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CHAPTER6 ステップアップ

Section 08 コスト削減の手法

コスト削減や不要な資産の処分などを通じて会社の収益性向上や資金繰りの改善を図ろう。

活動基準原価計算で間接コストを把握する

売上に貢献していないコスト、効果的に使われていないコストの削減は、会社が収益性を高める上で不可欠です。コスト削減にあたってまず考えるのが、どの業務にどれだけコストがかかっているか。その1つの考え方が、「直接コスト」と「間接コスト」に分類することです。製品の製造などに直接結びつく直接コストは管理が比較的容易ですが、結びつけにくい間接コストは管理がうまくいっていない例が少なくありません。そこで「活動基準原価計算(ABC: Activity Based Costing)」などを活用し、その把握に努めます。

一方、現場で「ムダ」「ムリ」「ムラ」の洗い出しを通じて、改善点を特定することも重要です。改善の実施にあたって経理担当者は、財務諸表や事業計画の実績を事業部単位、また月次単位などで細分化して現場に伝え、会社全体で問題意識を共有するように努めましょう。

売上に貢献していない資産を選別して処分する

コスト削減には売上に貢献していない資産を洗い出し、整理して資金化することも効果的です。資産の処分にあたってはまず、会社が保有しているさまざまな資産のうち、売上に貢献しているかどうか、また経営に直接関係しているかどうかの基準にしたがって、有効に活用されていないものを選別。早急に売却することで、コスト削減や資金繰りの改善などにつなげます。

ポイント

  1. 管理が難しい間接コストを可視化して、コスト削減を図る。
  2. コスト削減のために経理担当者は、現場との意識共有に努める。
  3. 不要な資産を処分して、資金繰りの改善にも取り組む。

直接コストと間接コスト

直接コスト

製品の製造に際して直接発生したことが明確に分かるコスト。


直接材料費、直接労務費、外注加工費など


間接コスト

製品の製造と直接関連づけることが難しいコスト。


間接材料費、間接労務費、そのほか間接経費など

活動基準原価計算(ABC: Activity Based Costing)

会社の費用をアクティビティ(活動)別に分類し、「アクティビティごとの原価」を把握する管理会計の手法。アクティビティがリソース(資源)を消費してコストが発生するとの考え方が基本。


まず各アクティビティごとに直接帰属する費用を集計。例えば製造業なら、設計、原材料調達、製造、工程管理、品質検査といったアクティビティごとに、それぞれ要した時間などを基準にコストを集計する。


こうして集計した各アクティビティごとのコストを、アクティビティドライバーと呼ばれる配賦基準にしたがってコストオブジェクト(原価対象である製品など)に割りあて、それぞれについて分析する。

コスト削減のデメリット

適切なコスト削減は利益の拡大につながるが、場合によってはマイナスの効果をもたらすこともある。特に以下のようなケースには注意が必要。

商品・サービスの品質が低下するケース

安価な原材料に切り替えたことで商品の質が下がるなど、自社の市場における評価を下げかねないコスト削減は控えなくてはいけない。


従業員のモチベーション・労働効率が低下するケース

人員削減や業務量の増加で1人あたりの労働量が増えるなどの場合、モチベーションや労働効率の低下につながりかねない。


会社の信用が低下するケース

例えば長く定期的に出稿していた広告を取り下げるなどの場合、認知度が下がるだけでなく、経営状態にネガティブなイメージを持たれることがある。

MEMO

会社全体でコスト削減の意識共有を図るために、インセンティブ制度を導入する例もある。大きな成果を挙げたり優れたアイディアを出したなどの場合、報奨金などを提供することで全体のモチベーション向上も図れる。

経理の仕事の流れとしくみがまるごとわかる
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