2015年5月28日
経済のグローバル化により、有望な市場を求めて世界中の企業が自国から海外に進出しています。 その中で、現在最も注目される地域の一つがASEAN加盟諸国を中心とする東南アジア。 企業の現地法人の設立や工場の移転、M&A等による進出等の動きが活発化したことで、会計実務への需要も増し、 会計士の活躍の場としても東南アジアの存在感が高まっています。
日本企業による海外でのM&Aは、円安傾向にありながら堅調です。
株式会社レコフが発表した統計によると、2014年、日本企業の海外におけるM&A件数は555件となり、
過去最多を更新しています。そしてそのうち219件、約4割がアジアを対象としたものです。
アジアでの事業展開といえば、大きな存在感を持っているのが中国です。
しかし、日本企業による中国での企業買収は減少の傾向を見せています。
一方、高い増加率を示すのが東南アジアにおけるM&A。国の内訳を見ると、とくにここ数年は、
タイ、シンガポールにおいて大きな伸びを示しています。
そのほか、2億4千万人の人口を抱えるインドネシア、投資ブームに沸くベトナム、
民主化によって投資機会が広がるミャンマーなど、日本のみならず世界中から、新規進出先として注目が高まっている状況です。
巨大成長市場である東南アジアへの進出は日本を含む各国の大きなテーマの一つ。
その手法としては、M&Aのほかにも、製造業、消費財メーカーで行われるOEMでの現地生産、自社の海外法人、
あるいは合弁企業の設立等があります。
M&Aや提携、合弁の手法の共通点は現地企業のデューデリジェンスが必要となることです。
資産や損益の状況だけではなく、カントリーリスク、法務リスク等の観点から企業価値を算定する業務が
展開の成否を分けることになります。
現地の情報を正確に知ることの重要性は、国内企業が現地法人を設立する場合についても同様。
市場や人材に関する調査、100%出資の法人設立の制限など外資規制あるいは奨励制度、会計基準、
国によっては外資系企業への法定監査義務がある場合もあるため、事前に調べておかなくてはなりません。
また、現地国の法人税制、国内法人との取引に関しての移転価格税制、各国との租税条約など、
国際税務の知識も必須であることはいうまでもありません。
監査法人やコンサルティングファームでは、東南アジア進出における手法の選択や市場調査、
また現地企業のデューデリジェンス、契約実務、人事、IPOなどのトータルサポート、アドバイザリー業務を提供しています。
情報収集のためには現地での活動が少なからず必要なため、フットワークの良い若手会計士が現地で勤務するケースも多くなっています。
将来の有望市場であるだけに、若手会計士の間でも、早いうちに東南アジアでの業務を経験し、
関連のスキルを磨きたいというニーズが高まっているようです。監査法人や一般事業会社での会計士の求人では、
アジア展開を念頭に置いたものが多くなることも考えられるため、
海外勤務を目指して転職を考える際には、注目しておくとよいでしょう。