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CHAPTER6 ステップアップ

Section 04 原価計算の目的

製造業では損益計算書などを正しく作成するために原価計算が行われるんだ。

製品の製造に要した費用を計算して製造原価を求める

「この製品を作るのにいくら要したのか」を知ることは、製造業にとって不可欠。この時に製品の製造に要した費用のことを「製造原価」といい、それを求めることを「原価計算」といいます。

原価計算の基準となるのは、大蔵省(当時)企業会計審議会が示した「原価計算基準」。そこでは原価計算の目的として下記図の5つが挙げられていますが、大きく分けると次の2つに集約されます。

製品の原価の確定によって会社の利益を正確に報告できる

1つは、社外への情報提供を目的とする財務会計。決算で作成される損益計算書で示される項目の1つが、原価計算で求められる「売上原価」です。重要な経営指標となる「売上総利益(粗利)」は、売上高から売上原価を差し引くことで求められます。このように製品の原価を明らかにすることで、生産活動が会社にどれだけの利益をもたらしたかを外部に報告することができます。

もう1つは、会社ごとに経営の指標として、利用する「管理会計」。予算編成や経営計画などの管理に使用されることが一般的ですが、原価の管理に使われるという側面もあります。原価計算によって会社が追求する理想的な原価と実際の原価の比較が可能になり、コストダウンや工程の効率化などを通じた生産性の向上を図ることができます。

また原価計算にあたっては、「直接費」「間接費」、また「材料費」「労務費」「経費」といったように原価を分類して分析することも一般的です。

ポイント

  1. 原価計算では、原価計算基準が適用される。
  2. 財務会計と管理会計の両面から、原価計算が行われる。
  3. 原価は直接費・間接費、また材料費・労務費・経費などに区分される。

原価計算の5つの目的

財務会計

①財務諸表作成

正しい損益や財政状態を損益計算書などの財務諸表に表示する。会社が当期に得た利益を正確に計算するには、原価計算が不可欠。

管理会計

②価格計算

競争力があり会社に利益をもたらす製品の価格を策定する。標準原価計算により、採算が合うかどうかの評価も可能。

③原価管理

原価が目標より高くなってしまった原因を追求して削減を図るなど、原価の管理を通じて適正なコストを算出する。

④予算編成

目標とする売上や利益を達成するため、予定原価や標準原価に基づいた予算の編成・統制を行う。

⑤経営計画

標準原価計算などを通じて、経営計画立案に必要な原価情報を提供する。

出典:「原価計算基準」を要約

直接費と間接費

直接費

製品の製造に直接用いられる原材料や部品などに要した費用。どの製品に消費されたかが直接把握できる。

間接費

工場建物の減価償却費、水道光熱費など、ほかの製品の製造にも関わっていたり、間接的に投入されたなどの費用。

原価計算の3要素

原価は材料費、労務費、経費の3つから構成される。いずれも直接費、間接費に分けて把握することができる。

原価計算の3要素

MEMO

原価計算基準は1962年公表。以後、現在まで日本の原価計算制度の実践的なルールとして機能してきた。ただし企業環境の変化にともない、新たな原価計算方法も活用されている。

Section 04-1 原価計算の種類

原価計算の方法は複雑で多岐にわたる。目的別に分けた3種類からまず見てみよう。

標準原価計算で目標の達成度を確認する

原価計算は、目的や生産形態に応じてさまざまな種類に分かれます。目的別に見ると、「①標準原価計算」「①実際原価計算」「①直接原価計算」の3つが挙げられます。

①の「標準原価」とは、過去の実績や予測などから想定される理想的な原価。この標準原価を基準として行う原価計算が、標準原価計算です。

①が標準原価で計算するのに対して、実際に発生した費用から原価を求めるのが②の実際原価計算。①と比較することで、目標をどれだけ達成できたかの確認が可能です。実際原価計算は最も正確に原価を掴むことができますが、製品の製造や販売など全ての原価要素を網羅的に計算しなくてはいけません。また実際に費用が発生してからでないと計算ができないため、原価の把握まで時間を要します。

