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CHAPTER5 決算の業務

Section 15 連結決算―連結決算とは

子会社がある場合は原則として連結決算を行う必要があるんだ。

連結決算でグループ全体の経営実態を把握する

会社が成長して事業範囲が広がると、事業別に会社を分けたり、他業種の会社を買収して、グループ経営に移行することが一般的。しかし例えば業績が悪い事業をグループ内の別会社に移すことで、自社の決算をよく見せるといった操作も可能になってしまいます。そこで導入されたのが、連結決算です。

連結決算は、親会社と子会社などからなるグループ全体の経営実態を把握するための仕組み。ここでいう親会社及び子会社とは、法的に独立した会社が資本面及び実質面で支配従属関係にある状態を指します。連結決算ではこれを経済的な観点から単一の組織体と捉え、その経営成績や財政状態の把握に努めます。

連結決算の対象には原則として全ての子会社を含める

連結決算では原則として全ての子会社がその対象となります。ただし、重要性の乏しい子会社などについては連結の範囲に含めないこともあります。

また親会社と決算期が異なる子会社がある場合、親会社の決算期に合わせて子会社の仮決算を行うなどの対応を行います。ただし処理が煩雑になるため、子会社の決算期を親会社に統一することも多いです。そのほか、採用する会計処理の方法などについても、親会社と子会社で統一することになります。

そして通常の決算で財務諸表を作成するのと同じく、連結決算では連結財務諸表を作成します。連結財務諸表では、グループ内の取引を消去するなどしてグループ全体の正確な財政状態及び経営成績を記載します。

ポイント

  1. 連結決算では、グループ全体の経営実態を把握する。
  2. 連結決算は、原則として全ての子会社が対象となる。
  3. グループ内取引の消去などを行って連結財務諸表を作成する。

親会社と子会社の定義

「親会社」とは、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(略)を支配している企業をいい、「子会社」とは、当該他の企業をいう。親会社及び子会社又は子会社が、他の企業の 意思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなす。

企業会計基準委員会「連結財務諸表に関する会計基準」

連結対象の範囲

図「連結対象の範囲」

どこまでを連結決算の対象とするかは、以下の2点で判断される。

子会社かどうか
  • 議決権の50%超(過半数)を保有
  • 議決権の40~50%を保有:なおかつ同一内容の議決権行使を行うと認められる緊密者及び同一内容での議決権行使を行うと同意している者の議決権を合わせて過半数となる、など。
  • 議決権の0~40%を保有:なおかつ緊密者や同意者と合わせた議決権が過半数を占めており、かつ役員関係など一定の条件を満たす。
重要性が高い子会社かどうか

子会社の重要性の判断は、質的重要性と量的重要性の2つの観点から検討される。

  • 質的重要性の例

    ①親会社の中長期的な経営戦略において重要
    ②親会社の一業務部門(製造、販売、財務など)について、その全てまたは重要な部分を担っている

  • 量的重要性の例

    以下の4つの項目に与える影響から判断する。
    ①資産基準 ②売上高基準 ③利益基準 ④利益剰余金基準

出典:EY「連結(平成25年改正) 第1回:連結の範囲」

MEMO

会計監査を受けている会社は、どの子会社を連結対象とするかどうかについて、監査法人とも協議を行った上で判断する必要がある。

Section 15-1 連結決算―連結決算の手順

連結グループの内部取引を相殺するなどの処理が必要なんだ。

決算書の合算に続いて連結修正を行う

連結決算は以下のような流れで行われます。

まず親会社と子会社がそれぞれ統一の会計方針にしたがって、個別財務諸表を作成。次に親会社が全ての子会社から個別財務諸表を集めて、親会社と子会社各社の単体の決算書を「単純合算」します。

合算に続いて行われるのが、「連結修正」です。連結グループ内部の会社は、親会社から子会社への売上取引、また子会社から親会社への仕入取引など、親子間取引が行われることが一般的です。しかし連結決算では、こうした連結グループ内での内部取引は同じ財布のなかでキャッシュが動いただけと見なされます。そのため内部取引を消去し、連結グループ外部との取引だけを決算書に反映させなくてはいけません。そこで親会社は子会社から必要な情報を入手した上で、「親子間取引(内部取引)の相殺消去」、またそのほか「未実現利益の消去」などの処理を行います。

外部からの出資比率に応じて利益を連結決算から差し引く

また、親会社の100%出資ではなく、親会社以外の株主がいる子会社がある場合、その子会社の損益の調整が必要となります。例えば親会社から60%、残りを外部から出資を受けている子会社の場合、利益の40%部分は少数派の株主が得るべき利益=非支配株主に帰属する当期純利益として、連結決算から差し引くことになります。

ポイント

  1. 連結決算では、まず親会社と子会社各社の単体の決算書を単純合算する。
  2. 単純合算の次に連結修正を行い、連結グループ外部との取引だけを決算書に反映させる。
  3. 親会社以外の株主がいる子会社の損益については、調整が必要。

連結決算の流れ

個別財務諸表の作成

連結グループの各社が、統一された会計方針にしたがって個別財務諸表を作成。

連結パッケージの回収

連結決算に必要な情報をまとめたデータ=連結パッケージを、親会社が子会社から回収する。

単純合算

回収した連結パッケージに含まれる個別財務諸表を合算して、単純合算財務諸表を作成する。在外子会社についてはあらかじめ外貨ベースから円貨への換算を行っておく。

子会社の決算日が連結決算日と異なる場合の処理

①連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行う。
②決算日の差異が3カ月を超えない場合、子会社の決算を基礎として連結決算を行うことができる。ただし重要な不一致は調整が必要。

連結修正

回収した連結パッケージをもとに、親会社が以下のような処理を行う。

親子間取引の相殺

資本連結:親会社から子会社への投資と子会社の資本を相殺する。
債権債務の相殺:親会社と子会社間の取引によってそれぞれの貸借対照表に計上されている売掛金・買掛金などの債権・債務を相殺する。
損益取引の相殺:親会社と子会社間の取引によってそれぞれの損益計算書に計上されている売上・仕入などを相殺する。

未実現利益の消去

親会社と子会社間の取引の結果、当期に外部へ販売されず内部に残されている在庫などに含まれている利益=未実現利益を消去する処理を行う。

非支配株主に帰属する損益の振替

100%子会社でない子会社の資本のうち、親会社以外の持分を「非支配株主持分」として処理する。

連結決算は期限内に大量の情報を漏れなく正確に処理しなくてはいけない。親会社や子会社で連結決算に携わる人があらかじめ連結決算に関する知識を高めておくなど、事前の準備も不可欠となる。

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