Section 07 勘定科目―5つのグループと処理の基本
取引を記録する単位=勘定科目は、5つのグループごとに分かれるのだ。
よく使う勘定科目がどのグループに含まれるかチェックする
取引を集計する際の単位となるのが、勘定科目。5つのグループごとに分けることができ、それぞれ決まった取引の仕訳に用いられます。
経理担当者がふだん目にする勘定科目は、ある程度決まった種類に限られますが、それでも最初は「どの取引にどの勘定科目を使うか」に頭を悩ませることになるはず。社内の経理規程や会計ソフトの設定などにも目を通し、よく使う勘定科目が5つのうちどのグループに含まれるかチェックしておくと、より使いこなせるようになるでしょう。
多くの会社がほぼ同じ勘定科目を使っている
勘定科目は、会社が自由に作ってかまわないのが原則。しかし会社法の会社計算規則、金融商品取引法の財務諸表等規則などの法令で、財務諸表を作成する際に記載する勘定科目が決められています。そのため実際には、多くの会社がほぼ同じ勘定科目を使っています。そうすることで、異なる会社の財務諸表を同じ単位で比較することも可能になる仕組みです。
例えば経費の区分は、財務諸表で見ると損益計算書の「販売費及び一般管理費」にまとめられています。しかし社内では経費の予算管理などの必要性から、交際費や広告宣伝費などいくつかの取引ごとに勘定科目を設定して計上することになります。
ポイント
- 取引を集計する単位となる勘定科目は、5つのグループに分けられる。
- よく使う勘定科目がどのグループに含まれるかチェックしておく。
- 法令で財務諸表に記載する勘定科目が決められている。
「資産」「負債」「純資産」「費用」「収益」の勘定科目の一覧
①資産のグループ
調達した財産をどのように使っているかを表す。現預金などの「財貨」とお金を受け取る権利=「債権」、収益を獲得するために使用する「固定資産」などが属している。仕訳では資産が増加したら借方、減少したら貸方に記入する。
主な勘定科目
- 現金
- 預金
- 売掛金
- 未収入金
- 有価証券
- 商品
- 原材料
- 仕掛品
- 貯蔵品
- 前払金
- 短期貸付金
- 建物
- 土地
- 器具備品
- ソフトウェア
仕訳例:10万円の売上代金を現金で受け取った場合
②負債のグループ
会社が負っているさまざまな債務。銀行からの借入れのほか、後日支払う代金なども含まれる。資産=プラスの財産に対して、負債=マイナスの財産ともいえる。仕訳では負債が増加したら貸方、減少したら借方に記入する。
主な勘定科目
- 買掛金
- 前受金
- 短期借入金
- 社債
- 預り金
- 未払金
- 未払法人税等
- 退職給付引当金
- 賞与引当金
仕訳例:50万円の商品を掛けで仕入れた場合
MEMO
売掛金が本業の商品・サービスを通じて得られる債権であるのに対して、未収入金は本業以外で発生した債権を指す。いずれも将来入ってくることが約束されている未回収の代金。
③純資産のグループ
主な勘定科目は資本金=会社を設立した時の出資金など。増減するのは増資や減資など特殊な場合に限られるため、経理担当者が扱う機会は限られている。仕訳では純資産が増加したら貸方、減少したら借方に記入する。
主な勘定科目
- 資本金
- 資本準備金
- 利益準備金
- 繰越利益剰余金
- 別途積立金
- 任意積立金
- 自己株式
仕訳例:会社設立時に500万円を資本金として受け入れた場合
④費用のグループ
売上などの収益を得るために要したコスト。一般に原価や経費などといわれるが、簿記ではまとめて費用という用語を用いる。仕訳では費用が発生したら借方に記入する。
主な勘定科目
- 仕入
- 給与手当
- 福利厚生費
- 通勤交通費
- 消耗品費
- 地代家賃
- 賃借料
- 広告宣伝費
- 通信費
仕訳例:広告費として30万円を現金で支払った場合
MEMO
「売り上げ」を「売上」と書くなど、勘定科目では送り仮名を省略して表記する決まり。ただし預り金は預金と区別がつかなくなるため、例外的に送り仮名を加えて表記する。
⑤収益のグループ
利益を生み出す元になる収入の総額。掛取引による将来の収入も含む。収益から費用を差し引いた残りが利益となる。主な勘定科目は売上など。仕訳では売上が発生したら貸方、返品や値引などで減少したら借方に記入する。
主な勘定科目
- 売上
- 受取利息
- 受取配当金
- 受取賃貸料
- 有価証券売却益
- 為替差益
- 雑収入
- 固定資産売却益
仕訳例:商品を100万円で販売し、代金は掛けとした場合
ここで出しているのはあくまで一例。使われている科目は会社の業種・業態によって大きく違うんだ。
MEMO
資産が会社の財産を表すのに対して、資産と負債の差額である純資産の多くは株主の持分に相当する。返済する必要のない株主に対する負債、とイメージすると分かりやすいかも。