新規登録 求人検索
新規登録

CHAPTER2 日常の経理業務と関連業務

Section 20 固定資産の管理の流れをつかもう

固定資産の種類を知り、減価償却などそれぞれに必要な処理を行っていこう。

固定資産の管理の概要

[対象]建物、機械装置、車両、器具備品、ソフトウェア、長期前払費用など
[作成する書類]固定資産台帳
[確認する書類]耐用年数表、見積書、請求書、領収書、納品書、契約書など
[作業の時期]資産の取得・売却時、決算時、償却資産申告書作成時など

固定資産の管理のスケジュール

①取得した固定資産を台帳と現物で管理する

新たに取得した固定資産を、固定資産台帳に登録。同時に現物の実査も行う

固定資産の取得時
CHAPTER2 Section20-1「固定資産の管理―台帳管理と現物管理」

②減価償却資産を定額法 / 定率法で償却

有形固定資産ないし無形固定資産を所定の方法で減価償却していく

決算時
下記「減価償却の仕組み」

③修繕・廃棄・売却に応じた処理を行う

固定資産の修繕・廃棄・売却に際し、所定の手続きにしたがい処理を行う

固定資産の修繕・廃棄・売却時
CHAPTER2 Section20-4「固定資産の管理―修繕・廃棄・売却」

④償却資産を申告する

期日までに償却資産申告書を作成して申告する

毎年1月31日まで
CHAPTER2 Section20-6「固定資産の管理―償却資産の申告」

会計において、資産は「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに分けられて貸借対照表に示されます。このうち固定資産は、次の2つの要件を満たす資産が該当します。1つめは、事業活動を円滑に行うため1年以上使用されること。使用期間が1年未満なら「消耗品」などとして扱います。2つめは、販売目的でなく自社で使用することです。

固定資産はさらに「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3種類に分けられます。有形固定資産は土地、建物、機械、備品など。無形固定資産は営業権、商標権、ソフトウェアなど。そして投資その他の資産は、投資有価証券、長期貸付金などが含まれます。

固定資産は原則として、取得した時点で全額を費用とすることはできません。資産の種類ごとに法令で定められた期間=「耐用年数」にしたがい、「減価償却」=毎年少しずつ分割して費用計上していく必要があります。減価償却の対象となる固定資産を、「減価償却資産」といいます。なお、取得価額が10万円未満の資産はその金額を業務の用に供した年度に費用計上します。

MEMO

固定資産の価値が時間とともに減る=減価には、物理的減価と機能的減価の2通りがある。前者は物理的な経年劣化にともなう減価であり、後者は技術革新などによって古くなったことにともなう減価。

固定資産の区分

固定資産とは1年以上使用できる / 自社で使用する資産のこと

有形固定資産 具体的な形のある資産 減価償却資産 建物、 構築物、機械装置、 車両運搬具、工具器具備品など
減価償却資産以外 土地など
無形固定資産 具体的な形のない資産 減価償却資産 ソフトウェア、商標権、特許権、営業権など
減価償却資産以外 借地権、地上権、地役権など
投資その他の資産 有形固定資産と無形固定資産以外の資産。 他社への出資や貸付、長期の前払いなど 投資有価証券、 出資金、 長期貸付金、長期前払費用、 保険積立金、敷金保証金など

高額で何年にもわたって使用するものを管理するのです。

MEMO

従業員1000人以下で資本金1億円以下などの要件を満たすの中小企業は、2024年3月31日までに取得して使用を開始した取得価額30万円未満の固定資産を一括で損金算入できる特例が設けられている。

減価償却の仕組み

減価償却とは

固定資産の取得に要した費用の全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分し、各期に相当する金額を費用として計上すること。

図「600万円で買った業務用車両を4年間で減価償却するイメージ」
耐用年数とは

その資産が使用可能な年数のこと。資産の種類ごとに、財務省令で耐用年数が定められている。

減価償却資産は使用するにつれて損耗し、価値が下がる。そして一定年数を経ると、その資産の本来の価値 を喪失することになる。そこで使用開始日から効用喪失日までの期間を耐用年数とし、毎年少しずつ費用として計上していくのが減価償却。

図「耐用年数」

上は300万円で購入した耐用年数3年の電飾看板を、3年間で減価償却する場合。損耗によって毎年100万円ずつ価値が下がっていき、その分を費用として計上。看板の資産としての価値は、3年後にゼロとなる。

