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CHAPTER2 日常の経理業務と関連業務

Section 10 経費管理―経費の分類と予算管理

経理担当者は、まず経費の処理を任されることも多い。経費と勘定科目の種類を覚えて作業に熟達していこう。

経理担当者は日々の経費の処理をマスターする

事業を行う上で必要な費用である「経費」。経理担当者はこの経費処理から業務を任されることも少なくありません。交通費や打ち合わせの飲食費から社員に支払う給与まで、日々発生する経費を多くの勘定科目を使って計上していく作業に、まず熟達しなくてはいけません。

損益計算書の「販売費及び一般管理費」に集約される経費は、日常よく使う勘定科目だけで数十の種類があります。これらの勘定科目は経費という面では同じですが、用途や性質に応じてさまざまな側面からの分類が可能です。例えば、売上に関連する費用/会社全体の維持に必要な費用、人に関する費用/販売に関する費用/モノに関する費用/オフィスに関する費用、部門で管理がしやすい費用/しにくい費用などの分類が考えられます。

各部門で予算管理が可能な経費とそうでない経費がある

経費を効率的に使っていくための予算管理は、社内の各部門が目標に対して取り組むことになります。ただし経費は各部門の裁量で管理できる場合と、そうでない場合があります。例えば交際費、旅費交通費、販売促進費、外注費などは、各部門で予算管理しやすい経費。そのため各部門の権限に応じた削減努力が実績に反映されやすくなります。一方で租税公課、法定福利費、減価償却費などは法令や人員などの制約を受けるため、各部門が独自に削減するのが難しい経費。予算は立てやすく、実績が大きく変動することもありません。

ポイント

  1. 経費の処理において日常よく使う主な勘定科目だけで数十の種類がある。
  2. 経費の勘定科目は用途や性質に応じてさまざまな分類が可能。
  3. 経費の予算管理は各部門の裁量で可能な場合とそうでない場合がある。

経費の主な分類① 販売費と一般管理費

経費は「販売費」と「一般管理費」の2つに大別できる。

販売費

商品の販売に関連して発生した費用。月によって金額が変動しやすい。
広告宣伝費 / 販売手数料 / 販売促進費 / 荷造運賃 / 交際費 など


一般管理費

会社全体の業務の管理活動にかかる費用。月ごとの変動が少ない固定費が多い。
給与手当 / 法定福利費 / 水道光熱費 / 地代家賃 / リース料 など


経費の主な分類② 目的や形態に応じた分類

人に関する経費

給与手当 / 賞与 / 役員報酬 / 退職金 / 法定福利費 / 福利厚生費 など


販売に関する経費

広告宣伝費 / 販売手数料 / 販売促進費 / 荷造運賃 / 交際費 など


モノに関する経費

消耗品費 / 賃借料 / 車両費 / 修繕費 / 減価償却費 など


オフィスに関する経費

水道光熱費 / 通信費 / 新聞図書費 / 事務用品費 / 雑費など


経費の主な分類③ 各部門での管理に応じた分類

各部門で管理が可能な経費

交際費 / 会議費 / 旅費交通費 / 販売促進費 / 外注費 など


各部門で管理が難しい経費

租税公課 / 法定福利費 / 減価償却費 / 賃借料 など


MEMO

経費をどの勘定科目で処理するかについても、複数の選択が考えられるケースがある。そのため、同様の取引であっても会社によって勘定科目が異なっていることも少なくない。

Section 10-1 経費管理―変動費と固定費

売上にともない増減する変動費、常に決まった額が出ていく固定費のバランスは、会社の経営状況を知る基本的な指標なんだ。

売上高にともない増減するかしないかで費用を区別する

費用は「変動費」「固定費」に分けて考えることが大切です。この2つのバランスを見ることで、何にいくらお金を使っているかだけでなく、会社の経営課題が分析できるようになります。

変動費とは、売上高や販売数量の増減にともなって変動する費用を指します。代表例は、メーカーの原材料費や流通業の仕入原価。商品を多く売るにはこれらの費用もたくさん必要になる反面、販売量がゼロの状態ではいずれも発生しないことになります。そのほか外注費や輸送にかかる燃料費なども、変動費に含まれます。

