2014年10月20日
上場を準備する企業のIPO支援は公認会計士の主要業務の一つ。 日本の株式市場におけるIPO件数については注視している方が多いと思います。それに加え、いま企業のあいだで注目されるのが海外市場、とりわけアジアでの株式上場です。
日本市場のIPO件数は、2009年に底を打ち、回復傾向にあります。2013年の新規上場は58社で、2012年の48社から増加。
リーマンショック後からIPOの準備に入った企業が上場を達成している状況にあると言えます。
日本のIPO市場に明るい兆しが見える中、アジア市場でのIPOによる資金調達が世界的に注目を集めています。
とくにIPOによる資金調達が盛んな市場として、香港取引所(HKEX)があります。
香港取引所は、2009年、2010年にIPOによる資金調達額で世界第一位。
そして、2014年上半期の新規株式公開による新規上場銘柄は、直近10年で最多の44銘柄となったとの報道もなされています。
日本企業も、新たな資金調達手法として、アジアの取引所でのIPOを目指す動きが出始めています。
香港市場では、東証上場企業のSBIホールディングス、ダイナムの上場が話題となりました。
そのほかいくつかの日本の大企業が、香港でのIPOを検討しているとの報道も見られます。
香港のほかに外国企業誘致に積極的な市場としては、シンガポール、台湾、韓国などが挙げられます。
アジア各国の取引所は、審査基準が簡素であることも多く、準備期間も短い傾向があり、各社が上場要件などの調査に乗り出しているようです。
アジア市場への上場のためには、審査基準に合わせたガバナンスや財務報告の整備はもちろん、現地の法制、言語などのボトルネックに対応していかなければなりません。
またアジア各国の取引所では、IFRSによる会計のコンバージェンスも進んでいます。会計基準の適用についても課題となるでしょう。
会計士としては、アジア上場のアドバイザリーを行う監査法人、コンサルティングファームの動きが気になるところです。
アジアIPOの支援を行うため、各国の審査基準等の情報を蓄積し、各国に営業所を置くことで、現地で日本語でのサポートを行う体制を築く監査法人も登場しています。
こういった動きが、日本企業のアジアIPOの後押しになることは間違いありません。
アジアでのIPO業務は、会計士として比較的新しい業務であり、業務自体が未経験であっても、語学力やIFRS適用に関する知識に強みがあれば、転職においても大いにチャンスがあります。
アジア経済の行く末には楽観論、悲観論さまざまですが、関連業務を早くから手がけることで、会計士のキャリアとして得られるものは大きいでしょう。
人材募集の状況についても、今後注目をしておく必要がありそうです。