減価償却の種類

減価償却は、「定額法」と「定率法」に大別される。以下、定額法と定率法でそれぞれ5年間で減価償却する場合を見てみよう。

定額法による減価償却

毎年同じ額を償却していく方法

図「定額法による減価償却(毎年同じ額を償却していく方法)」

定率法による減価償却

毎年の残高に対して所定の償却率を乗じた金額を償却していく方法
※償却率は、耐用年数ごとに定められている。

図「定率法による減価償却(毎年の残高に対して所定の償却率を乗じた金額を償却していく方法)」

Section 20-1 固定資産の管理―台帳管理と現物管理

有形固定資産は台帳に登録して記録をつけつつ、定期的に現物と突き合わせながら管理していくんだ。

有形固定資産は固定資産台帳に登録して管理する

有形固定資産の管理は、「台帳管理」と「現物管理」という2つの方法があります。台帳管理は、勘定科目ごとに分類した「固定資産台帳」を使った管理方法。新たに固定資産を取得したら、この固定資産台帳に登録していきます。

固定資産台帳は固定資産を保有する会社に作成及び備え付けを義務づけられている帳簿ですが、記載項目などの定めはありません。ただし一般には、資産名や数量などのほか、「事業供用日」「取得価額」「耐用年数」「償却方法」などが記載されます。

事業供用日とは、固定資産を実際に使い始めた日。取得価額には固定資産の購入代金に加え、運送費や据付費などが含まれます。耐用年数は、資産の種類ごとに定められた減価償却の期間。そして償却方法は、主に定額法または定率法のいずれかが用いられます。

固定資産は増減するため現物の実査を行う

現物管理は、管理ラベルを貼付するなどして固定資産の現物を固定資産台帳と紐づける形で進めていきます。固定資産は購入、売却、除却、紛失などで数が増減するのが普通。そのため現物が実在するかどうか、定期的な実査によって固定資産台帳と突き合わせる作業が不可欠です。年に複数回の棚卸を行う会社も少なくありません。

ポイント

  1. 固定資産は台帳と現物の両面から管理する。
  2. 現物には管理ラベルを貼るなどして台帳と紐づける。
  3. 定期的な実査で固定資産台帳と現物を突き合わせる。

固定資産台帳の例

固定資産台帳は、会社が持っている固定資産のそれぞれについて、種類、使用している場所、取得価額、減価償却費などを正しく把握するための書類。

固定資産台帳の例
固定資産台帳の主な記載項目
  • 勘定科目
  • 資産コード
  • 資産名
  • 数量
  • 事業供用日
  • 取得価額
  • 償却方法
  • 耐用年数
  • 償却率
  • 期首帳簿価額
  • 期中増加
  • 期中減少
  • 当期償却額
  • 期末帳簿価額
  • 償却累計額

減価償却の償却方法

主な償却方法である定額法と定率法だが、2007年度(平成19年度)に大きな変更があった。それ以前の方法を現在「旧定額法」「旧定率法」と呼んでいる。

種類 内容
定額法 毎年同じ額を償却していく方法。
定率法 毎年の残高に所定の償却率をかけた金額を償却していく方法。
旧定額法 毎年同額を償却、 取得価額 × 90% × 旧定額法償却率で計算。
旧定率法 未償却残高 × 旧定率法償却率で毎年の償却費を計算。

固定資産の管理はそのほかに「保全管理」という考え方もある。これは不慮の事故や災害などに備えて固定資産に適切な保険をかけるなど、資産保全のための管理だ。

MEMO

自動車を購入する際の登録免許税、車庫証明費用、また建物完成時の落成式の費用などは、取得価額に含めるかどうか任意で決めてかまわない。含めない場合は租税公課、交通費など当期の費用として処理する。

主な減価償却資産の耐用年数表

減価償却資産の耐用年数は、資産の種類ごとに法令で詳しく定められている。詳細は所轄官庁のウェブサイトで確認しよう。

主な減価償却資産の耐用年数表1
主な減価償却資産の耐用年数表2

出典:金融庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

Section 20-2 固定資産の管理―償却方法・無形固定資産

減価償却の方法として主に使用されているのは、定額法と定率法。ソフトウェアなど無形固定資産は定額法を用いるんだ。

減価償却資産は主に定額法か定率法を用いる

企業会計原則が定めている減価償却の方法には、定額法定率法級数法生産高比例法の4つがあります。このうち主に使用されているのは、定額法と定率法の2つです。定額法とは、毎年同じ額を償却していく方法。取得価額から決まった額をマイナスするだけなので、計算が簡単です。もう1つの定率法とは、毎年決まった割合=「償却率」を期首の未償却残高にかけて償却していく方法。年を追うごとに償却額が小さくなっていくのが特徴です。

