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CHAPTER6 ステップアップ

Section 06 予算管理―予算管理の流れ

会社はさまざまな目標を予算という形で数値化して達成を図っていくんだ。

予算管理も経理担当者の業務とされる

経営管理の一環として会社の数値目標を管理するのが、「予算管理」。多くの会社ではこれも経理部門の業務とされています。

会社における予算とは、利益や売上などに関する数値目標のこと。主な予算には、売上高予算、売上原価予算、経費予算、利益予算などがあります。

これらの予算の策定には、各部門がまとめた数値を積み上げる「積上型(ボトムアップ型)」、経営トップの意向を反映させた全体の予算を各部門に割りあてる「割当型(トップダウン型)」の2つの方法があります。実際にはこれら2つを組み合わせてバランスを取る折衷型がよく取り入れられています。

このように予算計画を立てることで目標が数値化され、その方向性が明確になります。そして会社は目標に向けた人員の配置や費用の効率的な配分、また計画途中での問題点の洗い出し・解決などが可能になる仕組みです。

期初に予算計画を立て、期末までに実績との比較・分析を行う

予算管理は次のような流れで行います。まず期初に1年の予算計画を立案し、経営目標を策定。期中は定期的に進捗状況をチェックして問題点を分析するとともに、その結果を現場にフィードバックし改善を促進。そして期末までには予算計画と1年間の実績を比較・分析し、来期の計画を立案します。このように予算管理は、予算の策定(PLAN)、業務の実施(DO)、進捗の確認(CHECK)、そして予算と実績の差異を分析して解決(ACTION)という「PDCAサイクル」にあてはめて進められます。

ポイント

  1. 利益や売上などに関する数値目標を予算という。
  2. 予算の策定方法は、ボトムアップ型とトップダウン型、及びそれらの折衷型がある。
  3. 予算管理では、PDCAサイクルにしたがって予算計画を進めていく。

主な予算

売上高予算 売上目標。過去の実績に目標数値を上乗せするなどして策定する。その時ごとの市場動向など外部環境にも左右されるため、事業年度中に定期的な見直しが行われるのが一般的。
売上原価予算 商品仕入または原材料費などを見積もって作成。利益予算や売上高予算に基づいて設定される製品の生産量や商品の仕入量などから求められる。売上高予算と連動して定期的な見直しも行う。
経費予算 販売費や一般管理費など、企業の継続のために必要な経費を見積もって作成。外部環境の影響が少ないため、予算管理しやすい。
利益予算 最終的な利益の目標。利益は売上を増やすだけでなく、原価や経費の削減でも高めることができるため、売上高予算・売上原価予算・経費予算の適切な管理も不可欠。

予算の体系

図「予算の体系」

MEMO

トップダウン型は素早い予算編成が可能な反面、現場のモチベーションが上がりにくいことがデメリット。一方のボトムアップ型は予算編成に時間がかかることに加え、会社の経営方針にそぐわないことがあるのがデメリットとなる。

Section 06-1 予算管理―予算編成の手順

予算編成を滞りなく進めて調整を図るのも経理担当者の重要な仕事なんだ。

各部門の情報を集約しながら予算を編成する

予算編成の流れは、主に次の通りです。まず経理部門は各部門から、それぞれの実情に即した情報を収集。これに基づいて予算のガイドラインをまとめ、各部門に提示します。続いて各部門がガイドラインを元に策定した予算の取りまとめや調整を経理部門が行って、予算を編成。役員会などの審議を経て、正式に承認を受けます。

各予算の設定は、主に以下のような流れで行います。まず目指すべき目標となる「利益予算」を設定した後、人件費・固定費及びそのほか諸経費の算出を経て「売上高予算」「売上原価予算」を策定。ここから販売費などの「経費予算」を設定し、最終的な調整を図ります。一連のプロセスで注意したいポイントは、下記図の通りです。

経理担当者は折衝役として調整を進めていく

予算編成の担当者は、経営陣と現場との間で滞りなく調整を進めていくスケジュール管理能力が不可欠。また折衝役として、各部門と綿密なコミュニケーションを図る必要があります。スムースに編成作業を進められるよう、あらかじめ動きやすい環境を作っておくことも大切です。また各部門から上がってきた数字にも、矛盾や誤りなどがないか厳しく目を光らせなくてはいけません。簡単な仕事ではありませんが、実績を上げればステップアップの大きなチャンスとなるでしょう。