直接原価計算は損益分岐点の算出にも用いられる

③の直接原価計算は、製品の売上高などに比例して増減する費用=「変動費」を中心に行う原価計算。一定に発生する費用=「固定費」(基本給、減価償却費など)は別途計算します。製品をどれだけ売れば固定費を回収できるのかといった管理会計の考え方に基づいており、損益分岐点の算出にも用いられます。

ポイント

  1. 標準原価計算は、標準原価を基準に計算する。
  2. 実際原価計算は、実際に発生した費用から計算する。
  3. 直接原価計算は、変動費と固定費を分けて計算する。

製品の製造原価

原材料・部品調達費+ 製品の組立・加工費生産設備の減価償却費+ その他

製品の製造に要した費用を把握し、製品の製造原価を計算する 原価計算

原価計算の種類

会社は業種、生産方法、原材料の種類などに応じて、それぞれ最適な原価計算の方法を選ぶことができる。

図「原価計算の種類」

MEMO

通常の製造業は標準原価計算を採用しており、1カ月を原価計算期間として部門別に費用や人件費を集計し、適切な配賦基準による配賦計算を行っている。

Section 04-2 原価差異の分析

標準原価と実際原価の差異の原因を追求することが生産性向上につながるんだ。

標準原価で製造できなかった理由を費目ごとに追求する

想定に基づく理想的な原価=「標準原価」に対して、実際に発生した費用から算出した原価を「実際原価」といいます。この2つの間に生じる差異が、「原価差異」。なぜ原価差異が発生したのか、つまり目標とした標準原価で製造ができなかった理由をその費目ごとに追求することで、会社は生産性を向上させることができます。

4通りの原価差異を分析する

原価差異は、主に次の4つに大別されます。1つめは、「材料受入価格差異」。これは、材料の受入価格を標準価格で計算することにより生じる原価差異です。例えば想定していた標準原価では100万円の原材料が価格の変動で実際原価103万円となった場合、原価差異は3万円。これを個々の材料や部品について検証していくことになります。2つめは「直接材料費差異」。仕入先の選定ミス、標準数量の設定ミスなどにより想定以上の費用を消費した場合の差異です。材料受入価格差異と似ている点もありますが、差異が発生した時点などが異なります。3つめは「直接労務費差異」。労務費総額を総労働時間で割った時間あたりの賃率において発生する差異などが該当します。そして4つめは、「製造間接費差異」。これは実際に発生した製造間接費の総額と、事前の想定に基づいて配賦した額の差額です。

ポイント

  1. 原価差異の原因を追求して生産性の向上を図る。
  2. 主な原価差異は4通り。
  3. 材料受入価格差異と直接材料費差異は、差異が発生した時点などが異なる。

原価差異分析の流れ

標準原価を算定

過去の実績や予測などから理想とする原価=標準原価を算定。

標準原価と実際原価の差異を分析

標準原価と実際に発生した実際原価の差異を費目ごとに分析。

製造工程見直し

分析結果にしたがって改善案を作成し、生産性の向上や経営戦略に活用する。

原価差異の種類

材料受入価格差異

材料の受入価格を予定価格などで計算することにより生ずる原価差異。一期間におけるその材料の受入金額と実際受入金額との差額。


(標準受入価格-実際受入価格)× 実際受入数量

直接材料費差異

標準原価による直接材料費と、直接材料費の実際に発生した額との差額、価格差異と数量差異に区分される。


価格差異:(標準消費価格-実際消費価格)× 実際消費数量
数量差異:(標準消費数量 - 実際消費数量)× 標準消費価格

直接労務費差異

標準原価による直接労務費と、直接労務費の実際に発生した額との差額。賃率によって発生した賃率差異、作業時間によって発生した作業時間差異に区分される。


標準直接労務費 - 実際直接労務費

製造間接費差異

製造間接費の標準額と実際発生額の差額。原則的に、一定期間における部門間接費差異として算定する。予算差異、能率差異、操業度差異に区分される。


標準製造間接費 - 実際製造間接費

MEMO

原価計算基準では、労務費で生じる賃率差異、部門加工費または補助部門費を予定配賦率で配賦することで生じる加工費配賦差異及び補助部門費配賦差異なども規定されている。

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