2014年9月11日
医師は税理士とは別分野の専門家です。それだけに、医療に関する知識は豊富でも、会計・経営については重視していないケースも見られます。
実際に税理士の間でも「自計化」のなかなか進まない事業者の一つとして語られていました。
ですがその点が逆に、税理士による医業コンサルのビジネスチャンスにつながっています。
医療経営には一般企業経営とは異なる特性があります。最も大きな違いとして、医療経営には国の政策、法制が大きく関わることがあります。
病院において「売上」の中心は診療報酬です。診療報酬は一定の期間ごとに改定されており、収益に直接的な影響を与えています。
また、実際の診療から診療報酬の入金はタイムラグがあるため、収益が減ると、即座にキャッシュフローが悪化することがあります。
資金調達にも、医療法等で制限があります。病院は株式会社のように株式の発行ができません。
民間の金融機関、福祉医療機構からの融資、補助金、2006年から医療法人に認められている社会医療法人債など、規制の中、調達の道を探る必要があります。
医院の財務コンサルでは、高額な医療機器の設備投資の判断のほか、事業再生やM&A、事業承継など再編を伴う業務に携わることもあります。
これらも、意思決定にかかるファイナンス的な知識を提供するだけではなく、一つ一つの業務について、関連法制を考慮しながら行わなければなりません。
実は、医院の会計業務そのものは、勘定科目などに特殊性はあるものの、「取引先」が多くないこともあり、
それほど困難さがないという面があります。
しかし、医院に関与する税理士として専門性を高めるためには、医療機関の収益構造の特殊性、国の施策に関する知識を身に付けることが必要となります。
たとえば、最新の診療報酬改定が、その病院の収益にどのように影響するのか、ということを損益分岐点の変化等を使って数字で示すことができれば、
医師からの信頼度は高まるでしょう。
これは、診療報酬の仕組みについての知識がある程度なければできない業務です。
今後、高齢化等の影響で、医療の需要が増え、それとともに医療費削減に関する国の施策が講じられる可能性が高くなります。
コンサル需要も高まることが予想され、医療経営に強みを持つ会計事務所の求人が増えていくことも考えられます。
勤務税理士としての関与先に医院・クリニックがあり、記帳代行等の仕事を既に行っている場合は、確実に転職時のアピールにつなげたいところです。
関与先について、診療報酬その他の諸制度に目を向けながら、経営状況を詳細に分析してみることをおすすめします。
また、医療に関する制度改正があった場合、必ずと言って良いほど、「今改正の医院経営への影響」といったテーマでセミナーや勉強会が開かれ、
その多くは会計士や税理士が講師となっています。そういった会合に積極的に参加し、医療の経営に強い会計人との関係を作っておくのもよいでしょう。