ポイント

  1. 予算編成で経理部門は、各部門の策定した予算の取りまとめや調整を行う。
  2. 予算編成においては、各部門と綿密なコミュニケーションが重要。
  3. 予算編成においては、上がってきた数字を入念にチェックする。

予算編成の流れ(例)

図「予算編成の流れ(例)」

予算編成の注意点

①ルールや仕組みを明確にする
②期中で変更があることをあらかじめ見越した数値とする
③現場と予算編成の意義を共有する
④達成が簡単な予算にしない
⑤達成が不可能な予算にしない

毎年行われる予算編成は、3年から5年にわたる会社の目標となる中長期計画に基づいて行われることも多いんだ。

MEMO

予算編成にあたっては、各部門の長が集まっての予算編成会議が催されることもある。

Section 06-2 予算管理―予算と実績の差異分析

予算と実績の比較・分析は、経営管理の基本となる重要な作業なんだ。

月次決算ごとに予算差異分析を行う

予算管理では月次決算ごとに予算と実績を対比させ、計画通りに目標が達成できているかどうかチェックします。このように予算と実績の比較を行い、その原因を分析することを「予算差異分析」といいます。その結果は経営課題の特定に用いられるほか、人事評価に反映されることもあります。

予算差異分析には、主に次の3つの方法があります。1つめは、利益差異の単純比較。予算と実績の利益を比較し、その差異をチェックします。2つめは、収益・原価差異の算出。利益差異をさらに収益差異、原価差異などに分解し、それぞれの発生原因を詳しく調べます。3つめは、自社独自の分析フレームワークに基づく分析。例えば売上高を新規顧客と既存顧客に分けた上でさらに細かい項目の差異をチェックするなどの分析を行います。

予算と実績の比較は実数と比率の両面で行う

予算と実績を比較する基準は、金額ベースの実数、また比率の2通りがあります。実数での比較は、予算数値に対する実績の差額が5%~10%以上開いている場合に差異が大きいと判断して、より詳細な分析を行う、などの基準を設けることもあります。

また予算設定後に事業環境が大きく変化するなど、外部的な要因で予算の実効性が乏しくなることがあります。そうした場合、前年同月の数値や他社の実績との比較を通じて、より効果的な分析を行うようにします。

ポイント

  1. 予算と実績の比較と原因の分析を予算差異分析という。
  2. 分析する予算と実績の差異には、さまざまな種類がある。
  3. 前年同月の数値や他社の実績との比較も参考にする。

予算管理の注意点

予算計画実行の注意点 ①定期的な進捗管理を念頭に置いた運用を行う
②計画に基づいた業務遂行について従業員と意識の共有を図る
③分析のために実績を集計する体制をあらかじめ整える
④従業員のモチベーション維持に留意する
分析・対策の注意点 ①数値にばかりこだわりすぎず、全体の利益や現場の意見にも配慮する
②現場との連絡体制を整え、スムースなフィードバックを図る
③現場に対する情報提供を円滑に行う
④各種ソフトウェアを駆使して進捗・実績管理を効率よく進める

予算差異分析の手法

利益差異の単純比較 予算と実績の利益を単純比較する。ただし大きな変化の影響が差異に含まれてしまうため、差異が発生した原因の分析が難しくなるデメリットがある。
収益・原価差異の算出 利益差異を収益差異と原価差異に分解。さらにそれぞれを販売価格差異、販売数量差異、操業度差異、市場数量差異、市場占有率差異、製品配合差異、販売費差異、製造原価差異、固定費差異などに細分化し、それぞれの原因を分析する。
自社の戦略に基づく分析 戦略が適正に実行されているかどうかを見るため、より実態を把握しやすい自社独自の分析フレームワークを作って分析する。フレームワーク構築にはコストがかかるが、自社の状況に応じた具体的な分析が可能。

予算実績対比表

予算管理にあたっては予算実績対比表を作成し、進捗状況の管理・報告に用いる。予算の項目はおおむね損益計算書の形に沿っていることが大切。

予算実績対比表

MEMO

いうまでもなく分析は正しいデータに基づいて行うことが前提。経理担当者は各部門が上げてくる数値や報告を精査し、正確なデータ管理を徹底するよう心がける。

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