新規登録 求人検索
新規登録

CHAPTER2 日常の経理業務と関連業務

Section 14 信用リスクの管理

掛取引にともなうリスクを最小化させることも、経理担当者の仕事の1つ。各部門と連携した情報の共有が不可欠だ。

取引先ごとに信用調査、与信管理、債権保全を徹底する

掛取引は売掛金を回収できないリスクをともないます。このリスクを最小限に抑えるために行うのが、「信用管理」。売上に意識が集中しがちな営業部門に代わり、経理部門がしっかりリスクを管理しなくてはいけません。

信用管理の柱は次の2つです。1つめは、初めて取引を行う相手が信用に値するかどうかを調べる「信用調査」。相手が上場している会社なら、財務諸表などから経営状態を確かめます。また非上場の会社でも、㈱帝国データバンクなどの信用調査会社を利用して情報を入手することが可能です。そのほか社内外のさまざまな情報を収集し、取引相手としての安全性を評価します。

2つめは、取引先ごとに安全な取引額の上限=「与信限度額」を設定する「与信管理」。一定額までは安全な相手でも、支払い能力を超えた大きな取引はリスクが高まります。また与信限度額は、定期的な見直しも欠かせません。そのほか信用管理ではこれらと並行して、担保権の設定、保証契約の締結、手付金の受取り、補償金の受取りといった「債権保全」も行います。

社内の各部門と連携して情報の共有を図る

信用管理は、社内の規定にしたがって一律に処理することがポイント。取引先によって対応が変わることのないよう、ルールに基づいた評価を徹底します。また社内のさまざまな部門が連携できる仕組みを作り、与信に関する情報が共有されるよう努めなくてはいけません。

ポイント

  1. 初めて取引を行う相手は信用調査を通じて安全性を評価する。
  2. 取引先ごとに安全な取引額の上限=与信限度額を設定する。
  3. 信用管理については社内の規定にしたがって一律に処理する。

信用管理の流れ

取引開始前

新規取引先の開拓・営業

新規取引先の情報収集

定性分析・定量分析・商流分析などを通じた新規取引先の分析

信用力を評価

与信限度額、決済条件を設定

新規取引先と契約条件について交渉

取引開始後

売掛金の期日管理

継続的な情報収集

与信限度額を定期的に見直す

信用リスク発生時に対応

取引開始前だけではなく、開始後も継続的なチェックを欠かさないようにしたい。

信用管理を行う各部門

会社によって信用管理を主体的に行う部門が異なることも多い。主に以下の各部門が、それぞれ信用管理に携わっている。

経理 売掛金が期日通りに決済されているか=期日管理を重視する場合、経理が主体的に信用管理を担当することが多い。取引先の財務分析を担うこともある。
営業 売上や利益目標を追求しながら、リスクとリターンをコントロールする。営業部門が未回収債権の発生による損失の責任を負うことが多い。
総務 既存の取引先との事業が長期的に安定しており、信用管理の必要性が比較的低い場合、総務が主体的に担当することが多い。
法務 取引先の倒産などより契約条件にともなうリスクが高い業界では、法務が信用管理を行う場合が多い。

MEMO

営業部門は取引先との人間関係や売上を伸ばしたいという意識から、予断が生じる場合もある。逆に経理担当者は取引先に対して常に問題はないか目を配り、厳しく数字を評価することが必要。

経理の仕事の流れとしくみがまるごとわかる
INDEX