Section 09 キャッシュフローの改善―在庫管理・売掛金の回収
不要な在庫は保管や管理にコストがかかるだけでなく、現金回収の遅れから資金繰りの悪化ももたらすんだ。
在庫管理で生産性やキャッシュフローを改善する
恒常的な「在庫管理」を通じて過剰在庫、滞留在庫、不良在庫などを減らすことは、生産性の向上やキャッシュフローの改善につながります。在庫管理について考える上で知っておきたいのが、「2:8の法則」。全顧客のうち20%の優良な顧客が売上の80%を占めるという考え方です。在庫も同様に、売上の80%は取り扱っている全商品のうち20%が生み出していると考えることが可能。これをベースとした「ABC分析」を用いて、在庫管理の効率化が図れます。例えば売上金額によるABC分析を行う場合、各商品の売上金額が総売上金額に占める割合の大きい順に並べ替え、任意の基準でAグループ(重要度:高)、Bグループ(重要度:中)、Cグループ(重要度:低)に分類します。そして各グループの重要度にしたがい、個別に戦略を立てて在庫管理を行う仕組みです。
売掛金の管理を通じて速やかで確実な回収を進めていく
売上に比して売掛金が特に増加している場合、営業活動に何らかの問題が考えられます。例えば契約を獲得するために売掛金の回収期限を伸ばす、回収条件を変える、また信用条件を超える額の掛売りを行っている、などが考えられます。経理担当者は代金回収の重要性について現場との意識共有を図るとともに、顧客ごとに回収サイトやその月平均売上高などを示した回収サイト一覧表を用いて、速やかで確実な回収を進めていきます。
ポイント
- 過剰在庫などを減らすため、2:8の法則を在庫管理にあてはめる。
- 生産性向上などのために、ABC分析を用いて在庫管理の効率化を図る。
- 売上と比較して、売掛金が特に増加している場合、注意が必要。
ABC分析の手順(売上金額を用いた分析の場合)
①全商品の売上金額のデータを収集
②各商品の売上金額が総売上金額に占める割合を算出
③各商品の売上割合を大きい順に並べ替え、累積売上割合を求める
④累積売上割合の80%までがA、のように任意の基準でA、B、Cの3グループに分類
⑤各グループごとに在庫管理の方針を定める
ABC分析による在庫管理方針の例
Aグループ
総売上への貢献度が高い商品。十分な保管場所を用意するとともに、発注から納品までのリードタイムを考慮して常に品切れしないよう計画的に発注する。
Bグループ
総売上への貢献度が中程度の商品。適切な販売予測に基づいて定期的に発注、あるいは在庫がなくなった時点で補充する。
Cグループ
総売上への貢献度が低い商品。最小限の量を維持するよう、在庫がなくなった時点で補充。品切れによる機会損失もあり得るが、総売上への影響は小さい。
回収サイト一覧表の例
会社名 | 締日 | 支払日 | 回収サイト | 月平均売上高 | 平均粗利益率 |
---|---|---|---|---|---|
株式会社○○○○ | |||||
○○○コーポレーション | |||||
○○○○株式会社 | |||||
○○○○○商事 | |||||
○○○貿易 | |||||
○○○○化学 | |||||
○○○○○サービス | |||||
○○○建設 | |||||
○○○○カンパニー | |||||
○○○○○工業 |
MEMO
ABC分析は売上金額以外にも、売上数量、利益、コストなどさまざまな指標を用いて行うことができる。