2015年3月2日
中小企業を主な顧客とする税理士と大企業を顧客とする税理士では、必要なスキルに違いが出ることが多くあります。
親会社と100%子会社の損益を通算して納税する連結納税もそのひとつです。
しかし、連結納税の件数は年々増加しており、中小企業にとっても存在感が増している状況にあります。
国税庁による平成24年度分「会社標本調査」によると、同年度の法人数は253万5,272社で、前年度より4万3,321社減少しています。
しかしそのうち、連結親法人は1,243社で前年度より157社増加、連結子法人は9,288社で1,185社増加となっています。
連結納税の増加傾向は顕著です。連結納税制度が適用可能となった平成15年分から、その数は増加し続けており、親法人の数は約6倍、子法人は約3.6倍となっています。
連結納税の推進のための制度整備なども進められ、その数はさらに増加するものと予測されます。
税理士業務としては、連結納税を行うか否かの判断、そして導入のための体制整備に関するアドバイザリーが求められることになるでしょう。
連結納税は原則として適用後に取りやめることができないため、導入の判断の際は赤字企業との損益通算の他、繰越欠損金の早期控除、
連結によるガバナンス強化といった利点について情報提供しなくてはなりません。
また同時に、資産の時価評価等の必要、事務作業の増加、各種損金算入枠等が小さくなるなどのデメリットなども詳細に分析する必要があります。
導入を決定した後には、ロードマップを作成して、会計処理基準の統一に関する助言、事業年度の統一等の手続き、
そして決算後の税務調整・申告書の作成といった専門業務を引き続き行うこととなります。
今のところ、主に連結アドバイザリーは大規模な税理士法人で行われていることが多いようですが、
連結法人数の増加が予想されるなか、中小企業を含め、幅広い税理士が手がけることとなると考えられます。
もちろん、従来顧問先となっていた中小企業が連結子法人となるための実務に関与することもありえます。
実際に、中堅税理士事務所・法人において、低コストで連結納税に関するアドバイザリー業務、導入業務、申告・納税業務に積極的に関与する動きも見られるようです。
税理士の求人においても、連結納税の経験は大きな評価対象となるでしょう。
今後は、制度に関する知識、実務経験を早いうちに身につけておくことが重要となってくるのではないでしょうか。