Section 11 内部情報の取り扱い
会社にとって最も重要なお金の情報を一手に扱う経理は、他部門以上に徹底した機密保持の義務を負っているんだ。
業務で知り得た情報を漏らさないよう常に意識する
適正な情報の管理も、特に留意しなくてはいけないことの1つ。会社のお金の流れを記録する経理担当者は、全部門の取引から社員1人1人の給与、さらに会社の経営状態や資産の状況に至るまで、さまざまな内部情報に精通することになります。それだけに経理担当者は情報の扱いについて、他部門以上に高いモラル意識が求められます。業務を通じて知り得た情報は、外部の人はもちろん、親しい同僚でもみだりに口外することは許されません。
特に上場している会社は、投資家保護の観点から厳正な情報の管理が必要。飲み会などの席でうっかり自社の業績について漏らしてしまう、といったことも慎まなくてはいけません。また私的な電子メール、SNSでのやり取りも、同様に気をつけるよう心がけましょう。
書類や記録メディアの扱いにも注意を徹底する
そのほか書類や伝票の扱いにも、注意が必要です。外部に伝票などを持ち出すのはもちろん、書類をテーブルに出したまま席を離れたりしないよう気をつけることが求められます。
また会計ソフトを使った作業では、データの紛失・流出を防ぐためのルールが不可欠。パソコン、各種記録メディア、またIDやパスワードなどの取り扱いについて、社内ルールの遵守が欠かせません。
ポイント
- 経理担当者は情報の扱いについて特に高いモラル意識が必要。
- 上場企業の場合、投資家保護の観点からより厳正な管理を心がける。
- 書類や電子データの流出にも注意する。
機密保持の対象となる情報
下記に該当する情報が未公表の場合、口外や漏洩を厳重に慎む。またメディアですでに報じられている内容でも、会社として未公表であれば同様に扱う。
- 決算や業績予想の数値
- 役員の異動
- 剰余金の処分内容
- 増資・減資
- 株式分割・自己株式買付の計画
- 業績に影響を及ぼす発明・開発の情報
- 合併・M&Aの計画
- 社員・役員の給与・賞与・手当など
上記の項目はいわば「トップシークレット」。それ以外の情報も扱いに注意しなくちゃいけないのです。
機密保持に関する社内規定
秘密情報の取り扱いを規定するルールを策定し、社内に周知することも推奨されている。社内規程の内容には、以下の例が挙げられる。
- 適用範囲(役員、従業員、派遣労働者、委託先従業員など)
- 秘密情報の定義
- 秘密情報の分類(「役員外秘」「部外秘」「社外秘」など)
- 秘密情報の分類ごとの対策
- 管理責任者
- 秘密情報及びアクセス権の指定に関する責任者
- 秘密保持義務の対象、内容
- 罰則
MEMO
株価に大きな影響を与える情報を知っている会社関係者が、その公表前に株式などの売買を行うことはインサイダー取引として法律で禁止されている。