2つのうちどちらを適用するかは、減価償却資産の種類によって異なります。また税務署への届出によって任意の方法を選択できる場合もあります。

ソフトウェアは目的に応じて耐用年数が異なる

無形固定資産も、使用可能期間が1年以上でなおかつ取得価額が10万円以上の場合、減価償却を行います。償却方法は、定額法のみです。

無形固定資産にもさまざまな種類がありますが、一般に実務で扱うことが多いのはソフトウェアでしょう。税法で定められた耐用年数には2通りあり、販売するためのマスターや研究開発用のソフトウェアは3年、自社で使用するそれ以外のソフトウェアは5年と定められています。またソフトウェアの開発費用は、研究開発目的の場合に研究開発費として計上可能。それに対して販売目的の開発費用は、耐用年数3年の無形固定資産として扱います。

ポイント

  1. 定額法は、毎年同じ額を償却していく。
  2. 定率法は、償却率を期首の未償却残高にかけて償却していく。
  3. 税法で定められたソフトウェアの耐用年数には2通りある。

定額法と定率法の具体的な計算例

取得価額100万円、耐用年数10年の減価償却資産の場合。

定額法 定率法
耐用年数 10年 10年
償却率 0.100 0.200
改定償却率 - 0.250
保証率 - 0.06552
償却保証額 - 65,520円
(=1,000,000×0.06552)
1年目の償却費の額 100,000円
(=1,000,000×0.100)
200,000円
(=1,000,000×0.200)
2年目~6年目の償却費の額 100,000円
(=1,000,000×0.100)
(1,000,000-前年までの償却費の合計額)
x0.200
7年目の償却費の額 100,000円
(=1,000,000×0.100)
65,536円
(=改定取得価額 262,144円×0.250)
[計算上の注意点]
①調整前償却額の計算
(1,000,000 前年までの償却費の合計額)
×0.200=52,429
②調整前償却額52,429円が償却保証額65,520円に満たないので、 改定取得価額(注)に改定償却率を乗じて償却費の額を計算します。
注:改定取得価額は (1,000,000-前年までの償却費の合計額)です。
8・9年目の償却費の額 100,000円
(=1,000,000×0.100)
65,536円
改定取得価額×0.250
10年目の償却費の額 99,999円
期首帳簿価額 1円
<1,000,000×0.100
65,535円
期首帳簿価額 1円<改定取得価額×0.250

出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」

250%定率法は、平成19年度の税制改正で導入された定率法による減価償却方法。定率法の償却率を、定額法の償却率の250%とする。さらに平成23年度税制改正で、これが200%に引き下げられた。

MEMO

定率法では通常の償却率で計算した当期の減価償却費が法令で定められた一定額=償却保証額を下回ると、改定償却率による計算に切り替える。償却保証額は、取得価額に所定の保証率をかけて求める。

減価償却資産の償却率

減価償却資産の償却率

出典:国税庁「減価償却資産の償却率表」

減価償却資産の償却率も、耐用年数などに基づいて法令で細かく定められているんだ。詳しくは所轄官庁のウェブサイトをチェックしよう。

MEMO

減価償却資産の減価償却は資産の取得時点でなく、使用を開始した時点から行う。例えば機械装置の場合、据付~試運転を経て実際に製品の製造などが始まった時点を基準とする。

資産の種類と減価償却の方法(平成28年4月1日以後取得のもの)

資産の種類 減価償却の方法 選択の可否 税務署への届出
建物 定額法 不可 不要
建物附属設備
構築物
機械装置 定率法 (原則) 定額法も可 要(定額法を選択する場合)
車両運搬具
工具器具備品
上記以外の有形減価償却資産(*1)
無形減価償却資産(*2) 定額法 不可 不要

*1 鉱業用減価償却資産は除く
*2 鉱業権を除く
※鉱業用減価償却資産、鉱業権は生産高比例法も選択可(要届出)。

減価償却に関するこうしたルールは税法で定められている。会社は任意の方法で減価償却することも可能だが、多くの場合は税法にしたがって償却計算しているんだ。

平成28年3月31日以前に取得した有形固定資産の償却方法

建物 平成10年3月31日以前 旧定額法または旧定率法
平成10年4月1日以後 旧定額法
平成19年3月31日以前
平成19年4月1日以後 定額法
建物以外の有形固定資産 平成19年3月31日以前 旧定率法または旧定額法
平成19年4月1日以後
平成24年3月31日以前
250%定率法または定額法
平成24年4月1日以後
平成28年3月31日以前
200%定率法または定額法

