2015年7月21日
新規公開(IPO)企業の経営者による不適切な取引が相次いでいます。
その現状を受け、日本取引所グループは日本証券業協会及び日本公認会計士協会を通じ、引受証券会社及び監査法人に日本取引所グループへの新規公開に関する問題点とその対応について協力要請を行いました。
監査・上場コンサルティングに関わる会計士にとって重要な問題提起になっています。
日本取引所グループは、この要請の中で、「市場関係者の不断の取組みにより、金融危機後の著しい低迷状況を脱し回復傾向にあります」としながら、「大変残念なことに、最近、新規公開会社の経営者による不適切な取引など、新規公開に対する株主・投資者の信頼を損ないかねない事例が散見されます」と指摘。
また、日本取引所グループは、新規公開の品質を向上し、株主・投資家への信頼を確保、証券市場の健全さを促進するため、経営者の不適切な取引について上場審査を強化する方針。さらに上場申請会社の経営者・社外役員等に対して、不適切な取引防止のための啓発セミナーを実施するとしています。
もうひとつ問題視するのが、上場直後の業績予想の大幅な修正をするケースです。
上場時に公表される業績予想について、前提条件やその根拠の適切な開示を要請し、上場直後に業績予想の修正開示を行う場合には、それらに関する特に丁寧な説明を要求するとしています。
上場後の業績予想の修正については、上場直後に数度の業績予測の引き下げで株価が急落したケースや、上場数か月で収益を赤字に修正したケースなど、大きなニュースになった事例がいくつかあり、記憶に新しいところ。
今回の指摘・上場審査の厳格化方針は、会計士からも「出るべくして出た」といった声が上がっています。
新規公開企業の適正な取引、正確な財務状況の公開のために、上場審査のために過去の財務状況を詳細にみている監査法人の役割が大きいことはいうまでもありません。
取引所は公認会計士協会に対し「新規公開会社の経営者による不適切な取引への対応の実効性の確保には、とりわけ公認会計士及び監査法人における適切な監査の実施や不正リスクへの適切な対応を欠くことができません」とその重要性を強調しています。
また、監査業務を行う監査法人・会計士だけではなく、証券会社の企業内会計士、IPO支援業務・コンサルティングを行う会計士にとっても、社会的責任の重さを改めて感じさせるものとなっています。
今回の要請については、内容を確実にチェックしておく必要があるでしょう。