これに対して固定費は、売上高や販売数量の増減と関わりなく一定して発生する費用。例えばオフィスの家賃、社員の人件費などは、売上がゼロでも常に必要な支出です。

コスト削減や効率化で付加価値の向上を図る

売上高から変動費を差し引くことで「付加価値」が求められます。また例えば製造業の場合、付加価値から労務費や製造経費などを差し引いた残りが、売上総利益となります。

売上高に占める付加価値の割合が、「付加価値率」。付加価値率は、原材料費などのコスト削減、また生産ラインの効率化などで高めることが可能です。

ポイント

  1. 費用は変動費と固定費に大別できる。
  2. 売上高や販売数量の増減にともなって変動するのが変動費。
  3. 売上高や販売数量の増減と関わりなく一定して発生するのが固定費。

変動費と固定費の仕組み

固定費

売上の増減に関わりなく、常に発生する費用

グラフ「固定費」
変動費

売上の増減にともなって変動する費用

グラフ「変動費」

付加価値の見方

費用を変動費と固定費に分解することで、売上高に占める付加価値=企業が生産やサービス活動を通じて新しく生み出した価値を知ることができる。

付加価値=売上-変動費

グラフ「付加価値」

MEMO

固定費と変動費の比率は、業種によって大きく異なる。例えば鉄道、航空会社、ホテルなどは固定費が多い「固定費型事業」、また小売業や卸売業は変動費が多い「変動費型事業」ともいえる。

製造業の固定費と変動費の参考例

固定費
  • 直接・間接労務費
  • 保険料
  • 修繕料
  • 水道光熱費
  • その他製造経費
  • 販売員給料手当
  • 支払運賃
  • 荷造費
  • 消耗品費
  • 広告費
  • 交際・接待費
  • その他販売費
  • 従業員教育費
  • 研究開発費
  • その他管理費
変動費
  • 直接材料費
  • 修繕料
  • 外注費
  • 間接材料費
  • その他直接経費
  • 重油等燃料費

建設業の固定費と変動費の参考例

固定費
  • 労務管理費
  • 地代家賃
  • 保険料
  • 現場従業員給料手当
  • 事務用品費
  • 補償費
  • 修繕維持費
  • 減価償却費
  • 通信交通費
  • 動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)
  • 従業員教育費
  • その他管理費
変動費
  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 仮設経費
  • 動力・用水・光熱費(完成工事原価のみ)
  • 運搬費
  • 機械等経費
  • 設計費

卸・小売業の固定費と変動費の参考例

固定費
  • 販売員給料手当
  • 車両燃料費(卸売業の場合50%)
  • 車両修理費(卸売業の場合50%)
  • 販売員旅費
  • 交通費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • その他販売費
  • 役員(店主)給料手当
  • 事務員(管理部門)給料手当
  • 福利厚生費
  • 減価償却費
  • 交際・接待費
  • 土地建物賃借料
  • 保険料(卸売業の場合50%)
  • 修繕費
  • 光熱水道料
  • 支払利息
  • 割引料
  • 租税公課
  • 従業員教育費
  • その他管理費
変動費
  • 売上原価
  • 支払運賃
  • 支払荷造費
  • 支払保管料
  • 車両燃料費(卸売業の場合のみ50%)
  • 保険料(卸売業の場合のみ50%)

注:小売業の車両燃料費、車両修理費、保険料は全て固定費

出典:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

固定費と変動費のバランスは、業種で異なるのです。

Section 10-2 経費管理―交際費の損金算入ルール

よく似た勘定科目との区別、接待飲食費計上の手続きなど、交際費は経理担当者にとって特に注意が必要なんだ。

税務上、交際費は原則として費用(損金)と認められない

ビジネスを進める上で欠かせないのが、取引先への接待や贈答。そこで必要になる費用が、「交際費」です。ただし交際費は、経理担当者が特に注意しなくてはいけない費用の1つ。というのも、度を越した接待や社員の私的な支出に流用される可能性があるからです。

会計上、交際費は費用として扱います。しかしこの交際費は、税務上の費用である損金と認められず、課税される決まり。これは、本来の主旨から外れた不適切な支出を費用として無制限に計上されるのを防ぐためです。

例外的に資本金1億円以下の中小企業は年間800万円以下の支出に限り損金計上が認められていますが、資本金が1億円超の会社はほぼ損金に算入できません。ただし社外の人との飲食費については、経理担当者が所定の処理を行うことで「1人あたり5000円以下」の場合に限り全額の損金算入が可能です。

ほかの勘定科目の支出も所定の条件について確認する

交際費はまた、ほかの勘定科目と混同しやすい点にも注意が必要。例えば会議にあたっての飲食の費用は、「会議費」に計上できます。また政治団体への拠出金などは、「寄付金」で処理することが可能。そのほか広告宣伝のためのノベルティグッズをプレゼントした場合は、「広告宣伝費」になります。ただしいずれも一定の条件があるため、経理担当者は常にチェックが必要です。

