2014年6月3日
企業は、常に自らが成長する道を模索し、日々その目標に向けた戦略を実行していますが、一口に「成長戦略」といってもさまざまな方法があります。
企業のいわゆる「本業」によって成長を見込むことができれば、大きなリスクを負わずに成長が可能かもしれません。
しかし、企業の属する市場によっては、競争相手が多い、価格競争に陥りやすい等の理由で市場自体の成長が見込めず、企業の成長が困難な場合があります。
かといって、新たな技術の導入や、それに伴う設備投資の実行は、技術の定着や投資の回収に相応のリスクが伴います。
そこで、近年は企業の成長戦略の手法として、M&A(Mergers and Acquisitions)が注目されています。
M&Aとは、企業の合併や買収等の組織再編の総称のことですが、既存の企業の買収であれば、時間を掛けずにその企業のノウハウを手中にすることができるというメリットがあります。
例えば、企業の買収について考えてみます。
ある企業を買収するには、当然その対価の支払いが生じます。対価を決定する過程で行われるのが企業価値の評価です。
対価の決定にはさまざまなファクターがありますが、保有財産等の財政状態や将来の事業計画が大きなウェイトを占めています。
それらの情報を検証し、企業価値の評価に盛り込む過程において、公認会計士が大きな役割を担っているのです。
企業価値の評価にあたり、公認会計士は、財務デューディリジェンス(投資対象の価値リスクを詳細に調査する作業)によって、
不良資産や簿外債務の有無等を検証し、詳細な企業の実態を把握します。
その結果を踏まえ、企業の時価純資産や類似企業(同業他社)の情報、将来の事業計画等を考慮して企業価値の評価を行います。
M&Aの当事者は、算出された企業価値に基づいて買収価額を決定することが通常ですから、M&Aにおいて公認会計士が果たす役割と責任は非常に大きなものになります。
今後、日本企業が成長戦略としてM&Aを選択肢とするケースは、ますます増加するものと考えられています。
というのも、あらゆる市場においてグローバル化が進み、企業にとっては国際競争力が不可欠となりつつあるからです。
すなわち、日本企業のM&A市場は国内にとどまらず、海外のあらゆる国々の企業が対象となり、事実、2013年は海外M&Aの件数が過去最多になったとのデータもあります。
したがって、これからはさらに公認会計士の活躍のフィールドが広がることになり、いずれは公認会計士にとって、企業価値評価に関する知識が常識となる時が来るかもしれません。
公認会計士 高橋和則