2015年1月22日
TPP参加の議論等で農業の生産性を上げ、競争力を付ける必要性が語られています。 そんな中、大手監査法人が農業従事者へのコンサルティングに本格的に乗り出したというニュースも聞かれるようになっています。 農業が会計士の新たな活躍のフィールドになる可能性について考えてみたいと思います。
農業経営をビジネスとして、より企業に近い形で行う形態として農業生産法人があります。法人設立は現在急速に伸びている現状があり、農林水産省によると平成26年の農業生産法人の数は14,333社。10年で約2倍に増加しています。
農業がビジネスとして高度化していくことは、企業へのコンサルティングと近いノウハウが導入されることを意味しています。
ここに会計士としてのビジネスチャンスがあります。
会計の面では家業としての側面が強い農家に、いわゆる「経営と所有の分離」を促し、財務会計の信頼性を高めることで融資や出資を受けやすくすることができます。
農業特有の補助金や助成金、融資制度等の知識と合わせて資金調達のアドバイスを行うことは、会計士の得意分野でしょう。
農業従事者の高齢化から、事業承継問題も発生しています。法人設立は承継の観点からも見ることができます。
今後は事業譲渡やM&Aが積極的に展開されることも予測され、ここでも一般事業会社と同様に会計士の知見が必要となります。
作物を農協へ卸すだけではなく消費者への直販や食品メーカー、
飲食店との直接契約など販路拡大についてのアドバイスも期待されます。営農に加えて加工や小売りなどを行い、
一次産業である農業に、二次(製造)、三次(小売・サービス)を加える「六次産業化」への支援も重要です。
販路の拡大を目指す場合、マーケティングの観点が必要とされるでしょう。現在はまだ少ない農業者のホームページの作成をはじめ、
規格化された作物だけではない個々の農家独自の「強み」を、世間に向けてアピールする方策を提案することも、
企業コンサルの手法を使って行うことができます。
農業は会計士の関与が進んでいるとは言えない分野だけに、会計士が関わることでイノベーションが期待できます。
これはキャリアアップを目指す会計士の皆様にとっても、おおきな可能性が残されているということでもあります。
もちろん、農業には農地法等の規制や土地による生産性の限界もあり、企業と同様のノウハウで収益性を高める困難も予想され、
経営コンサルティングの知識がストレートに通用するとは限りません。
ただ、農業法人には依然として高い注目が集まっています。その現状を理解し、
今まで培ってきた知識とつなぎ合わせることで「第一人者」を目指す会計士の登場に期待したいところです。