多忙な役員とやりとりし、世界中の拠点を動かす仕事

ユニクロをはじめとするアパレルブランドを世界各地で展開するグローバル企業、ファーストリテイリング。その店舗数はユニクロだけで約1,900店舗、SPA（アパレル製造小売業）世界第3位の売り上げ規模を誇る。

「ファーストリテイリングは、柳井（代表取締役会長兼社長・柳井正氏）が『“情報製造小売業”を目指す』と言っているように、ただ服をつくって売るのではなく、サプライチェーンを見直し、デジタルを通してお客様とのコミュニケーションを強化することによって、まったく新しい業態に生まれ変わろうとしています」

こう語り、成長し続ける企業ならではのダイナミズムを実感しているのは、アメリカ留学を経て現地の監査法人に就職、USCPA（米国公認会計士）を取得して帰国後、別の監査法人での勤務を経てファーストリテイリングに入社した、計画管理部　経営計画チームの小島麻里氏だ。

「所属する経営計画チームは、親会社のファーストリテイリング、及び、国内外のユニクロブランドの経営計画を担当しており、その中で私は、海外ユニクロの経営計画チームのリーダーとして、各国の経営チームと協働し、経営計画業務の実践と構築を行っています」という小島氏は、アジアや欧米などユニクロが展開する海外18の市場のビジネスの状況に気を配りながら、GHQ（グローバルヘッドクオーター）の決定を周知する業務を行っている。

１週間は、各市場の前週の商売レビューから始まる。チェックするのは数字だけではなく、業務プロセスや人など「数字に表れない」部分にも及ぶ。もし課題があれば即コミュニケーションを取り、どうすれば解決できるかを現地担当者と話し合う。重要なのはリアリティーだという。

「私も海外に駐在していたことがあるので分かるのですが、海外にいると離れ小島にいるような心境になってしまって、一斉メールやビデオカンファレンスで連絡を受けても、本社の臨場感が伝わりづらいように思います。そのため日々の業務では、こちらの温度感やスピード感をどうやって伝えるかに気を配っています。臨場感が共有できていないと、同じスピードで、同じ精度で、仕事を進めることができません」

そのため、できるだけ密にコミュニケーションを取って足並みをそろえながら、月次や半期、通期で達成しなければならない数値目標や業務をクリアしていく。

一方で、戦略や経営方針を決める幹部との接触も欠かせない。決定事項を実行するためには、その背景にある真意の確認や、市場ごとの状況に合わせた対応が必要となるからだ。役員に相談したい案件があるときは、スケジュールを確認して会議室前で「出待ち」をしたり、席で「待ち伏せ」したりして、「すみません、１分ください」とアポなしでの接触を試みることもあるという。

業務範囲は「会社をドライブすることすべて」 必要なのはスピード感と実行力

小島氏が所属する経営計画チームは、事業規模からするとそれほど多くない人数で運営されている。そのタフな業務をこなすことができる資質は、ファーストリテイリングに入社して間もなく配属されたフランスでの経験で養われたという。それまでフランスに行ったこともなければ、経営計画の仕事をしたこともない。とにかく「フランスのビジネスをサポートしてほしい」と赴任を命じられた。ビザなしで働ける３カ月間で、「見知らぬ土地でもなんとかするしかない、というサバイバル力みたいなものが身に着いた」。日本への帰国後は、ヨーロッパやロシア、オーストラリアの業務を担当。カルチャーの異なるスタッフと仕事をしたことが、現在の仕事に生きている。

「経営計画という仕事は、会社の目標・戦略・決定事項を周知し、会社全体をドライブしていく仕事です。経理や会計の専門的なスキルや資格を武器にしながら、営業、調達、生産、物流、人事など、全部署連動で動くために、業務全般に目配りができる総合力、そして何よりスピード感と実行力が求められます。特に弊社のスピード感は際立っているので、それが楽しいと思えるかがポイントですね。同じことが続くのはつまらないと思う人でも飽きることはないと思います」

経営計画をやりたいというわけではなく、もっと幅広い仕事や商売をしたい、バックオフィスではなくフロントの仕事がしたいと考えてキャリアチェンジをした小島氏。「会社をドライブし、結果を出すためにあらゆる部署を動かす」経営計画の仕事は、まさにやりたかったことそのものだといえる。

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