過去のキャリアを見つめなおし、未来のキャリアを自分で描く

「業務改善の結果、業務効率や資金効率を上げて会社によい影響を与えることができるというのは、経理ならではのやりがいです」と語るのは、凸版印刷株式会社　財務本部資金部の渡辺明由氏。エレクトロニクス事業本部の経理を経て、中国にて海外勤務を経験。現在は本社資金部で、財務戦略の策定と実行、金融機関対応、資金調達・運用、M&A案件の対応などを担当している。

凸版印刷株式会社は、出版印刷や証券印刷といった情報コミュニケーション事業に始まり、包装材事業やエレクトロニクス事業のほか、近年では健康・ライフサイエンス、教育・文化交流など新しい分野へも挑戦し続けている企業だ。グローバル化を進めていることもあり、財務部門でも海外勤務を経験している人が少なくない。同社には、年一回、従業員各自が中長期的なキャリアプランを考えて上司と話し合う制度がある。「この制度のおかげで、毎年自分のキャリアを見つめなおす良い機会になっています。私は入社後何年かしてから海外勤務の希望を出すようになりました」と話す。

希望して行った海外勤務では、中国上海にて携帯電話やデジカメの部材であるオンチップカラーフィルタを製造する工場で5年間、CFOとして財務・経理・人事・総務業務の全般を担当してきた。日本人の駐在員はわずか3人。言語の面でも、お国柄のギャップでも多くの苦労を経験してきた。「日本では味わえない良い経験ができました。例えば、取引先の経営トップと費用の価格交渉をしたり、従業員から突然昇給の交渉を受けたりとか…現地では一人ひとりが交渉するのが当然といった文化でした」。中国語は日本で半年間学び、現地での滞在中に会議に参加できるレベルまで話せるようになったという。

現場での経験を存分に生かし、社内外に影響を与える業務改善プロジェクトを推進

帰国後は再びエレクトロニクス事業本部の経理部に戻り、関係会社の決算取りまとめなどを担当する。と同時に、業務改善プロジェクトにも参画した。
「若い頃から業務システムや仕組みについてよく改善要望を出していました。すると上司から「要望があるなら、自分で仕組みを直せ」と言われて。ちょうど会社としてもシステムの入れ替えを検討していたことをきっかけに、そういった業務改善の仕事もするようになりました。私自身は、事業部経理の一担当に過ぎなかったのですが、全国の事業部の経理担当者に聞くと結構同じことを考えていることに気づき、その意見をもとに、業務フローやシステムを一から見直す経験もさせていただきました。」

工場や事業部での経理経験が長い渡辺氏だが、現場の経験を生かし、本社資金部の所属となった今、これからどんな改善・効率化を考えているのだろうか。
「当社はその業態から、取引先が数万社に及ぶため、その資金決済周りを電子化や集約化すれば、取引先と当社の双方がコストや管理手間などの面で大きなメリットを得ることができます。AIなどの技術発展で財務経理機能の高度化が求められている中、決済周りの高度化も今取組んでいます。」

自分が声を挙げれば、自分だけではなくて他の人も業務が楽になるのではないか、そんな思いで多くの人の意見に声に耳を傾けてきた渡辺氏。一方で、社内外にどのような影響が及ぶのかということをできるだけ意識するようにしている。「多くの人に良い影響を与えたい」という思いを大切に、経理財務職として課題を一つひとつクリアし、業務改善・効率化を続けている。

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