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CHAPTER1 経理業務の全体像

Section 06 経理の仕事の流れをつかもう

月単位で忙しくなる時期は、月末の入金確認が重なる月初。また年次決算が重なる月は、より綿密なスケジュール管理が必須だ。

経理のスケジュール

①日単位の仕事

現預金の管理、仕訳・帳簿への記録、納品書・請求書の発行、経費の精算など。

CHAPTER1 Section06-1「経理の仕事の流れ―日々の会計処理」

②月単位の仕事

売上代金の請求、仕入代金の支払い、給与計算・支給、月次決算など。

CHAPTER1 Section06-2「経理の仕事の流れ―毎月の会計処理」

③年末年始の仕事

賞与計算・支給、賞与支払届の提出、年末調整、法定調書の提出など。

CHAPTER1 Section06-3「経理の仕事の流れ―毎年の会計処理」

④期末から期初の仕事

実地棚卸、決算書の作成、税務申告・納税など。

CHAPTER1 Section06-3「経理の仕事の流れ―毎年の会計処理」

経理の仕事は日単位、月単位、年単位のサイクルからなっています。そして事業年度の終わりに年次決算を行うのが、1年を通じたスケジュールです。

日単位では、常に出入りする現預金の管理に始まり、日々の取引を会計ソフトに入力、請求書や納品書の発行をするなどの日常業務を行います。

月単位では、まず月次決算の業務があります。また請求書の発行、仕入と売掛金の管理、場合によって給与計算と振込みなどの手続きを行います。

年単位では、年末調整、社会保険・労働保険などの手続きを行います。そして1年の締めくくりとなるのが、年次決算に関する業務。3月決算の会社は、3月から5月にかけてこの仕事に集中することになります。決算書類の作成に続いて株主総会を開催、また税務申告書類を作成して法人税、住民税、事業税、消費税の納付手続きを行います。

経理の仕事は、月ごと、年ごとに決まった日までに終えなくてはいけない業務が続きます。あらかじめこうした業務のサイクルに沿った計画を立て、詳細なスケジュール管理を心がけなくてはいけません。

MEMO

上場企業は決算短信の発表、有価証券報告書の作成のほか、四半期報告制度や内部統制報告制度への対応などが年単位の仕事に含まれる。

経理の業務の流れ

日次業務
取引の発生

原材料を仕入れる、売掛金が入金される、給与を支払うなど、お金やモノの出入りが行われる。

仕訳

取引を勘定科目を使って分類し、借方と貸方に区分けして整理する。

仕訳帳・総勘定元帳の作成

仕訳帳で取引を発生順に整理。続いて勘定科目ごとに日付順に整理した総勘定元帳を作成する。

年次業務
精算表の作成

試算表に決算整理を施して精算表を作成する。

貸借対照表・損益計算書の作成

決算に際し、貸借対照表で会社の財産の状況、損益計算書で会社が儲かったかどうかを示す。

申告・納税

決算書を元に税務申告書を作成して税務署に提出、納税の手続きを行う。

月次業務
試算表の作成

総勘定元帳に記録した金額の合計や残高を集計して試算表を作成し、貸借の一致を確認する。

MEMO

経理と財務が分かれている場合、経理は年末年始と期末~期初にかけてが最も忙しくなる。財務は多額の支払い(大口の仕入先への支払い、銀行からの借入金の返済、賞与の支給など)前後の時期が資金繰りのために多忙となることもある。

Section 06-1 経理の仕事の流れ―日々の会計処理

数々の業務を日々こなしていくのが経理担当者の仕事。スケジュール管理には特に注意が必要だ。

間違いのない業務を心がける

日単位の主な業務には、売上にともなう入金、経費などの支払い、またそうした日々の入出金にともなう帳簿の記帳などがあります。こうして日々蓄積される会計データは、適正な納税、さらに経営状態を示す指標として経営判断に活用されます。単調な作業もありますが、数字を疎かにせずに間違いのない業務を心がけなくてはいけません。

現金の管理・チェックを徹底する

現金の管理・出納は経理担当者の代表的な仕事の1つ。経理担当者は始業と同時に社内の金庫から小口現金が入った手提げ金庫を取り出し、経費精算にともなう現金や領収書のやり取りなどを処理します。