ポイント

  1. 交際費は過度な接待や私的な流用に注意が必要。
  2. 交際費は税法上の費用である損金に原則計上できない。
  3. 交際費はほかの勘定科目との区分が複雑な点に注意する。

損金算入が認められる交際費の限度額

グラフ「変動費」

交際費とそのほかの経費の判定チャート

グラフ「変動費」

MEMO

「費用」は、会計において会社の「経済的価値の減少」を指す。それに対して「損金」は、法人税の計算にあたって収益から差し引ける費用の額を意味する。

Section 10-3 経費管理―広告宣伝費、物流費の扱い

宣伝に要する「広告宣伝費」、商品の輸送にともなう「物流費」なども、経理担当者が注意して管理しなくてはいけない経費だ。

広告宣伝費は交際費などとの区分に注意する

「広告宣伝費」は、販売促進を目的とした商品・サービス、また会社の広告宣伝に支出する費用。ただし対象が不特定多数の人に限られる点が特徴です。例えば不特定多数の一般消費者に抽選で映画のチケットをプレゼントする場合は、広告宣伝費。しかし特定の取引先担当者が対象なら、「交際費」になります。交際費は広告宣伝費と異なり損金と認められないため、注意しましょう。

また宣伝媒体が固定資産となる場合もあります。価格や耐用年数が一定の基準を超える広告看板は、その代表例。また宣伝が目的のウェブサイトも、ウェブ上のスクリプト処理などプログラムとして一定の機能を有する場合、無形固定資産となります。これらの固定資産は、一定の条件にしたがい「減価償却」していく決まり。支出した時点で全額を損金に計上することはできません。

物流費はコスト削減のための管理に注力する

「物流費」は、商品の納入など輸送にともなう費用。物流費は多くの業種で変動費の1つであり、売上や生産の伸びにともなって増加します。そのためコスト削減のための管理が、経理担当者にとっても課題となります。

 物流にかかる費用は主に、「輸送費」「保管費」「荷役費」などからなります。コスト削減でまず注目したいのは、人手が関わる部分。システム化の推進などで、効率の悪い管理体制を改善できる場合があります。そのほか過剰な在庫を減らして適正な数を維持することで、保管費の削減も期待できます。

ポイント

  1. 広告宣伝費は不特定多数の相手が対象。
  2. 宣伝媒体が固定資産として計上される場合もある。
  3. 物流費は手作業や在庫の削減でコスト管理に努める。

広告費と交際費の区分

以下に該当する場合、交際費でなく広告宣伝費として計上が可能。

①製造業者や卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するための費用または一般消費者を旅行、観劇などに招待するための費用
②製造業者や卸売業者が、金品引換券付販売にともなって一般消費者に金品を交付するための費用
③製造業者や販売業者が、一定の商品を購入する一般消費者を旅行、観劇などに招待することをあらかじめ広告宣伝し、その商品を購入した一般消費者を招待するための費用
④小売業者が商品を購入した一般消費者に対し景品を交付するための費用
⑤一般の工場見学者などに製品の試飲、試食をさせるための費用
⑥得意先などに対して見本品や試用品を提供するために通常要する費用
⑦製造業者や卸売業者が、一般消費者に対して自己の製品や取扱商品に関してのモニターやアンケートを依頼した場合に、その謝礼として金品を交付するための費用

そのほか広告宣伝費と混同しやすい例に、広告入り名刺、商品サンプル・ノベルティグッズなどがある。前者は消耗品または広告としての役目が大きい場合に広告宣伝費、後者は不特定多数が対象の場合に広告宣伝費、消費者に直接手渡すような場合に販売促進費とするのが一般的。

出典:国税庁ウェブサイト「交際費等と広告宣伝費との区分」

主な物流費の内訳

輸送費 物品や荷物を目的地まで運ぶ費用。その比率が会社の利益を大きく左右する場合も多い。
保管費 倉庫など商品の保管スペースにともなう費用に加え、商品を倉庫から搬出・搬入する費用などが含まれる。
荷役費 入荷、出荷時に発生する費用。また商品の梱包にともなう費用も含まれる。

