2014年7月28日
近年、経営者の高齢化が進行しており、中小企業の後継者の確保が困難になってきています。
事業承継は短期間で行うことはできず、特に人的承継は時間を要することから、
対策をせずに放置していると相続を行うにあたってトラブルが発生する可能性があります。
銀行や証券会社から中小企業に事業承継を提案することがありますが、経営者の健康面に不安が無い場合には、事業承継に着手しないケースが多くあります。
仮に事業が承継されても、後継者が経営ノウハウを知らないがために、取引先や従業員の信頼を得られず業績が悪化し、最悪の場合廃業に至ることもあります。
日本を支える中小企業の事業継続をサポートするため、事業承継が会計人や金融業界で話題になって久しくなりました。
事業承継は後継者の選定や承継方法などがメインとなり、相続税が関連するのはその一部です。
たとえば、相続で議決権が分散し支配権が無くならないように、遺言や種類株を活用して支配権を維持するためには、会社法などの知識が必要になります。
また、自社株の相続による納税負担を軽減する手法として、個人所有の土地や建物を現物出資により法人に集約する手法や、貸付金をDES(Debt Equity Swap)により株式に転換するなどの手法があります。
また、自社株の譲渡によるM&A (Mergers & Acquisitions)により行うことも事業承継の一つの選択肢です。
ただM&Aを行うにあたっては、本業に悪影響を与えないように従業員のモチベーション低下などを避ける必要がありますし、取引先や持株会が譲渡先になるケースがあるので注意が必要です。
さらに、相続税の金額を事前に把握することや株価算定を行うなど、定期的にシミュレーションをすることで、「知らないで損をする」という状況を避けることも重要となります。
そのため、事業承継を行うにあたっては、デューデリジェンスや会社法の知識など、税務から離れた知識も求められるとともに、経営者の想いをくみとるコミュニケーション能力が必要になるでしょう。
税理士は税の専門家であることは当然であり、経営者の相談に乗るという人材としての需要もあります。
以前は、相続税は専門性が高いため、相続税を扱っている税理士が多くありませんでしたが、
近年、顧問先に事業承継のアドバイスをすることが当然に求められるようになっており、相続税や事業承継の知識を保有することが必須になりつつあります。
相続税に加え何が求められているのか、現在の仕事とは離れて見つめる視点を持つことが重要です。
公認会計士 本田直誉