合、上場企業は「減損会計」(CHAPTER5 Section14-1「知っておきたい会計処理―減損会計」参照)することが求められます。これは会社の固定資産から計画した収益が見込めないなどの場合、一定の定めにしたがってその帳簿上の価額を減額する会計上の手続きです。

ポイント

  1. 設備投資は設備の維持・更新、または経営課題の解決のため行われる。
  2. 投資利益率や回収期間などを算出して、設備投資の事前評価を行う。
  3. 設備投資により導入した固定資産の収益力が悪化した場合、減損会計を行う。

設備投資の流れ

①設備投資を検討

生産力の増強、既存設備の代替、製造コスト削減など目的を明確化し、その可否を検討する。

②設備投資計画を立案

①で検討した目的にしたがい、複数の設備投資計画を立案する。

③採算性を評価

計画に基づいて投資利益率、回収期間などを算出し、採算性を評価する。

投資利益率 = 設備投資から期待される年ごとの平均利益 / 設備投資額
④資金を調達

内部資金、借入、増資、社債発行などを検討し、最適な資金調達方法を選ぶ。

⑤設備投資を実行

設備投資の効果を最大化するため、設備の導入に合わせた業務プロセスの見直しと改善を図る。

設備投資にともなう売上高と費用の増加

売上高の増加を見積もる

売上高増加分 = 想定販売価格 × 投資計画に基づく販売数量 - 現状の売上高


費用の増加を見積もる

①直接材料費 設備投資により生産量が増加する場合、直接材料費も増加する。

②直接労務費 生産設備の拡大にともなって増加する人員の労務費。あるいは設備投資による効率性の向上で直接労務費を削減できる場合、その分も算出する。

③変動製造間接費 水道光熱費など、生産設備の拡大による間接費の増加分を算出する。

④販売費及び一般管理費 生産量の増加、生産設備の拡大にともなう販売費及び一般管理費の増加分を見積もる。

⑤支払利息 資金を借り入れた場合に発生する支払利息の増加分を計算に加える。

⑥減価償却費 設備投資にともなう減価償却費を計算に加味する。償却方法、償却率は会社が採用する会計方針により異なることもあるため、確認が必要。

MEMO

会社の設備がどれだけの付加価値を生み出しているかを示す指数として、設備投資効率がある。これは次の式で求められる。設備投資効率(%)=(付加価値額/有形固定資産の期首・期末平均)× 100

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