Section 02 仕事の流れ—経理と会社のビジネスサイクル
経理の仕事は、商品・原材料の購入→商品の販売→代金の回収といった会社のビジネスサイクルとともに回っているんだ。
ビジネスサイクルにともなって経理の業務が発生する
それぞれの会社のビジネスサイクルと連動して、経理の仕事が発生します。具体例としてメーカーのビジネスサイクルについて考えてみましょう。
メーカーの事業は、資金の確保→商品の開発→原材料の仕入→製造→在庫→販売・回収というサイクルになっています。会社はこれを効率よく回転させ、高い付加価値を生み出していくことを目指しています。そしてこの各プロセスごとにさまざまな取引が生まれ、経理の業務が発生する仕組みです。
例えば滞りなく商品の開発が行われるように資金調達を行う、また原材料の仕入に際して支払業務や買掛金管理を担う―などが経理の仕事。そのほかにも、製造にあたってその資金繰りや原価計算などを担当する、そして次の開発や仕入の資金となる売掛金を確実に回収するといった役目を負っています。
経理として自分の会社のビジネスサイクルを理解する
販売卸業では製造原価の計算がないなど、会社の業態によってビジネスサイクルは異なります。しかし調達した資金を事業に投入して新たな資源を作り出し、その販売を通じて債権(後でお金をもらえる権利)を確保し、債権を資金に変えて再び事業に投入する、そのためにさまざまな経理の仕事が必要になるという構図は、どんな業種でも変わりません。経理に配属されたら、まず自分の会社が利益を生み出しているビジネスサイクルを理解することが大切です。
ポイント
- 経理の仕事は会社の営業サイクルと一緒に回っている。
- 事業の各プロセスごとに取引が生まれ、経理の業務が発生する。
- 業種によってビジネスサイクルは異なるが、基本は同じ。
「製造業タイプ」と「販売卸業タイプ」の違い
会社のビジネスサイクルとそれにともなう経理の仕事の流れは、業種によっても異なる。ここではそのうち「製造業タイプ」と「販売卸業タイプ」の2つに注目してみたい。「製造業タイプ」では製造原価の計算などが経理業務に含まれるのに対して、「販売卸業タイプ」は在庫管理や支払管理に関する業務が多いなどの違いがある。
製造業タイプ
モノを作るという業務の特質上、以下のような経理処理が求められる。
- モノを作るために要した原価を製造原価報告書にまとめる。
- 販売などを通じたモノの動きを損益計算書に示す。
- 期末時点でのモノの状態を貸借対照表に示す。
- 販売活動に関しては商業簿記を用いるが、製造では工業簿記の原価計算によって算出した数字を会計計上する。
販売卸業タイプ
商品を販売するという業務の特質上、以下のような経理処理が求められる。
- 「収益認識に関する会計基準」に沿って、検収基準などで売上を計上する。
- 過剰在庫や過少在庫=品切れなどによる商品ロスの回避を図る。
- 支払管理に関する業務が多い。
※上記以外にもサービス業タイプなど、さまざまな業態があるが、ここでは「モノづくり」に関わる2つのタイプを取り上げる。
ビジネスサイクルの例
自社の物とお金の流れを把握することが重要。
MEMO
資金の元手となる債権の回収は特に重要な業務の1つ。営業部門は商品を納入した時点で仕事が終わったという感覚を持ちがちだが、代金の回収の重要性について意識を促すことも経理の仕事に含まれる。
製造業タイプの会社のビジネスサイクルと経理の業務の流れ
MEMO
製造業タイプは、モノを製造加工して卸売りを行う製造業が該当する。製造にあたっては、原価計算などを含む工業簿記に基づく経理処理が必要。
販売卸業タイプの会社のビジネスサイクルと経理の業務の流れ
会社のビジネスプロセスと自分の業務のつながりをよく把握しておこう。
MEMO
販売卸業タイプは、小売業、卸売業などが該当する。その経理処理に際しては、過剰在庫や過少在庫=品切れなどによる商品ロスを回避することが重要。