2014年10月10日
海外への資産移動による課税逃れを防ぐため、今年1月から始まった国外財産調書。 12月31日において5千万円を超える国外財産を持つ人は、その財産の種類、数量、価額等を税務署に申告しなくてはならなくなりました。
新しい税制が創設されれば、税理士の仕事も増えます。
顧問先となっている資産家の国外財産調書を作成したり、非顧問先からスポット的に依頼を受け、作成代行のサービスを行う税理士も出てきました。
ほかの法定調書にもいえることですが、国外財産調書は、要件に該当する方は毎年出さなければなりません。
そして、この調書の提出義務のある人は、総じて資産家。贈与税や相続税等、資産税に関して生前に何らかの対策をするがある人がほとんどと言って良いでしょう。
納税を伴わない書類ということもあり、調書作成自体に大きな報酬を望むことは難しいかもしれません。
しかし、一度作成を依頼された場合、スポット業務の報酬にとどまらず、継続依頼が期待できます。
いち早く作成サービスの業務を開始した税理士たちにも、その部分への注目があることは間違いありません。
国外財産調書の作成業務に従事した税理士には、知識的に得られることも多くあります。
相続税額の計算の際、不動産や株式などの評価をする必要があります。その際、海外資産に関しての評価には困難が伴います。
海外不動産には、路線価もありませんし、評価倍率もありません。現地の鑑定士、実勢価格などをもとに計算する必要があります。
また、海外資産の邦貨換算も行わなくてはなりません。
財産の評価額は常に変化しますが、これらの計算を手がけておくことで、海外財産の評価基準に関してあらかじめ整理しておくことができます。
その人について相続が発生した場合も、きわめてスムーズに仕事をすすめることが可能です。
直接的に納税が伴わない調書であるということもある意味でメリットです。
調書に誤りがあれば調査されることはありますし、税理士に正確な調書を作る責任があることは言うまでもありませんが、
率直に言って税額誤りによる追徴、損害がないことは安心感があるのではないでしょうか。
勤務税理士の皆様は、もちろん資産税を含めた税金のプロ。
しかし、実感として、海外に数千万円の財産を持つ資産家について、身近に感じられない人がほとんどだと思います。
調書により、そのような資産家の財産の構造、毎年の財産状況の変化を見ることは、資産税業務、コンサルティング業務を行う上で大きな経験となってくれるはずです。
同制度自体には、適用要件のあいまいさ、課税逃れ防止に関する実効性への疑問等、様々な意見がありますが、税理士の業務知識のステップアップという観点から見ると、
大きな可能性を秘めた制度だと感じられます。