平成19年3月31日以前に取得していても、同年4月1日以後に事業の用に供した減価償却資産は旧定額法・旧定率法ではなく、定額法または250%定率法で減価償却しよう。

MEMO

期中に新しい減価償却資産を取得した場合、事業に使い始めた日から期末までの月数分(1カ月未満は切上げ)を当期の減価償却の対象とする。

Section 20-3 固定資産の管理―少額資産の扱い

10万円未満の固定資産は減価償却が不要。また20万円未満や30万円未満でも通常の減価償却が不要になることがあるんだ。

取得価額が10万円未満なら一括で費用に計上できる

「1年以上使用可能」な資産であれば、減価償却資産に該当します。ただし数千円~数万円の少額な資産まで全て減価償却するのは、処理が煩雑で合理的ではありません。そのため取得価額が10万円未満であれば、事業に供した時点での費用計上が可能になっています。こうした少額な固定資産を、「少額減価償却資産」と呼びます。少額減価償却資産は減価償却しないため、固定資産台帳に登録する必要はありません。

取得価額が20万円未満は、まとめて3年で償却できる

取得価額が20万円未満の場合は固定資産の種類ごとの耐用年数にかかわらず、一律に3年間での減価償却が可能な「一括償却資産」として扱うことができます。一括償却資産は、1つずつ個別の資産として登録する必要はありません。事業年度ごとに全ての一括償却資産をまとめた合計額を、1つの資産として固定資産台帳に登録すればOKです。ただし3年の間に一括償却資産のいずれかを廃棄・売却しても、個別の会計処理は行いません。この場合も、全てまとめて3年で減価償却する決まりです。

そのほか中小企業には、取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産を事業に供した時点で全額を費用に計上できる特例があります。ただしその事業年度ごとの合計額は、300万円が限度となります。

ポイント

  1. 10万円未満の固定資産は減価償却する必要がない。
  2. 10万円以上20万円未満の固定資産は一律に3年間での減価償却が可能。
  3. 中小企業は10万円以上30万円未満の固定資産を全額費用にできる。

取得価額による特例の適用の有無

図「取得価額による特例の適用の有無」

中小企業は取得価額が10万円以上20万円未満であれば一括償却資産または中小企業の特例のいずれかを選ぶことができる。

一括償却資産の特徴

一括償却資産は現物を廃棄や売却しても、減価償却には影響しない。

取得価額20万円未満で購入した資産が対象

資産の種類に関わらず、3年で毎年3分の1ずつ償却

固定資産台帳には、「一括償却資産」として1つの資産として計上

3年の間に廃棄・売却したものがあっても毎年の償却額は変わらない

取得価額により中小企業特例などを受けられる時でも、その適用を受けずに通常の減価償却を選べるんだ。

MEMO

固定資産の会計処理は税抜方式と税込方式の両方が認められており、会社ごとに経理規程などで定められている。税込方式の会社の場合、固定資産の取得価額は税込価格で計上する。

Section 20-4 固定資産の管理―修繕・廃棄・売却

固定資産を修繕・廃棄・売却した際は、それぞれに応じた処理が必要になるんだ。

修繕費と資本的支出を区別して計上する

固定資産は使用しているうちに劣化、故障、また新たな規制への対応などで修繕が必要になる場合があります。その支出は「修繕費」として費用計上するほか、資産としての計上が必要なこともあります。修繕の範囲を超えて減価償却資産の価値や耐久性を高めるような場合は「資本的支出」として、種類・耐用年数が同じ資産を新たに取得したのと同様の処理を行います。

修繕費の場合は、損益計算書の販管費として当期に一括で計上可能。それに対して資本的支出は貸借対照表に固定資産として計上し、減価償却によって費用化していきます。修繕費か資本的支出かによって当期に計上される費用の額が変わり、税負担が異なってくる仕組みです。その判定の基準は複雑なので、経理担当者はまず社内での判断材料から知ることが大切です。