物流費と混同しやすい科目の処理

棚卸資産の仕入にともなう物流費→原価として扱い、棚卸資産の取得価額の一部とする。

機械など固定資産の購入にともなう設置費用→固定資産の取得価額に含める。

期末に残った未使用のパレットや梱包材など→期末の実地棚卸を経て貯蔵品として計上。

MEMO

商品・サービスを宣伝する方法は多岐にわたる。そのコストは広告宣伝にお金をかけている企業トップ49社においては売上の20%を占めることもあり、企業活動のなかで大きなウェイトを占めている。(出典:東洋経済ONLINE「広告宣伝費の『売上比率が多い200社ランキング』2022」)

Section 10-4 経費管理―研究開発費

研究開発費は、研究と開発の定義に実態が則しているかどうかチェック。会計処理にあたっては、総額の注記の作成も忘れずに。

研究開発費に認められる「研究」と「開発」を把握しておく

政府は会社に研究開発を促すため、「研究開発費」に税制面での優遇措置を設けています。それだけに研究開発費の把握は、節税面でも重要となりますが、同時に会計基準や指針にしたがった適正な処理も欠かせません。

金融庁の会計基準では、「研究開発費」の「研究」は「新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究」を指します。同じく「開発」は、「新しい製品・サービスなどの計画・設計、また既存の製品などの著しい改良の計画・設計として、研究の成果などの知識を具体化すること」。いずれも製品・サービスを新しく作り出す、または著しい改良を加える点が重視されています。したがって、他社からの技術移転、既存の製品のマイナーチェンジ、製造工程の改善といった場合は研究開発費に含まれないと考えなくてはいけません。

通常は発生時点で「一般管理費」として計上する

研究開発費は、発生主義に基づいて研究開発が行われた会計期間の費用として処理するのが決まり。通常は原価性がないと見なされるので、「一般管理費」、つまり人件費や家賃などと同様に販売や製造に直接関係のない経費として扱います。一般管理費で処理する際には、内閣府令に基づく総額の注記も作成しなくてはいけません。なお例外的に、研究開発費を製造原価の一部として計上する場合もあります。

ポイント

  1. 研究開発費は会計基準や指針などにしたがった適正な処理を図る。
  2. 新しく作り出す、または著しい改良を加える点が研究・開発の要件。
  3. 研究開発費を一般管理費で処理する際、総額の注記も作成する。

会計基準及び実務指針による「研究開発」の定義

一 定義

1 研究及び開発

研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいう。開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。

金融庁「研究開発費等に係る会計基準」

研究・開発の範囲

①従来にはない製品、サービスに関する発想を導き出すための調査・探究
②新しい知識の調査・探究の結果を受け、製品化又は業務化等を行うための活動
③従来の製品に比較して著しい違いを作り出す製造方法の具体化
④従来と異なる原材料の使用方法又は部品の製造方法の具体化
⑤既存の製品、部品に係る従来と異なる使用方法の具体化
⑥工具、治具、金型等について、従来と異なる使用方法の具体化
⑦新製品の試作品の設計・製作及び実験
⑧商業生産化するために行うパイロットプラントの設計、建設等の計画
⑨取得した特許を基にして販売可能な製品を製造するための技術的活動

日本公認会計士協会「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」

一般管理費で処理する際の総額の注記例

「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」で、「一般管理費及び当期製造費用に含まれている研究開発費については、その総額を注記しなければならない」と定められている。

一般管理費に含まれる研究開発費の総額は500,000千円であり、その主要なものは以下の通り。


人件費 200,000 千円/消耗品費 30,000千円/外注費 100,000千円/減価償却費 170,000千円

研究開発費の優遇税制

①試験研究費(=研究開発費)の総額に係る税額控除制度(総額型)
青色申告法人の各事業年度において、損金に算入される試験研究費がある場合、その額に一定割合を乗じて計算した金額を法人税額から控除できる。

②中小企業技術基盤強化税制
中小企業などが「総額型」の代わりに、試験研究費に一定割合を乗じた額が法人税額から控除できる。

③特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)
大学や研究機関との共同研究などで特別試験研究費の支出がある場合、①、②とは別枠でその額の一定割合を法人税額から控除できる。

出典:国税庁ウェブサイト「研究開発税制について(概要)」

MEMO

研究開発費を製造原価の一部として処理するのは、製造現場で研究開発費に該当する活動が行われており、またそこで発生する費用をほかの原価とまとめて計上している場合など。

