Section 03 会社ごとに異なる経理の業務範囲
会社によって求められる経理業務の種類や範囲は異なる。小さな会社ほど、多岐にわたる業務をこなす必要があるんだ。
大きな会社ほど経理の仕事が細分化されている
下記「会社の規模と経理業務」のように、会社が大企業か中小企業かによって、経理担当者が扱う業務の範囲は多少異なってくることが一般的です。
まず上場企業のように大きな会社は日々の経理業務が膨大な上、四半期決算や連結決算なども義務づけられています。そのため経理部など経理を専門に担当する部署が置かれ、多くの社員が配属されています。こうした場合、1人1人の経理担当者は経理全体の業務のうち特定の分野だけを任されることが少なくありません。
中小企業では経営の羅針盤の役割
それに対して中小企業はバックオフィスに人員を割く余裕がないため、経理専門の部署がない、または総務部が数人で経理や人事などをまとめて担当することもあります。規模がさらに小さくなると、1人の経理担当者が現預金の管理から決算、また経営の判断の指標となる資料作成まで行うこともあります。したがって大きな会社の経理担当者は自分が任された特定の分野に知識やスキルが特化しがちな一方、中小企業ではジェネラリストとしてキャリアを積む傾向があります。
ただしどこの会社の経理担当者でも、数字に対する正確さ、また経理ソフトを使いこなせるITスキルは必須。また仕訳作成、経費精算、支払業務といった基本的な仕事には、特に違いはありません。
ポイント
- 大きな会社では、経理の仕事が分担されている。
- 小さな会社では、経理担当者が総務、人事を全てこなすこともある。
- ただし基本的な業務やスキルに違いはない。
会社の規模と経理業務
大企業・上場企業
- 独立した経理部門が置かれていることが多い。
- 上場企業は、四半期財務諸表やキャッシュフロー計算書の作成、有価証券報告書などの提出が必要。
- 複数の事業を行っている場合は、それぞれの事業(セグメント)ごとの情報開示を行う。
- 子会社がある場合、親会社が連結決算の手続きを担う。
中小企業
- 経理担当者が給与計算や社会保険・労働保険などの手続きも処理することが多い。
- 上場企業のように厳密な会計は求められず、決算も四半期でなく年次で行われる。
- 上記の業務を外部の会計事務所などに任せることも多い。
正社員と派遣社員の業務内容の違い
経理業務の一部を派遣社員に任せている会社も多い。正社員と派遣社員とでは、その業務内容に以下のような違いがある。
派遣社員 | 正社員 | |
---|---|---|
①雇用条件 | 契約条件次第で、時短勤務、残業ゼロなど多様な働き方が選択できる。 | 繁忙期には残業が多くなることが一般的。 |
②業務内容 | 指揮系統が明確で、任される業務がはっきり決まっている。そのぶん業務内容が限定され、契約期間内に担当の範囲が広がることは少ない。 | 任される業務が特定の内容に限定されていないことが多い。突然のジョブローテーション、また経理以外の担当への異動もあり得る。 |
③キャリアアップ | 契約更新の際に業務内容を見直してステップアップを図る、あるいは新たな就業先に移ることで、キャリア向上を期待できる。 | 長期的に専門性を高め、マネジメントなどのスキルも体得する可能性が見込める。ただし一方では業務がずっと固定されたままの場合もある。 |
MEMO
大きな会社はSection01-1「経理の役割—仕事の全体像」で見た経理の3つの仕事のうち、資金管理は財務部、経営管理は経営企画部が担当することがある。また原価計算は、製造部や工場経理部が担当することも多い。