クリエイティブ×経営戦略

白地に「Design Tshirts Store graniph」の赤い文字。シンプルながらインパクトに残るロゴは、街なかで目にしたことがある人も多いと思う。株式会社グラニフは、商品の企画、デザイン、生産管理から販売までのプロセスを一貫して行うSPA型のビジネスモデルで、Tシャツを中心としたアパレル商品を展開する。国内外の店舗数は100を超え、自社のデザイナー集団がデザインしたオリジナル商品から、人気のアーティストやキャラクターとのコラボレーション商品まで、遊び心のある様々な商品を販売する。

「クリエイティブな側面と、ロジカルな側面、一見相反する両方の側面が要求されるのがSPA企業の面白さと難しさだと思います。優れたグラフィックデザインを生み出し、魅力的な商品を企画する、そしてその裏で定量的な分析を幾重にも重ね、緻密に計画を練る、これらすべてがかみ合うことで初めてお客様に喜んでいただける商品を提供することができると考えています」と話すのは、株式会社グラニフ経営戦略グループ、ディレクターの豊田愛氏だ。

株式会社グラニフは、2001年、３人のデザイナーが自分たちでデザインしたグラフィックTシャツを下北沢の路上で売り始めたのがきっかけでスタートした。今でこそグラフィックTシャツは他のアパレルブランドでも見かけることが多い、定番的なアイテムとなりつつある。しかし当時は、「Tシャツ×アート」の融合を追求するグラニフのTシャツは珍しかった。Tシャツは飛ぶように売れ、下北沢に店舗を構えるようになる。その後、オリジナルデザインのTシャツを武器に成長を続け、現在では100店舗を越えるまでに規模を拡大した。

豊田氏は、コーポレート戦略策定や、重要性・緊急性の高い課題解決をリードする、経営戦略グループを統括する。守備範囲とする領域は、全社的な戦略的課題に留まらず、必要であれば、商品企画、サプライチェーン、店舗オペレーション等、SPAを支える各機能の現場課題を妥協することなく掘り下げて行く。

「当たり前のことではありますが、店舗は頻繁に訪問しています。本社の机に座ってデータを眺めているだけでは到底読み取れない貴重な情報こそ、お客様との直接の接点である店舗にあると考えています。いかに理論上矛盾のない戦略を練ったつもりでいても、現実とのギャップを無視してしまっては、価値のある変化をもたらすのは難しいので」

豊田氏は、実際に店舗を訪れ、顧客の様子や、品揃えを自分の目で見て、スタッフの方々の話を聞くことが重要だと話す。仮説に確信を持てることもあれば、視点のずれに気づかされることもあるという。

組織を横断し、プロジェクトベースで仕事をする

豊田氏は、大学を卒業後、MBAを取得。外資系戦略コンサルティングファーム、大手外資系ヘルスケアサービス企業を経て、株式会社グラニフに入社した。これまで10年以上にわたるコンサルティング経験が、今の仕事の礎となっていると話す。

「経営戦略グループ主導で、大小様々なプロジェクトを立ち上げ、戦略立案やオペレーション改革などを推進しています。問題解決のアプローチ自体はコンサル時代と同じですが、会社の一員としてプロジェクトを推進し、最後の最後までその成果を見届けるという経験は、事業会社でしか得られない貴重なものだと思います。また、組織横断でいろいろなプロジェクトを進めているので、社内のほとんど部門と関わっています。その辺も経営戦略の仕事の醍醐味と言えるかもしれません」

豊田氏は、プロジェクトを通じて各部門の機能を底上げすることにより、SPAのビジネスモデル強化をひとつのゴールにしているのであろう。

最後に経営戦略の意義を豊田氏に尋ねると「グラニフは創業以来、“アート”を大切にしていて、非常にクリエイティブ力に長けた会社だと思っています。これまでグラニフが培ってきた創造力を論理面からサポートし、彼らが創るいいものを最大限のパフォーマンスで展開できるようにお手伝いすることが、大きな意義の一つかなと思っています」と語る。

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