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第5章 決算書の読み方 第3節 他社と比較する

1.他社と比較すると自社の業界内での立ち位置がわかる!

最後に、他社と比較する方法を紹介します。業種の異なる会社同士を比較しても良いですが、おススメは同業他社との比較です。同業他社と比較することによって、自社の業界内での立ち位置や強み、弱みを知ることができるからです。

2.日本一の売上高を誇るトヨタ自動車のライバルは?

先ほどから、日本一の売上高を誇るトヨタ自動車のケースを紹介しているので、ここでもまずは、トヨタ自動車の属する自動車産業の会社を比較してみたいと思います。トヨタ自動車のライバル会社というと、みなさんはどこをイメージしますか?

トヨタ自動車の他にも、日産やホンダなど有名な会社がたくさんありますよね。ホンダが自動車の製造販売に乗り出したのは比較的遅かったので(昭和38年に販売開始)、歴史的にみるとトヨタ自動車のライバルは日産を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

ですが、売上高で比較すると、自動車産業でトヨタ自動車に次ぐ売上高をあげているのはホンダです。ホンダの2017年3月期の連結ベースでの売上高は約14兆円です。そしてホンダの売上高はトヨタ自動車に続いて日本第2位の売上高です。

日本第2位に売上高というと素晴らしい成績といえると思いますが、トヨタ自動車と比較すると、同年のトヨタ自動車の売上高が約27兆円だったので、約半分ということになります。

ホンダからすると、日本第2位はうれしいことかもしれませんが、ライバルのトヨタの半分というのは、少し悔しい思いをしているかもしれません。ちなみに日産の売上高は約11兆円です。

日産の売上高は日本企業全体の第4位なので、ライバルには後れをとっているかもしれませんが、日本企業全体でみると素晴らしい業績だといえます。

3.スーパー、コンビニなどを擁する小売2強の争いは?

イトーヨーカドーやセブンイレブン、さらにそごう西武といった百貨店をも擁するセブンアンドアイ。一方、イオン、ミニストップ、そして数年前には同業のダイエーをも飲み込んだイオン。

両社とも、プライベートブランドで商品を開発販売したり、独自の電子マネーを持っていたり、さらには銀行をも営んでいる等、何かと共通点が多いです。この永遠のライバルともいえる2社の売上高はどうなっているのでしょうか?

2018年2月期決算においてセブンアンドアイの売上高は約6兆円で、イオンの売上高は約8兆円でした。イオンの方が勝ってはいますが、ほぼ互角の戦いといえそうです。

このように、同業他社の決算書を比べることによって、業界の状況が良く分かるようになります。また経済新聞や経済誌の記事だけではわからない企業の本当の姿を知ることができます。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。