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CHAPTER3 給与計算と年末調整

Section 07 年末調整の流れをつかもう

毎年12月の大きな業務が、年末調整。余裕を持ったスケジュール管理を心がけよう。

年末調整の概要

[対象者]従業員、パート、アルバイトなど
[回収する書類]扶養控除等申告書、保険料控除申告書、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書など
[書類の提出]従業員、税務署、市町村役場など

年末調整のスケジュール(12月25日支給の給与で行う場合)

①対象者に各種書類を配る

「給与所得者の保険料控除申告書」などの書類を対象者へ配布

12月1日頃
CHAPTER3 Section07-1「年末調整―書類の回収と税額計算」

②配布した書類を回収

対象者から必要書類を回収。期日までに提出がない人に督促する

12月10日頃
CHAPTER3 Section07-1「年末調整―書類の回収と税額計算」

③回収した書類をチェック

記入漏れや誤り、必要書類の添付漏れなどをチェックする

12月15日頃
CHAPTER3 Section07-1「年末調整―書類の回収と税額計算」

④各種書類の作成

源泉徴収簿、源泉徴収票、所得税の差額分を調整した給与明細書を作成

12月20日頃
CHAPTER3 Section07-2「年末調整―源泉徴収簿~源泉徴収票の作成」

⑤納付書の提出

所得税の過不足を精算して納付税額がなかった場合、税額「0」の納付書を税務署へ提出

翌年1月10日まで
CHAPTER3 Section07-2「年末調整―源泉徴収簿~源泉徴収票の作成」

⑥源泉徴収票の提出

従業員に渡すとともに、対象者については税務署へも提出する

翌年1月末日まで
CHAPTER3 Section07-2「年末調整―源泉徴収簿~源泉徴収票の作成」

会社は月ごとに従業員の給与から「源泉所得税」を控除し、税務署に納めています。ただしその税額は毎月の課税対象額に「給与所得の源泉徴収税額表」をあてはめた概算であり、給与と賞与を合計した年間総所得額に対する所得税額とは差額が生じています。そこで会社は毎年12月の給与計算にあたって税金の計算をやり直し、税額の過不足を調整しなくてはいけません。これを「年末調整」といいます。年末調整の対象となる主な要件は、年間の所得が2000万円以下で、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していること。ほとんど全ての従業員が対象になると考えていいでしょう。なお、年間の所得が2000万円を超える、中途退職で年末調整を受けていない、複数の所得がある、また医療費控除などの控除がある人は、自分で所轄の税務署に確定申告を行って所得税額の精算を行う必要があります。

年末調整にあたって経理担当者は従業員から各種書類を提出してもらい、それを元に控除の合計額を算出します。この書類を回収する作業に手間がかかることが多いため、余裕を持ったスケジュール管理が欠かせません。

MEMO

給与から預かるのは所得税のほかに復興特別所得税も含まれる。本書では理解しやすいよう特別に使い分ける場合を除き、所得税とだけ記載している。

年末調整による過不足の精算

図「年末調整による過不足の精算」

MEMO

会社は年末調整を義務づけられているため、従業員が自分で確定申告している場合でも、対象者については必ず行う必要がある。

Section 07-1 年末調整―書類の回収と税額計算

従業員から書類を回収し、源泉徴収簿を使って所得税額を計算するんだ。

各種書類の配布と回収はスケジュール通りに済ませる

年末調整の手順はまず、対象者を確定させるところから始めます。年末調整の対象者となる主な要件は、1年を通じて勤務している、年の途中で就職して年末まで勤務している、死亡または著しい障害のため退職して当年中に再就職できないと見込まれる人、などです。

続いて各従業員に「給与所得者の保険料控除申告書」などの書類を配布し、記入および必要な書類を添付の上で回収。配布は12月の給与支払日の25日前、回収は同じく給与支払日の15日前まで位を目途に済ませましょう。

源泉徴収簿を使って所得税額を計算する

回収した書類に基づいて年間の所得税額を計算し、すでに給与や賞与から概算で控除されていた税額との過不足を算出します。一連の計算は、各従業員ごとに「源泉徴収簿」を作成して処理するのが一般的。また各種の計算に必要な「給与所得控除後の給与等の金額の表」「算出所得税額の速算表」「配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表」なども、あらかじめ入手しておきましょう。これらは国税庁ウェブサイトからダウンロード可能です。

算出した過不足税額については、12月の給与(年内最後の給与)または12月に支給する賞与において、プラスまたはマイナスして精算します。

ポイント

  1. 年末調整の業務では、まず対象者を確定させ、各種書類の配布・回収を行う。
  2. 回収した書類を元に概算で控除されていた所得税額との過不足を計算する。
  3. 過不足税額については、年内最後の給与で精算する。

年末調整の対象者

図「年末調整の対象者」

従業員から回収する書類

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書

※住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けて2年目以降の従業員は、以下の書類も必要。

  • 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

MEMO

年末調整の対象になる給与は原則として、1月1日から12月31日までに支給日が到来する分。仮に何らかの事情で支給が遅れていても、本来支払われるべき期日に基づいて処理する。

Section 07-2 年末調整―源泉徴収簿~源泉徴収票の作成

源泉徴収簿に従業員ごとの情報を集約して所得税額を計算するんだ。

源泉徴収税額と年税額の過不足を精算する

源泉徴収簿」は国税庁のウェブサイトでPDF版が配布されています。ただしこれは法律で作成が義務づけられているわけでなく、会社ごとに独自の書式で作成してもかまいません。また、給与計算ソフトにも通常用意されています。

計算に際してはまず左側の欄に、「賃金台帳」に基づいて当年に支払った給与と賞与の額を転記。続いて従業員から回収した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの各種申告書、また国税庁が同様に配布している「給与所得控除後の給与等の金額の表」などの表を元に、課税給与所得金額、さらに年税額を順に算出。最後にすでに支払った源泉徴収額と突き合わせて、源泉徴収税額と年税額の過不足を計算し、年内最後の給与または12月支給の給与で精算します。

源泉徴収票と給与支払報告書を作成する

源泉徴収票」と「給与支払報告書」は、いずれも1年間の給与と正しい所得税額などを記載する書類。内容がほぼ同じなので、税務署では4枚綴りになった複写式の用紙を配布しています。収入はもちろん扶養家族など個人情報が多数記載されるので、取扱いには注意しなくてはいけません。

源泉徴収票は1通を従業員へ渡し、給与支払額が500万円超などの対象者については、もう1通を税務署へ提出します。また給与支払報告書は2通まとめて総括表とともに従業員が住む市町村役場に提出。いずれも期限は翌年1月末日までです。

ポイント

  1. 源泉徴収簿は独自の書式で作成してもかまわない。
  2. 計算を終えたら源泉徴収票と給与支払報告書を作成する。
  3. 源泉徴収票と給与支払報告書は翌年1月末日までに提出する。

源泉徴収票

源泉徴収票

MEMO

年末調整を行う12月分の源泉所得税の納付書には、年末調整による過不足の合計を「年末調整による不足(超過)税額」欄に記入する。

源泉徴収簿の記入

源泉徴収簿は月々の給与支払額、社会保険料、所得税の合計額を計算し、各種の所得控除を加味して所得金額を求め、最終的に所得税額を計算するための書類。

源泉徴収簿
源泉徴収簿2
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