廃棄・売却は期首の帳簿価額を元に処理する

減価償却の計算は、税法上、期末時点で使用している減価償却資産のみが対象とされています。したがって期中に廃棄した減価償却資産は、期首の帳簿価額を「固定資産除却損」として計上。また同じく売却した場合は、期首の帳簿価額と売却額の差額を「固定資産売却損益」として計上します。いずれの場合も固定資産台帳に廃棄や売却を登録するのを忘れずに。廃棄の場合、証拠となる書類がないと税務調査で問題となることもあります。

ポイント

  1. 固定資産の修繕に要した支出は資産として扱う場合がある。
  2. 固定資産を廃棄したら期首の帳簿価額を固定資産除却損に計上。
  3. 売却の場合は期首の帳簿価額と売却額の差額を固定資産売却損益に計上。

修繕費と資本的支出の判定チャート

修繕費と資本的支出の判定チャート
7:3基準とは?

減価償却資産の修理・改良などに要した支出で資本的支出か修繕費かが明らかでない金額がある場合に、以下のように区分する経理処理のこと。

①修繕費:その金額の30%相当額と固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ないほうの金額
②資本的支出:支出額から①を引いた残り

MEMO

減価償却資産が移転した場合の会計処理は必要ないが、固定資産台帳の修正を行っておく。固定資産税は地方税なので、市区町村をまたがる移転の場合は申告先の自治体が変わってくる点に注意。

Section 20-5 固定資産の管理―長期前払費用

数年分の保険料などは支払い時に一括で費用として計上できず、長期前払費用=固定資産として扱わなくてはいけないんだ。

長期前払費用は固定資産として計上する

「長期前払費用」も、固定資産として貸借対照表に計上される支出です。

前払費用とは、継続的なサービスなどの契約について前払いした費用のうち、期末時点でまだその提供を受けていない分のこと。さらに原則として、決算日の翌日から1年以内に費用化される支出が短期前払費用、1年を超えて費用化される支出が長期前払費用として区別されます。短期前払費用は前払費用という科目で貸借対照表の流動資産に、長期前払費用は固定資産に計上されます。

例えば火災保険や自動車保険などは、月払いや年払いよりも割引になるため数年分の保険料を初年度に一括で支払うこともあります。この場合、決算日から1年以内の分を前払費用として流動資産に、それ以降の分を長期前払費用として固定資産に計上する仕組みです。

礼金、権利金などは原則5年で償却する

また不動産契約時の礼金、権利金、更新料などのように、直接のサービスなどの対価ではないものの、その支払いによって権利を取得するような支出があります。これらも支出額が20万円以上の場合、支払い時に一括で費用とすることはできず、長期前払費用として計上しなくてはいけません。これを原則5年で償却するのが決まり。ただし賃借期間が5年未満で、なおかつ契約更新時の更新料支払いが決まっている場合、その賃借期間が償却期間となります。

ポイント

  1. 前払費用は短期前払費用と長期前払費用に分かれる。
  2. 前払費用は流動資産、長期前払費用は固定資産。
  3. 礼金、権利金、更新料なども長期前払費用として処理する。

長期間にわたるサービス提供の支払い

来期以降の支払いを先にする場合の処理。

借入にあたり、信用保証料30万円を支払った。保証期間5年。
中途で保証契約を解約した場合、残期間分の保証料が返金される。

図「長期間にわたるサービス提供の支払い」

礼金、権利金、更新料

支払いをしたことにより、権利を取得した場合の処理。

事務所の賃貸借契約(契約期間3年、家賃30万円〔月額〕、礼金30万円、要更新料の支払い)をした。

図「支払いをしたことにより、権利を取得した場合の処理」

建物を賃借する際の礼金

更新料の支払いの有無で償却期間が変わる。

図「建物を賃借する際の礼金」

※支出額が20万円未満の場合は、支出時に全額を費用計上できる。

MEMO

長期前払費用は固定資産に区分されるが、有形固定資産でも無形固定資産でもない「投資その他の資産」(長期預金、投資有価証券、長期貸付金などが含まれる)として扱われる。

Section 20-6 固定資産の管理―償却資産の申告

償却資産は、毎年申告を行って償却資産税を納める必要があるんだ。

会社は償却資産申告書を作成して申告を行う

会社が保有している「償却資産」には、「償却資産税」がかかります。会社は毎年、期日までに「償却資産申告書」を作成して申告を行い、償却資産税を納付しなくてはいけません。

