Section 09 有価証券の評価
株式などの有価証券は4つに分類して期末の帳簿価額を評価するんだ。
決算にあたって有価証券の評価替えを行う
決算では保有する有価証券の期末帳簿価額の評価も行います。有価証券とは、株式、国債、地方債、社債、投資信託などの財産的価値のある証券のこと。いずれも金融商品取引法の適用対象として定義されています。
有価証券の種類によっては、時間とともに価値が変動します。そのため決算では、帳簿価額を期末時点の時価に修正する、などの処理を行います。これを「評価替え」といいます。変動の幅によっては、減損、評価損などが決算書に大きな影響を及ぼすこともあります。
有価証券の処理は金融商品会計基準にしたがう
有価証券(金融商品)は、「金融商品会計基準」にしたがって時価(公正な評価額)で評価する決まり。金融商品会計基準はまた有価証券を下記図「有価証券の分類」の4通りに分類し、それぞれの評価方法を定めています。「売買目的有価証券」は、トレーディングを目的とした有価証券。「満期保有目的の債券」は、満期まで保有することを目的とした有価証券。「関係会社株式」は、子会社や関連会社などへの影響力行使を目的に保有する有価証券。そして「その他有価証券」は、ほかの3つに該当しない有価証券です。
このうちその他有価証券は、税法と金融商品会計基準とで評価方法が異なります。また、時価が著しく下落し回復の見込みがない場合は、「減損処理」を行って帳簿価額を減額します。
ポイント
- 価値が変動する有価証券は、帳簿価額の評価替えを行う。
- 金融商品会計基準にしたがい、有価証券を4つに分類して処理する。
- その他有価証券については、税法と会計基準で評価方法が異なる。
有価証券の分類
貸借対照表上の記載 | 税法 | 金融商品会計基準 | |
---|---|---|---|
売買目的有価証券 | 流動資産▶有価証券 | 時価法 | 時価評価 期末時点での時価で評価。帳簿価額との差額=評価差額は当期の損益として損益計算書に計上。 |
満期保有目的の債券(※) | 流動資産▶有価証券 固定資産▶投資その他の資産▶投資有価証券 |
原価法(償却期間及び償却金額の定めのあるものは償却原価法) | 償却原価法 原則として取得価額で評価。ただし取得価額と額面金額が異なる場合、差額を償還期まで毎期一定の方法で貸借対照表に加減する。 |
関係会社株式(※) | 流動資産▶関係会社株式 固定資産▶投資その他の資産▶関係会社株式 |
取得原価 取得価額で評価。 |
|
その他有価証券(※) | 流動資産▶有価証券 固定資産▶投資その他の資産▶投資有価証券 |
時価による評価替え 期末時点での時価で評価。帳簿価額との差額は、その他有価証券評価差額金として貸借対照表の純資産の部に計上。 |
※1年以内に売却予定である場合は流動資産、それ以外は固定資産に記載
金融商品会計基準
正式名称「金融商品に関する会計基準」。1999年に企業会計審議会から公表された金融商品の会計基準。有価証券や金銭債権、金融商品の取引など、金融商品の会計処理を定めることを目的とする。企業会計原則をベースとするが、金融商品については企業会計原則に定められた資産の評価基準よりも金融商品会計基準の定めが優先して適用される。
有価証券の減損処理の基準
時価のある有価証券の時価が著しい下落を続け、回復の見込みがない場合
減損処理を行う
売買目的有価証券以外の有価証券の下落額を帳簿価額に反映し、損失を計上する。
減損処理を行う判断基準として「時価の下落率が50%以上」というおおむねのガイドラインがあるが、社内で合理的な基準を確立しておくことが望ましい。
MEMO
時価のない有価証券は、時価に代わる実質的価値として1株あたりの純資産額を参考にしながら減損判定を行う。