現金の出入り、またそれにともなう領収書などの情報は、現金出納帳に記録していきます。終業時には「現金実査」を行い、現金出納帳の残高と実際の現金の残高が一致するかを確認します。

現金とともに、銀行口座の入出金を毎日チェックするのも経理担当者の仕事。さらに預金の出入りの根拠となる発行した請求書控えや受領した請求書のチェック、整理、保管、仕訳などの作業も発生します。

経理担当者が日々こなす仕事は多岐にわたります。漏れや遅れがないよう、1日のスケジュールを立てて計画的に進めていかなくてはいけません。

ポイント

  1. 経理担当者が日々蓄積するデータが納税や経営判断に活用される。
  2. 現預金の出入りを毎日チェックする。
  3. 漏れや遅れがないよう業務の計画を立てる。

日単位の主な仕事

①現金管理

現金の支出と入金を確認して現金出納帳に記録し、帳簿上の残高と現金の残高を照合。支出にあたっては伝票、精算書、領収書など出金の根拠を証明する書類を引き換えに受け取るのが原則。

②預金管理

預金口座の動きを確認し、その出入りに応じた伝票の起票、預金出納帳への記録などを行う。通帳に記載されている入出金の日付、取引先、金額に加え、具体的な取引の情報を細かく記録していく。

③経費精算

従業員が立て替えた経費の精算、また仮払金の払い出しと精算など。支払いの作業や会計ソフトへの入力だけでなく、適正な経費かどうかのチェックや書類の不備の補完、提出の督促なども担う。

④伝票の起票・整理

入出金、仕入、売上など取引の発生ごとに伝票を起票して入力していく。どの費用をどの勘定科目で処理するかを定めた社内のルールにしたがい、仕訳していく。

そのほかの日常業務

  • 各種支払業務
  • 売掛金の入金確認・消し込み
  • 買掛金の支払管理・消し込み
  • 商品の入出庫記録

これらの業務は、現金管理、預金管理とも関係してくるのです。

MEMO

日々の売上の管理が経理の仕事になっている会社もある。その場合、売上の集計、売上伝票や納品書の発行が経理の日常業務となる。

Section 06-2 経理の仕事の流れ―毎月の会計処理

毎月の請求・支払い、給与関連の業務に加えて、月次決算が月ごとの重要な仕事になるんだ。

毎月の業績結果を月次決算報告として提出する

月単位の主な業務には、請求、支払い、給与計算、月次決算、試算表・資金繰り表の作成などがあります。このうち特に重要なのが、CHAPTER2 Section18「月次決算の流れをつかもう」で詳述する月次決算。経理担当者は月初に前月の処理を締め切り、中旬までに毎月の業績結果を月次決算報告としてまとめます。これが経営状態を示す指標として経営管理にも活用され、年次決算の元にもなります。また最低3カ月を見込んだ資金繰り表を作成し、計画的な資金調達に備えておく必要もあります。

請求・支払いなどとともに、給与関連の業務も処理する

上旬には請求業務があることも多いです。請求にあたっては、まず商品やサービスの納品書を1カ月単位で集計し、合計金額を算出。それに基づいて支払いを依頼する請求書を発行するとともに、売上を計上します。また請求書に対して代金の回収が行われれば、売掛金を消去する経理処理(通常、「売掛金の消し込み作業」といいます)を行います。下旬に行う仕事には、支払業務があります。買掛金計上している仕入などの請求書を受領したら、記載内容にしたがい代金の振込手続きを行い、さらに買掛金を消去する経理処理(通常、「買掛金の消し込み作業」といいます)を行います。

給与計算と支給も、毎月下旬の決まった仕事です。社員それぞれの勤務状況を検証し、各種手当の加算などを経て振込手続きを行います。月末には社会保険料、また翌月10日までに源泉所得税と住民税を納付します。

ポイント

  1. 毎月の業績結果を報告する月次決算が月単位の重要な仕事。
  2. 請求・支払業務も月単位で処理を行う。
  3. 毎月下旬には給与計算と支給の業務もこなす。

