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CHAPTER5 決算の業務

Section 05 費用収益対応の原則と期間損益計算

損益計算書の費用と収益を対応させる

損益計算書の費用と収益を対応させる

損益計算書の作成にあたっては、費用と収益を明確に分け、それぞれの項目を対比させて示す必要があります。これが、企業会計原則の損益計算書原則が定める「費用収益対応の原則」です。

例えば小売業で売上を上げるには、仕入代金がかかります。販売した分を売上という収益に計上し、その分の仕入代金を費用=売上原価に計上することで、損益計算書上の費用と収益が対応する仕組みです。販売に要した費用など=販売費及び一般管理費も同様に、売上という収益に対応します。また営業外収益と営業外費用、特別利益と特別損失も、やはりそれぞれ損益計算書上で対応表示させます。

決算日を基準として損益の期間調整を行う

会社の事業活動は年をまたいで長期にわたり続いていきますが、損益計算書ではこれを一定期間ごとに区切り、その期間ごとの損益を計算します。これを「期間損益計算」といいます。損益計算書にその期間以外の損益などが含まれていると、正確な収益力を知ることはできません。 

適正な期間損益計算を行うため、「未収収益」「未払費用」「前受収益」「前払費用」という4つの経過勘定科目を使い、決算日を基準として損益の期間調整を行います。これらの経過勘定科目は、翌期以降の損益となります。

ポイント

  1. 費用収益対応の原則は、企業会計原則の損益計算書原則に定められている。
  2. 営業外収益と営業外費用、特別利益と特別損失も対応表示させる。
  3. 一定期間に区切って損益を計算することを期間損益計算という。

企業会計原則での定め

第二 損益計算書原則
C 費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。

粉飾と費用収益対応の原則―先行売上と費用繰延

年次決算を前提に考えた場合、期をまたぐ形で収益はできるだけ早く、費用はできるだけ遅く計上することで、当期の利益を多く見せることができる。これがエスカレートすれば、利益を過大に計上する「粉飾」という不正会計に至る。その主な手法の例として、「先行売上」と「費用繰延」が挙げられる。

先行売上
図「先行売上」

翌期の売上を当期に計上する粉飾。売掛金の回収時期も早まるため、その期日に入金されないことで売掛金の滞留が発生する。

費用繰延
図「費用繰延」

当期に発生した費用や損失を翌期に先送りする粉飾。当期の利益を過大に見せることができる。

MEMO

企業会計原則では、費用と収益はそれぞれを相殺せずに総額で対応表示させるとしている。ただし少額かつ一時的な損益は、内容が近い別の科目に合算または相殺表示することもある。

Section 05-1 費用・収益の繰延・見越―経過勘定の処理

適正な期間損益計算を行うためには、決算日をまたいだ費用・収益を調整する処理が必要になるんだ。

「費用の繰延」で当期の支出から翌期の費用を除外する

決算で重要なのが、適正な「期間損益計算」を行うこと。しかし決算日時点で、収入と収益、支出と費用が一致しないことが起こります。

例えば3月決算(会計期間=4月1日~翌年3月31 日)の会社が、10月1日に1年分の家賃(当期及び翌期の各半年分)を支払ったとしましょう。全額を費用に計上すると、当期の決算書に翌期の家賃まで反映されることになります。そこで当期の費用から、翌期の費用を除外する処理を行います。これを「費用の繰延」といいます。

これとは逆に翌期の支払いのうち当期分の費用を当期の決算に計上する処理を「費用の見越」、同様に収益についてもそれぞれ「収益の繰延」「収益の見越」という処理を行います。

繰延・見越の処理で用いる経過勘定は4種類ある

繰延・見越の処理で用いられるのが「経過勘定」という科目で、「未払費用」「前払費用」「未収収益」「前受収益」の4つがあります。

経過勘定は、継続的に提供される、または提供するサービスについて、費用や収益を期間配分する必要がある場合に用いられます。例えば3年分の保険料をまとめて支払った場合について考えてみましょう。まず当期中にサービスの提供を受けた分は、当期の費用。それに対して翌期中に受ける分は、前払費用(流動資産)として貸借対照表に計上します。さらに1年を超えて翌々期以降に受ける部分が、長期前払費用(固定資産-投資その他の資産)となる仕組みです。

ポイント

  1. 適正な期間損益計算のため、決算日をまたぐ費用や収益を調整する。
  2. 翌期以降の収益・費用を当期の決算から除外する処理が繰延。
  3. 未収・未払いの収益・費用を当期の決算に反映させる処理が見越。

費用の繰延

3月決算の会社で10月1日に出張所の家賃1年分500万円を支払った
図「3月決算の会社で10月1日に出張所の家賃1年分500万円を支払った」1
図「3月決算の会社で10月1日に出張所の家賃1年分500万円を支払った」2

費用の見越

10月1日に契約し、同日から1年分の出張所の家賃800万円を1年後に全額支払う
図「10月1日に契約し、同日から1年分の出張所の家賃800万円を1年後に全額支払う」1
図「10月1日に契約し、同日から1年分の出張所の家賃800万円を1年後に全額支払う」2

MEMO

「継続的に提供されるサービス」に対するのが「前払費用」、それ以外(商品の仕入など)の先払いは「前払金」となる。

経過勘定の仕訳例

経過勘定の仕訳例1
経過勘定の仕訳例2
経過勘定の仕訳例3
経過勘定の仕訳例4

MENO

建設業など長期プロジェクトを行う業種は、実現主義では何年も売上を計上できないこともあるため、「収益認識に関する会計基準」の適用前から工事の進捗状況に合わせた「工事進行基準」も認められていた。

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