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CHAPTER2 日常の経理業務と関連業務

Section 22 繰延資産の管理

効果が長期間にわたって続くと考えられる費用の一部は、減価償却資産のように償却できるんだ。

繰延資産は貸借対照表上での資産として扱える

会社設立時の開業費、新たな株式発行にともなう株式交付費、また新技術を確立するための開発費などは、その効果が長期間にわたって続くと考えることができます。そこでこうした費用は、減価償却資産のように複数年にかけて償却することが認められています。これが「繰延資産」です。固定資産などのように財産としての価値があるわけではありませんが、貸借対照表の資産として扱われています。

会社法上の繰延資産と税法上の繰延資産の2種類がある

繰延資産は、会社法上の繰延資産税法上の繰延資産の2種類に大別されます。会社法上の繰延資産は、株式交付費社債発行費創立費開業費開発費の5種類。いずれも支出した時に一括で費用に計上することが原則ですが、繰延資産として処理することも認められています。

償却方法は、創立費・開業費・開発費は原則5年以内の定額法、株式交付費については3年以内の定額法とされています。社債発行費は社債の償還期間にわたって利息法による償却が原則ですが、継続適用を条件として定額法も認められています。

一方の税法上の繰延資産は、上記会社法上の5種類の他、下記図「税法上の繰延資産」に掲げた費用のうち支出の効果が1年以上に及ぶものも含まれます。これらについては、その種類ごとに細かく償却期間が定められています。

ポイント

  1. 開業費、株式交付費、開発費などは繰延資産として償却できる。
  2. 会社法上の繰延資産は5年以内の定額法などで償却する。
  3. 税法上の繰延資産は償却期間が種類ごとに細かく定められている。

会社法上の繰延資産

種類 内容 償却方法
株式交付費 株式募集の広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・株券などの印刷費、変更登記の登録免許税、そのほか株式の交付などのために直接支出した費用。 定額法償却(3年以内でその効果の及ぶ期間)
社債発行費 社債募集の広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・社債券などの印刷費、社債の登記の登録免許税、そのほか社債発行のために直接支出した費用。 社債の償還期間にわたって利息法償却
継続適用を条件として定額法も可
創立費 会社の負担に帰すべき設立費用、例えば定款及び諸規則作成のための費用、株式募集などの広告費、目論見書・株券などの印刷費、創立事務所の賃借料、設立事務に使用する使用人の手当給料など、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、創立総会に関する費用、そのほか会社設立事務に関して必要な費用など。 定額法償却(5年以内でその効果の及ぶ期間)
開業費 土地・建物などの賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、給料、保険料、電気・ガス・水道料などで、会社成立から営業開始時までに支出した開業準備のための費用。 定額法償却(5年以内でその効果の及ぶ期間)
開発費 新技術または新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓などのために支出した費用、生産能率の向上または生産計画の変更などで設備の大規模な配置替えを行った場合などの費用。ただし、経常費(会計年度ごとに連続的に繰り返し支出され、金額の変動が少なく、予見可能な経費)の性格を持つ費用は含まれない。 定額法償却(5年以内でその効果の及ぶ期間)
そのほか合理的な方法で規則的に償却

税法上の繰延資産

次の費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものが税法上の繰延資産に該当する。

①自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
②資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
③役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
④製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
⑤①から④までに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

出典:国税庁ウェブサイト「繰延資産の範囲について」

MEMO

繰延資産は資産を過大に見せる粉飾にも悪用されかねない。そのため開発費は、「研究開発費等に係る会計基準」などのルールに基づいて資産計上が制限されている。

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