2014年7月10日
IPOを目指す企業にとって、財務報告に係る内部統制を整備し運用することは必須となっています。
経営者は正確な財務報告を行うための内部統制が有効かどうかを評価し報告することが求められています。
さらに、その評価結果を公認会計士が監査することになっています。この仕組みを「内部統制報告制度」といいます。
背景にはエンロン事件やワールドコム事件を受けて米国で内部統制の重要性が認識され、
サーベインズ・オクスリー法(いわゆるSOX法)が制定されたことが発端です。
わが国でも西武鉄道事件やカネボウなどの粉飾決算が明るみに出て、その防止のため2009年3月期決算から導入されました。
IPOを目指す企業は株式公開を申請する期間からこの制度が適用されます。
しかし、IPOを目指す規模の小さい企業にとって、この負担は重く、株式公開の意欲を阻害するという声が挙がっていました。
わが国ではトップダウン型のリスク・アプローチの活用、ダイレクト・レポーティングの不採用など、一定の配慮が行われていますが、
この不満を解決するには至っていないのが実情でした。
これを受けて、2014年5月14日に成立した改正金融商品取引法で、IPO企業の負担軽減措置として、内部統制報告書の監査が3年間免除されることになったのです。
2015年に施行され、企業の株式公開を後押しして経済の活性化につなげることが目的です。
ただ、影響力の大きい大手企業(資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上)のIPOは、規制緩和の対象外です。
規模の小さいIPO企業だけが、公認会計士による内部統制監査を申請期から3年間免除されることになったのです。
2015年から規模の小さいIPO企業は、内部統制監査を免除されることになりますが、規模の大小にかかわらず、
申請期から内部統制報告書の開示が義務付けられていることに変わりはありません。
IPOを目指す企業は、依然として、内部統制の整備についての課題を洗い出し、優先順位をつけて解決する必要があります。
そして、申請期までに内部統制を運用し定着させ、文書化、テスト、不備の是正を行う必要があります。
IPOをしたいと考える企業が増えてきています。
このような状況を背景に、IPO企業の負担を軽減しながら制度に耐えうる内部統制の構築をアドバイスができる内部統制コンサルタントが必要になっています。
公認会計士 南成人