月単位のスケジュール例

上旬

月次決算(月初から約2週間以内)
月次棚卸 → 仮勘定の処理 → 経過勘定の計上 → 試算表の作成 → 月次決算書の作成 → 資金繰り表の作成 → 月次決算報告

現預金の残高確認

在庫の確認、月次棚卸

売上代金の請求

中旬

源泉所得税・住民税の納付(10日)

原価計算(製造業の場合)

下旬

仕入代金の支払い

給与計算・支給

社会保険料の計算・納付(月末)

会社の経営状態の把握、取引先からの入金・支払い、給与の支給、税金や社会保険の納付などは期日が決まっているので、業務のサイクルもこれを基に決まっていくのです。

MEMO

給与も含めた支払業務に関わる資金繰り、また売掛金の回収も、経理にとって重要な仕事となる。

Section 06-3 経理の仕事の流れ―毎年の会計処理

1年の山場となるのが、決算。税務や給与などそのほかの仕事もスケジュールに組み込んで、計画的な業務を心がけよう。

中間決算・本決算作業のある10月・4月が繁忙期となる

年単位の業務で重要なのが、決算。3月決算の会社の場合、特に中間決算の作業がある10月、本決算の作業がある4月が、経理担当者にとって最も忙しい時期になります。2~3月にはまた4月からの新事業年度に向けて、経営計画の立案に関連した業務にも携わらなくてはいけません。入社1年目の経理担当者が最初の本決算に関連して任される仕事は多くはありませんが、次年度から担当することを念頭に置いて業務の流れを掴んでおきましょう。

また上場企業は、3カ月ごとの四半期決算の公表が義務づけられています。本決算を除く1月、7月、10月にも決算整理仕訳~財務諸表の作成を行い、2月、8月、11月に「決算短信」として証券取引所に提出します。

税務や給与関連のスケジュールも把握しておく

税務に関する仕事も、多くが年単位のスケジュールで回っています。まず1月には、償却資産税の申告、給与所得の源泉徴収票など法定調書の提出。続いて3月決算の会社の場合、5月には法人税・法人住民税・法人事業税および消費税の確定申告と納付を行います。なお税務署に届出をすることで、申告・納付の期限を1カ月延長することもできます。

7月には社会保険関連の届出、労働保険の保険料の申告・納付などがあります。また給与関連では年に2回の賞与の計算・支給、そして12月の年末調整事務が年間を通しての主な業務になります。

ポイント

  1. 日常の仕事と並行しながら、決算業務を毎年こなしていく。
  2. 税務に関する仕事も年単位のサイクルがある。
  3. そのほか社会保険・労働保険・給与関連のスケジュールも押さえておく。

経理の年間カレンダー

(例:東京都にある3月決算の会社の場合)

1月 [税務]固定資産税の償却資産に関する申告、特例による源泉所得税の納付
[労務]法定調書・給与支払報告書の提出、支払調書の作成・提出
[決算]第3四半期決算の処理
2月 [税務]固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付
[予算]経営計画の立案開始
3月 [予算]経営計画の立案
[決算]年次決算の準備、実地棚卸
4月 [決算]年次決算処理
5月 [税務]法人税・地方税・消費税の確定申告・納付
[決算]会社法計算書類、決算短信、有価証券報告書などの作成
6月 [税務]法人税・地方税・消費税の確定申告・納付(延長の場合)/固定資産税(都市計画税)の第1期分の納付
[総務]株主総会の開催、配当金の支払い
[決算]第1四半期決算の準備
7月 [税務]特例による源泉所得税の納付
[労務]夏季賞与の計算・支給、健康保険・厚生年金保険の定時決定、労働保険の年度更新
[決算]第1四半期決算処理
8月
9月 [税務]固定資産税(都市計画税)の第2期分の納付
[決算]第2四半期決算・中間決算の準備
10月 [決算]第2四半期決算・中間決算処理
11月 [税務]法人税・地方税の中間申告・納付
12月 [税務]固定資産税(都市計画税)の第3期分の納付
[労務]冬季賞与の計算・支給、年末調整
[決算]第3四半期決算の準備

多くは決算に関係することと、税金の納付に関することなのです。

MEMO

金融業や建設業など、業種によっては国や自治体に定期的な数値の報告が義務づけられている。これも多くの場合、経理担当者の業務に含まれている。

経理の仕事の流れとしくみがまるごとわかる
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