2014年5月29日
上場準備会社は増加しているものの、収益が年々向上していても、管理体制が十分に整備されている会社は多くないでしょう。
売上高等の業績の管理や資金管理の体制についてはある程度整備されていても、貸借対照表にわけのわからない残高が残っているケースはよくあります。
将来的にこのような残高が積みあがって、無視できない金額になる可能性もあります。
上場会社にはaccountability、日本語に訳すと「説明責任」が求められています。
このため、基本的には、どれほど少額であっても、貸借対照表のすべての残高について説明可能となるような体制を整備することが必要です。
上場企業では当たり前のように行っている管理が、多くの中小企業では行われていません。
売上高や資金の管理はしていても、例えば従業員の社会保険について適切に会計処理をしていない会社や、
契約書の内容を十分に理解することなく会計処理をしている会社は少なくないでしょう。
また、売上高向上を重視するあまり、取引相手の財政状態の悪化に気づかぬまま取引を行ってしまうこともあり得ます。
これらのすべてを管理するのは根気のいる作業になります。
場合によっては経営者に対する未精算の多額の仮払金が発覚するなど、その解消にかなりのエネルギーを要することがあります。
また、説明のつかない残高が発生した原因を追究するためには過去数年の会計記録や証憑書類(取引の証拠となる書面)を調べなければならず、悶々とすることもよくあります。
そのような過程を経てすべての貸借対照表項目について説明可能な明細を整備した上で、新たに説明不能な残高が発生しないための管理体制を構築することになります。
この管理体制構築には、乗り越えなければならない多くのハードルが存在するのです。
上場準備の作業の初期においては、複数の部署を横断した上場プロジェクトチームが設置されることになります。
上述のような管理体制を整備することは簡単ではありません。
そのためには、企業の各部署の協力が必要不可欠です。各部署の協力を仰ぎながら、実際の整備の作業は管理部門が進めることになります。
会社を取り巻く情報を一つ一つ整理していくのには困難を伴います。
そこから収益が発生する作業ではないため、それほどの面白さも感じられないでしょう。
しかし、それらのハードルを乗り越えた後には、業績指標を適切にとらえることが可能となり、経営判断に資する情報を適切に把握することができるようになるのです。
その先には企業のさらなる発展が見えてきます。
公認会計士 石川理一