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CHAPTER6 ステップアップ

Section 02 経営分析

財務諸表などを用いた財務分析が、経営分析の基本。他社の公開資料との比較などで客観的な分析が可能になるんだ。

財務諸表を読みこなす能力が不可欠

経営分析」では、さまざまな観点から会社の状態を分析します。なかでも特に重要なのが、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を通じた分析。これを「財務分析」といいます。

財務分析はまた他社の「有価証券報告書」などの公開資料を参照することで、他社との客観的な比較も可能になります。そのためには、財務諸表などの資料を読みこなす能力も欠かせません。財務分析はその結果をさらに掘り下げて具体的な行動計画に落とし込むことで、会社の経営に大きな意味を持つことになります。

財務分析には主に4つの手法がある

財務分析とは、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表の数字に基づき、正確な現状把握と将来予測をすることで、ベストな経営の意思決定の助けとするものです。

財務分析は、その目的によって「①収益性分析」「②安全性分析」「③生産性分析」「④成長性分析」の4種類に分類されます(下記図「経営分析の主な指標」参照)。

また①~④の分析のなかにもそれぞれさまざまな指標がありますが、「○○%以上であれば良い」「○○%を下回ると危ない」といった基準が必ずしも全て決まっているわけではありません。各指標の数字を個別に見るだけでなく下記「財務分析の比較方法」に挙げている「期間比較」「標準比較」「相互比較」を行って総合的に分析することが必要です。

ポイント

  1. 経営分析において、財務諸表を通じた財務分析が重要。
  2. 財務分析は、他社の公開資料との比較もできる。
  3. 財務分析の結果を、さらに具体的なアクションプランに落とし込む。

経営分析にあたって求められる理解

経営指標

各経営指標が示している内容が正しく理解できているか。

会計基準

会社が採用している会計基準やルールが正しく理解できているか。

時系列の情報

時系列の数値の推移から、その変化を正しく読み取ることができるか。

業界動向

業界内の競合やシェアの状況、自社の位置づけなどが正しく理解できているか。

財務分析の比較方法

期間比較

自社の過去の実績と比較する。

標準比較

業界平均などの全体的な統計データと比較する。

相互比較

競合他社を対象に比較する。

経営分析の主な指標

①収益性分析の指標

企業がどれだけ利益を上げられているのかを見る分析手法
粗利率(売上高総利益率)/ 売上高営業利益率

②安全性分析の指標

その企業にどれだけ支払い能力があるのかを分析する手法
流動比率 / 自己資本比率

③生産性分析の指標

従業員や設備など、企業が抱えている経営資源を効率良く活用しているかどうかを見る手法
労働生産性

④成長性分析の指標

企業のこれまでの成長と今後を見る手法
増収率(売上高伸び率)/ 増益率(経常利益伸び率)/ 売上高研究開発費比率

MEMO

財務分析以外の分析手法としては、経営者の人格や姿勢、従業員の男女比率や平均勤続年数、商品の強みや技術力などの分析がある。

収益性分析の指標

粗利率(売上高総利益率)

粗利率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
売上高に対する売上総利益(粗利)の割合を示す、会社の収益性を判断する際に用いられる最も基本的な指標のひとつ。商品やサービスの収益性を計る指標として有効であり高いほど良いとされるが、業種によってその水準は大きく異なる。

売上高営業利益率

売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100
売上高に対する営業利益の割合を示すもので、売上高総利益率(粗利率)と並ぶ収益性を判断するための代表的な指標のひとつ。営業利益は会社の本業で得た利益であるため、高いほど本業が順調であるといえる。売上高総利益率(粗利率)と同様、業種によってその目安は異なる。

安全性分析の指標

流動比率

流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
流動資産とは、現金および1年以内に現金化できる資産であり、流動負債は1年以内に現金を減少させる負債である。流動比率は、流動資産の流動負債に対する比率を示す指標。短期的な企業の資金繰り状況が表される。100%以上であることが必須とされ、その割合が崩れていると資金ショートの可能性が懸念されかねない。

自己資本比率

自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資産 × 100
総資産の額に対する自己資本の比率。他人資本=負債で資金調達している会社は低くなる。ただし業態によって大きく異なり、優良とされる一般の会社が数10%に上る場合があるのに対して、銀行などは10%程度が適正とされる。

指標はほかにもたくさんあるけど、まずはここからスタートなのだ。

MEMO

安全性とは、不況などに対する耐久力や債務支払い能力の面から、会社の財務内容の健全性を測る基準。その分析を通じて、会社がどう資金を調達し、将来どう返済するかを調べることが可能になる。

生産性分析の指標

労働生産性

労働生産性 = 生産量(または付加価値額)÷ 労働投入量
労働者1人当たりまたは1時間当たりに生産できる成果を示す指標。生産量÷労働投入量で算出する「物的労働生産性」と、付加価値額÷労働投入量で算出する「付加価値労働生産性」の2種類がある。なお付加価値額は売上高から原材料費など諸経費を差し引いて算出し、労働投入量は労働者数×労働時間で算出する。

成長性分析の指標

増収率(売上高伸び率)

増収率(%)=(当期売上高 ÷ 前期売上高 - 1)× 100
当期の売上高が前期からどれだけ伸びているかを示す指標。当期と前期だけでなく、少なくとも数年単位での推移の把握が必要。

増益率(経常利益伸び率)

増益率(%)=(当期経常利益 ÷ 前期経常利益 - 1)× 100
経常利益=本業以外の利益も含め会社が通常行っている業務で得た利益がどれだけ伸びているかを示す指標。売上高が増えていても、経常利益の伸びがともなっていないと経営の効率性が損なわれている恐れがある。売上高と経常利益がともに上昇傾向にある場合が最も理想的といえる。

売上高研究開発費比率

売上高研究開発費比率(%)= 研究開発費 ÷ 売上高 × 100
売上高に占める研究開発費の割合を測定する指標。新商品や新技術の開発など、将来的な売上高に結びつく研究のために、企業がどれだけ投資しているかを見ることができる。非製造業と比べて製造業で高いことが一般的であり、製造業の中でも業種によって大きく異なるので、他社と比較する場合は同じ業種のデータを用いる。

MEMO

会社の事業が複数の領域にわたる場合、それぞれの売上高や利益の成長性を分析することも必要。その結果に応じて予算や人員を重点的に投入すべき分野を絞るなど、経営方針の策定に役立てる。

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