Section 09 経理が遵守すべき法律とルール
経理は、公正・妥当と認められる会計原則を規範とするのが大前提。そのためにさまざまな法律や公的なルールがあるんだ。
経理は公正・妥当なルールに則って行われる必要がある
経理業務は、さまざまな法律や公的に定められたルールに則って行われる必要があります。こうした法律やルールの元となっているのが、一般に公正妥当と認められる会計原則「GAAP (Generally Accepted Accounting Principles:ギャープ、ガープ)です。
「GAAP」は各国がそれぞれの国情に合った会計基準、会計原則として定めています。日本では1949年に大蔵省(現・財務省)企業会計審議会が定めた「企業会計原則」を中心とした「公正なる会計慣行」を規範としています。
さまざまな法律が経理業務の規範となる
この「公正なる会計慣行」をベースに、経理がしたがうべきさまざまな法律が定められています。会社法、金融商品取引法、法人税法は、その代表例です。
会社法は、会社の設立や資本金など経営の根幹に関わる規定、また経理業務と関わりの深い財務諸表の会計基準などを定めています。金融商品取引法は、投資判断に必要な経営成績や財政状態の開示の方法を規定。財務諸表の様式や作成方法などを定めています。そして法人税法は、やはり経理の業務と関わりの深い税額の計算方法、申告の手続きなどを定めています。
そのほか会社の「定款」も、経理の規範とされます。経理担当者は、業務にあたってこうした法律やルールを遵守することを心がけなくてはいけません。
ポイント
- 経理に関するさまざまな法律やルールの元になるのが「GAAP」。
- 日本では「企業会計原則」を中心とした「公正なる会計慣行」を模範とする。
- 経理がしたがうべき法律には、会社法、法人税法などがある。
公正な経理のために守るべき主な法律とルール
法人税法
法人の課税所得の算定方法を規定。会社法に基づく計算書類で確定した決算を元に調整を行い、税額を算出すると定められている。
会社法
会社法に基づく法務省令「会社計算規則」で、貸借対照表、損益計算書などの作成が規定されている。
財務諸表等規則(金融商品取引法)
貸借対照表、損益計算書などの財務諸表に関する用語や様式を規定した規則。金融商品取引法により規定。
公正なる会計慣行 = 企業会計原則など
「企業会計原則」は企業会計の実務の中で発達し、一般に公正と認められた基準を要約したもので、以下7つの一般原則がある。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本・利益区分の法則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
企業会計原則
第一 一般原則
一 真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
二 正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
三 資本・利益区別の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
四 明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
五 継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
六 保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
七 単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
MEMO
定款は会社の組織や活動を定めた根本的な原則。会社の目的、株式数、本店所在地、代表取締役の選任方法などが規定され、株主の承認なしに変更することができない。