償却資産とは基本的に、建物以外の減価償却資産を指します。無形固定資産、少額減価償却資産、一括償却資産、繰延資産などは含まれません。

償却資産の申告は、1月1日時点で所有している償却資産が対象。申告期限は、毎年1月31日です。経理担当者は1月1日までに取得または売却・除却した資産を固定資産台帳に登録した上で、そのなかから償却資産をピックアップします。続いて償却資産の明細書作成を経て償却資産申告書を作成し、資産が所在している市町村役場で申告を行います。複数の市町村で資産を保有している場合、それぞれの市町村に対して申告しなくていけません。

課税標準額が150万円未満だと償却資産税はかからない

申告を受けた市町村役場は納税額を計算し、納税通知書を送付します。一般的な税率は1.4%。ただし市町村などが課税標準額=対象資産の評価額の合計が150万円未満だと判定した場合、償却資産税はかかりません。

納税通知書の送付時期は、例えば東京23区の場合は6月上旬頃で、納付は6月、9月、12月、翌2月の計4回に分けて行うことができます。

ポイント

  1. 会社が保有している償却資産には償却資産税がかかる。
  2. 会社は償却資産申告書を作成して申告を行い、償却資産税を納付する。
  3. 申告は償却資産が所在する市町村に対して行う。

償却資産税の納付の流れ(東京23区の場合)

表「償却資産税の納付の流れ」
業種 主な償却資産の例
共通 パソコン、コピー機、ルームエアコン、応接セット、内装・内部造作など(テナントが取りつけた場合)、看板(広告塔、袖看板、ネオンサイン)、LAN設備など
製造業 金属製品製造設備、食料品製造設備、旋盤、ボール盤、梱包機など
印刷業 各種製版機・印刷機、断裁機など
建設 ブルドーザー・パワーショベル・フォークリフトなどの土木建設車両(軽自動車税一種別割一の課税対象以外)、大型特殊自動車など
娯楽業 パチンコ器、パチンコ器取付台(島工事)、ゲーム機、両替機、カラオケ機器、ボウリング場用設備など
料理飲食店業 テーブル、椅子、厨房用具、冷凍冷蔵庫、カラオケ機器など
小売業 陳列棚・陳列ケース(冷凍機または冷蔵機つきも含む)など
理容・美容業 理容・美容椅子、理容・美容用洗面設備、消毒殺菌器、サインポールなど
クリーニング業 洗濯機、脱水機、乾燥機、プレス機、ボイラー、ビニール包装設備など
不動産貸付業 受変電設備、発電機設備、蓄電池設備、中央監視設備、門・塀・緑化施設などの外構工事、駐車場などの舗装など
駐車場業 機械式駐車設備(ターンテーブルを含む)、舗装路面など
ガソリンスタンド 洗車機、ガソリン計量器、独立キャノピー、防壁、地下タンクなど
ホテル・旅館業 客室設備(ベッド、家具、テレビなど)、厨房設備、洗濯設備、音響設備、放送設備、家具調度品、駐車場設備など

出典:東京都主税局ウェブサイト「固定資産税(償却資産)」

MEMO

対象資産の評価額は、取得価額から減価償却額を引いた帳簿価額が該当する。ただし市町村役場で行っている減価償却費の計算方法は、会社のそれとは異なることもあるので注意。

償却資産申告書(償却資産課税台帳)

償却資産申告書(償却資産課税台帳)

①資産が所在する市町村役場に提出する(東京23区の場合、都税事務所に提出)。
②顧問税理士を記載。
③申告書の所在地と同じ市町村で償却資産の所在地を記載。
④リースなど借用資産がある場合に記載。
⑤欄15の事業所等資産がある場合、該当する番号を脇に記載。
⑥前年中に資産の増減がなかった場合は「増減なし」、対象資産が1つもない場合は「対象資産なし」と記載。

欄8〜14の記載方法
欄8, 9 法人税で耐用年数の短縮や増加償却を適用し、償却資産税でも届出書を提出していれば「有」。通常は「無」。
欄10, 11 償却資産の種類に応じて非課税申告書や特例届出書を提出していれば「有」。通常は「無」。
欄12 法人税で「特別償却又は圧縮記帳」の適用を受けていれば「有」(償却資産税ではその適用はない)。
欄13 通常は「定率法」を選択。償却方法の届出書で定額法を選択していれば「定額法」。
欄14 法人税で青色申告書を提出していれば「有」。提出していなければ「無」。

種類別明細書(増加資産・全資産用)

種類別明細書(増加資産・全資産用)

種類別明細書(減少資産用)

種類別明細書(減少資産用)
経理の仕事の流れとしくみがまるごとわかる
INDEX