仮想通貨に係る会計上の取扱いが年内に公表 ~想定される会計及び税務処理の解説
2017年11月27日
ASBJ(企業会計基準委員会)は、平成29年12月に、仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する指針の公開草案を公表することを目標として検討を行っていることを公表しました。
仮想通貨に係わる会計上の取扱いの主な会計処理の整理
ASBJ(企業会計基準委員会)の議事概要によると、現在想定されている仮想通貨の会計処理を要約すると下記の通りとなります。
(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨に係る資産及び負債の認識)
- (1) 顧客から預かった仮想通貨を、仮想通貨交換業者の貸借対照表に資産として計上する。
- (2) 顧客から預かった仮想通貨は、期末に、自己の固有財産である仮想通貨と同様に、以下の方法により評価を行う。
- ① 活発な市場が存在する仮想通貨の場合、時価に基づく価額をもって貸借対照表価額とする(資産に対応する同額の負債を計上する)。
- ② 活発な市場が存在しない仮想通貨の場合、取得原価により計上する(資産に対応する同額の負債を計上する)。
(仮想通貨の期末評価時の会計処理)
- (1) 活発な市場が存在する仮想通貨の場合、時価に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額(評価差額)は当期の損益として処理する。
- (2) 活発な市場が存在しない仮想通貨の場合、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末日における処分見込価額が取得原価よりも下落している場合には減損処理を行い、取得原価と当該処分見込価額との差額を当期の費用として処理する。)
(活発な市場が存在しない仮想通貨の期末評価)
- (1) 期末日における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が帳簿価額よりも下落している場合には、当該処分見込価額を貸借対照表価額とし、帳簿価額と当該処分見込価額との差額を当期の費用として処理する。
- (2) 減損処理には、切放し法(処分見込価額が回復した場合であっても、戻し入れを行わない方法)を採用する。
(仮想通貨交換業者の損益計算書の表示)
仮想通貨交換業者は、仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入及び売却原価はそれぞれ計上せずに、売却収入から売却原価を控除して算定した純額で表示する。
会計士の目
仮想通貨の会計及び税務上の取扱いですが、現状では下記通り消費税法及び所得税法の取扱いが定まっているだけです。
(消費税法の取扱い)
平成28年6月に公布された資金決済に関する法律により、仮想通貨も硬貨や紙幣と同様に、支払手段として法律的に定められたため、消費税法においても、平成29年7月1日以後の仮想通貨の売買取引は、有価証券に類するものの範囲に含まれることになり、消費税課税対象外となりました。
(所得税法の取扱い)
所得税法がビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係が国税庁により公表され、ビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されることになりました。
(法人税法及び上場企業向けの会計基準及び実務指針で想定される処理)
今後、今年末から来年度初めにかけて法人税法や会計基準、実務指針の取扱いが公表されていくことになると思われます。仮想通貨に係る会計上の取扱いを読む限り、仮想通貨は活発な市場が存在する場合は、売買目的の有価証券の取扱いに近い会計処理、税務処理が想定されます。売却前の未実現損益も損益認識され、法人の場合は課税の対象になる可能性が高いと思われます。
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髙波 博之