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CHAPTER5 決算の業務

Section 10 役員報酬の取り扱い

役員に支払う報酬も税務上の取り扱いに注意が必要なんだ。

役員報酬が損金として認められるケースは限られている

従業員に支払われる給与に対して、役員に支払われるのが役員報酬。この2つは、税務上の取り扱いに大きな違いがあります。

従業員の給与は、原則として全額を損金に算入することが可能。しかし役員報酬が損金として認められるのは、以下の3通りのケースに限られています。

1つめは「定期同額給与」。1カ月以下の期間で定期的に報酬が支給され、その事業年度の各支給時期における支給額が同額である、つまり毎回同じ金額を支払っていることが要件です。2つめは「事前確定届出給与」。これは定期同額給与と異なり、例えば夏と冬のボーナスを役員に支払うといった場合の定めです。役員に賞与のような形で報酬を支払うには、あらかじめ株主総会などで決議した上で、1カ月以内に所轄の税務署に届出なくてはいけません。3つめは「業績連動給与」。業績に連動して給与を支払う場合は、その取り決めが「有価証券報告書」に記載されているなどの要件があります。

過大だと見なされた役員報酬は損金として認められない

これらの条件を満たしていても、税務署に役員報酬の金額が過大だと見なされた場合は損金として認められません。役員の仕事の内容、会社の業績、従業員の給与、同業他社の役員報酬の金額などを総合的に見て、その会社の役員報酬が納得できる合理的な水準かどうかが判断されます。

ポイント

  1. 役員報酬と従業員給与には、税務上の扱いに大きな違いがある。
  2. 役員報酬が損金になるのは3つのケースに限られる。
  3. 納得できる合理的な水準を超えた役員報酬は、損金として認められない。

定期同額給与の改定手続き

期中に額を改定した定期同額給与が損金として認められるには、以下のいずれかを満たさなくてはいけない。なお、改定前の支給額は毎回同額であり、かつ、改定後の支給額も毎回同額であることが条件となる。

①事業年度開始から3カ月以内に改定を行った
②事業年度内にその役員の地位や職務などに大きな変更があった
③事業年度内に会社の経営が著しく悪化したことなどにより改定を行った

儲かったからといって、決算間際に上げるのはNGなのです。

役員報酬が過大かどうかの判定基準

形式基準

株主総会などの決議や定款で定めている報酬の限度額以内であるかを判断する。

実質基準

役員の仕事の内容、会社の業績、従業員の給与、同業他社の役員報酬の金額などを総合的に判断する。他社の水準より多い報酬を支払う場合は、税務署が納得できる合理的な理由が求められる。

※以下のような支出は役員報酬と見なされることがあるので、事前の確認が必要。

①無利息で金銭を貸した場合の利息相当額
②土地や建物を安く貸した場合の適正な賃料との差額
③無償譲渡した資産の時価

MEMO

こうした役員報酬の損金算入に関する制限は、オーナー企業の役員が法人税を減らすために過大な役員報酬を自分たちに支払って利益を相殺するなどの行為を防ぐ狙いで導入されている。

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