2014年10月23日
リーマンショック後、2000年代初めに活況を呈したM&A市場が急激に落ち込みました。 しかし、昨今の景気回復基調もあり、件数は少しずつ増加傾向にあります。 これは公認会計士の業務内容、また求人の内容にも影響してくる動きであるといえます。
M&A情報誌「MARR」の調査によると、国内のM&Aの件数は、2000年代に入り大きく増え、2006年に2775件とピークに達しました。
しかし、金融不安が表面化し始めた2007年に微減、その後は急激に減りました。
しかし、2011年には約1700件で底を打ったM&Aは2012年にわずかながら増加に転じました。
そして、2013年には2000件近くに上り、前年比20%増。本格的な回復の兆しが見えている状況であるといえます。
2000年代はじめからのM&Aは、海外企業の買収という「IN-OUT型」M&Aが注目されていましたが、現在伸びが期待できるのは、国内企業同士の「IN-IN型」M&Aです。
「IN-IN型」の増加の要因として、景気回復傾向にあるといわれる経済状況の見通し、そして人口減少等社会状況の変化に伴う長期的な業界再編の必要性、
特に中小企業における、経営者の高齢化による事業承継ニーズなどが考えられます。国内のM&Aニーズは後押しされる外部環境があるといえます。
しかし、M&Aはリスクの高い手法でもあります。
企業価値は、評価する人の数だけの価格があるとまで言われ、財務諸表の情報から計算した将来キャッシュフローに基づく価格で企業買収を行うことは困難です。
上に挙げたM&Aの伸びの要因となる環境を見てみると、景気回復による投資需要は、買い手側のニーズであり、M&A価格を引き上げるもの、
そして後継者難による事業承継は売り手側から見たものであり、価格を引き下げる方向に働きます。買収価格の見極めはこれらの状況を勘案しながら行う必要があります。
企業規模や業種によって市場の状況に違いもあることから、企業価値の算定は極めて複雑な要素が絡み合います。M&Aによる事業展開を検討する企業は、
市場の動向、シナジーを分析しながら、適正価格を慎重に検討しなければならないでしょう。
M&A市場の回復傾向から、今後、監査法人、一般企業、あるいはコンサルティングファームでも、企業価値算定に強みを持つ会計士の需要が高まってくることが期待されます。
M&A業務を行う会計士には、DFC法などのファイナンス知識はもちろん、市場動向の分析、財務だけではなく事業DD、法務DDなど、
会計知識にとどまらない多角的な視点、スキルが求められることになるでしょう。