2014年7月22日
株式公開をする企業の多くは、言うまでもなく右肩上がりに業績が伸びている企業でしょう。しかし、株式を公開する目的は様々です。
優秀な人材を確保するために自社の知名度を上げるためであったり、場合によっては事業承継を目的とすることもあります。
しかし、本来の株式公開の目的は、それによって企業が発展するために必要な資金を調達することでしょう。
株式公開により企業は新たな資金を手にすることになります。
もともと業績が伸びている企業ですから、この新たな資金を利用して今まで進出していなかった地域に事業投資を実行することで、さらに業績を伸ばすことも可能になるでしょう。
株式公開によって手にした資金の一部は、金融機関からの借入金の返済にあてることがあります。
株式公開によって調達した資金には金利は発生しません。
このため、株式公開で調達した資金を、有利子負債である金融機関借入の返済に充てることは、合理的な判断であると考えられます。
支払利息の金額が減少するため、最終利益は大きくなります。
ただし、株式公開時に新たに株主となった人の多くは、新規の事業投資によって収益や経常利益を増加させ、これにより企業価値が向上することを想定して投資しています。
株主が要求する企業価値の増加は、一般的に金利より大きく、支払利息の減少による利益の増加では満たされません。
そこで、企業は株主の期待に応えるため、企業価値を向上させるための投資を行うことになります。
事業拡大時には一般的に、新規に設備投資が行われ、また、従業員が増加することとなります。
売上高や売上債権だけでなく資産や従業員についても、その管理に時間を要することになります。
株式公開することにより外部株主が増加します。
これに対応するため上場準備段階で株主管理の体制について整備することとなります。
しかし、上述のとおり株式公開により企業環境は大きく変化することとなります。
このため、株主管理に限らず、上場準備段階から株式公開後の企業環境を想定した管理体制整備を進めることが肝要です。
株式公開時には中長期事業計画が作成され、これに基づいて事業活動が行われることとなりますが、この事業計画には管理体制を充実させることも盛り込む必要があります。
公認会計士 石川理一