Section 10-5 経費管理―売上値引・売上割引・売上割戻

一定以上の量または額を買ってくれた場合に決まった額を顧客に戻すことを、リベート(売上割戻)というんだ。

リベートは売上割戻の勘定科目で処理する

「値引」や「割引」などは、日頃よく耳にする言葉。ふだんの生活ではイメージであまり違いを意識することはないかもしれません。しかし経理の業務では、「売上値引」や「売上割引」、あるいは「売上割戻」として厳密に区別して会計処理を行う必要があります。

値引=売上値引は、商品・サービスの品質にもとづいて、代金を安くすること。例えば賞味期限が近い食品、パッケージに破損がある商品などを減額して販売する場合が該当します。

割引=売上割引は、支払期日より早く支払いが行われる際に、売掛金の一部を免除すること。例えば代金を後日振り込む代わりに即時現金払いするといった場合、一定割合が割り引かれる仕組みです。

そして売上割戻は、一定期間内に多数・多額の取引をした場合に代金を安くすること。まとめ買いセール、ボリュームディスカウントなどが実例です。

リベートは売上割戻の勘定科目で処理する

一定期間にある程度以上の商品・サービスを売り上げた場合、事前に取り決めておいた割合の金額を顧客に戻すことがあります。これが「リベート」または「キックバック」「販売報奨金」などと呼ばれる慣習。リベートは会計上「売上割戻」という勘定科目で売上高の控除項目として扱われ、原則として全額を税務上の費用(法人税の計算では損金)とすることが可能です。

ポイント

  1. 会計処理においては、売上値引、売上割引、売上割戻を区別する。
  2. 一定期間内に多額の取引があった場合に一定額を顧客に戻すのがリベート。
  3. リベートは原則として全額を税務上損金処理することが可能。

売上値引・売上割引・売上割戻の違い

定義 会計処理
売上値引 商品・サービスの品質を理由に、代金を安くすること。
  • 品質不良
  • 破損
  • 数量不足
売上高から控除
売上割戻 一定期間に多数 多額の取引をしたことを理由に、 前もって決めた代金を安くすること。
  • まとめ買いセール
  • ボリュームディスカウント
売上割引 支払期日より前に入金があった際に、売掛金を一部免除すること。 営業外費用

売上値引の仕訳

勘定科目「売上値引」

品違い、損傷、量目不足などの理由による値引額を処理する勘定科目。

会計処理→売上高の控除項目

仕訳例:掛けで10万円の商品を売り上げた
表「仕訳例:掛けで10万円の商品を売り上げた」
仕訳例:2万円の値引を行い、差額の現金を受け取った
表「仕訳例:2万円の値引を行い、差額の現金を受け取った」

消費者向けのいわゆる「まとめ買いセール」「ボリュームディスカウント」なども、会計上はリベートと同様に売上割戻の勘定科目で処理するんだ。

MEMO

掛取引における代金には、支払うまでの期間に応じた利息が含まれている。売上割引は、早く支払うことでその期間が縮まった分の利息を減額している仕組み。

売上割引の仕訳

勘定科目「売上割引」

期日前に支払いを受けた売上代金の一部免除額を処理する勘定科目。

会計処理→営業外費用

仕訳例:掛けで10万円の商品を売り上げた
表「仕訳例:掛けで10万円の商品を売り上げた」
仕訳例:5000円の割引を行い、差額を現金で受け取った
表「仕訳例:5000円の割引を行い、差額を現金で受け取った」

リベート=売上割戻の仕訳

勘定科目「売上割戻」

数量や代金が一定の量や額を超えた場合の売上代金の割戻額を処理する勘定科目。

会計処理→売上高の控除項目

仕訳例:掛けで10万円の商品を売り上げた
表「仕訳例:掛けで10万円の商品を売り上げた」
仕訳例:3万円の割戻を行い、差額の現金を受け取った
表「仕訳例:5000円の割引を行い、差額を現金で受け取った」

リベートの扱い

リベートの額は、売上金額に一定率を乗じる、売上数量に一定額を乗じる、また累進性を取り入れるなど、さまざまな基準に基づいて算定されます。ただし、いずれの場合も、社会通念に照らして合理的な基準であることが大切。適正でない扱いをしていると、税務当局から否認される可能性もあります。

例えば基準によらない任意の金額を戻す、算定基準を後で決めるなどの場合、売上高の控除項目でなく交際費として計上することになりかねません。交際費は原則として損金不算入、つまり税務上の費用と認められないので、注意しましょう。

リベートが損金として認められる要件(役務の提供の場合)

①その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。
②提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること。
③その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること。

リベートの計上時期
図「リベートの計上時期」
経理の仕事の流れとしくみがまるごとわかる
INDEX