2014年5月26日
株式公開の件数はここ数年低迷していましたが、直近において増加傾向に転じたようです。
この状況から察するところ、株式公開を目指す企業、つまり、上場準備企業も増えていると考えられます。
企業にとって株式を公開することは、柔軟な資金調達が可能になるなどのメリットがありますが、
非公開会社が自社の株式を市場へ上場することは簡単なことではありません。
非公開企業が株式公開するためにはなにが必要なのでしょう?
株式公開は、売上高や利益の増加だけでは達成できません。
こうした要素は経済の状況に影響を受けます。景気の良いときは売上高や利益は増加し、景気が悪くなると減少します。
売上高や利益が増加傾向にあるときは、好条件で株式を上場できるため、株式公開の件数は増加します。
しかし、企業にとって株式公開は事業拡大のための資金調達、もしくは知名度向上のための一つの手段として捉えるべきであり、
間違っても株式公開をゴールとみなしてはいけません。
株式を公開した企業には、株主に対して調達した資金を有効に活用して企業価値を向上させる責任が発生します。
事業の拡大や利益の増加、つまり業績を向上させることで企業価値は向上すると考えられますが、
業績を適切に把握するためには管理体制の整備が欠かせません。
多くの非公開会社においては、業績を詳細に管理する体制が十分には整備されていないのが一般的です。
株式公開を目指す前は、管理面では資金繰りが最重要事項と考えていると思われます。
株式公開後も資金繰りが重要であることに変わりありませんが、業績の把握は現金主義でなく、発生主義で行うことになり、
管理のポイントが多岐にわたることになります。結果、管理体制の整備には多大なコストと時間がかかります。
また、その整備には製造部門や営業部門等、管理部門以外の協力も不可欠になります。
そのため管理体制の整備はトップダウンで行うこととなりますが、通常経営者は収益獲得活動、
つまり営業に力を入れていることが多いと考えられます。
このことから、管理面での経験の乏しい経営者のアドバイザーとしてコンサルタントは重要な役割を担うことになります。
IPO(株式公開)コンサルタントの役割は、株式公開実務の知識やノウハウを伝えることにとどまりません。
一営業マンであった非公開会社の経営者の思考を、企業全体を統括する管理者の思考へと導く先導役の一面を有していることを理解する必要があります。
公認会計士 石川理一