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CHAPTER6 ステップアップ

Section 07 中小企業の会計

経営資源が限られている中小企業向けに作られた会計ルールについて知っておこう。

中小企業は会計情報を開示する範囲が限られている

株式が一般に広く取引される上場企業、また非上場であっても規模が大きく利害関係者が多数に上る会社は、その活動が社会に大きな影響を与えます。こうした会社は金融商品取引法などにより、さまざまな規制の対象となっています。またその財務諸表などの会計情報は外部の利用者が多く、監査法人による外部監査を受けることが義務づけられています。

それに対して中小企業は、会計情報の開示を求められる範囲が金融機関、税務当局、同族株主などに限定されています。また大きな会社の経理部門は高度な会計処理に対応できる組織体制を整えていますが、中小企業は1人の経理担当者が総務や労務を兼任していることも珍しくありません。

中小企業向けの会計ルールが設けられている

こうした中小企業に対して、上場企業や大会社と同じ会計基準を適用した経理処理を求めるのは、負担が大きいことなどから実態にそぐいません。そのため中小企業向けの会計ルールとして、「中小企業の会計に関する指針」が2005年に公表されています。これは会計参与(CHAPTER5 Section18「監査役」参照)設置会社など、中規模以上の会社が対象。また2012年には、中小企業のなかでもより規模の小さい企業に適した「中小企業の会計に関する基本要領」も公表されました。中小企業はそれぞれの違いをふまえ、いずれか会社の実態に即した会計ルールを導入することが期待されています。

ポイント

  1. 「中小企業の会計に関する指針」は、会計参与設置会社などが対象。
  2. 「中小企業の会計に関する基本要領」は、より規模の小さい企業が対象。
  3. 中小企業は、自社の実態に見合った会計ルールを選択する。

会社区分と会計ルール

会社が適用する会計ルールは、その区分にしたがい、異なっている。

表「会社区分と会計ルール」

中小会計指針と中小会計要領

正式名称はそれぞれ「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」と「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」。中小企業は任意でこのいずれかを選んで適用することができる。

主な違い 中小会計指針 中小会計要領
想定対象 中小企業
特に会計参与設置会社が計算書類を作成する場合は、中小会計指針に拠ることが適当とされる。 中小会計指針に比べて簡便な会計が適当と考えられる会社。
国際会計基準との関係 影響を受ける。 影響を受けない。
各論の項目数など 項目数 19 14
内容 一定の水準を保った会計処理を記載。 利用対象となる中小企業に必要な事項を簡潔・平易に記載。
税務上の処理の取扱い 会計基準がなく税務上の処理が実態を適正に表している、またあるべき会計処理と重要な差異がない場合に適用できる。 実務での会計慣行をふまえて規定されている。
有価証券の期末評価 市場価格のある株式は時価評価だが、条件つきで取得原価を容認。 原則として取得原価。

MEMO

「中小会計指針」は、2005年に日本税理士会連合会など4団体が法務省などとの協力に基づいて公表。それ以前は中小企業の統一的な会計処理の指針が存在していなかった。

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