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第3章 決算書の提出 第3節 その他の提出先(銀行、保証協会、取引先など)

1.金融庁や税務署以外の提出先は?

金融庁や税務署に対する提出は、法にもとづく強制的なものですが、それ以外にも会社は任意で決算書を提出することがあります。任意で決算書を提出する場合の代表例は、銀行や取引先です。

2.銀行からお金を借りる場合は、決算書の提出がもとめられる!

会社が銀行からお金を借りようと思って銀行に行くと、銀行は必ず決算書の提出をもとめてきます。銀行は、決算書からその会社にお金を貸しても大丈夫か、あるいは、いくらまでなら貸しても大丈夫なのかを判断する必要があるからです。

例えば、あるベンチャー企業の貸借対照表を見てみたら、現金が少なく借金も多少多めだったけれども、損益計算書を見てみたら、ここ数年倍々ゲームで利益を伸ばしていたとします。それであれば、この会社は今後も成長が見込めるということで、お金を貸しても大丈夫であろうと判断するわけです。

逆に、ある老舗企業の損益計算書を見てみたら、ここ数年赤字続きだったけれども、貸借対照表を見てみたら、現金は少ないけれども土地を莫大に持っていたとします。それであれば、土地を担保にお金を貸すことによって、万が一、この会社がお金を返してくれなければ、土地を売り払って現金を回収出来るので、お金を貸しても大丈夫であろうと判断するわけです。

このように、銀行は融資をもとめてきた会社に対して、融資の可否を判断するうえで決算書が欠かせない存在となるので、会社に対して提出をもとめます。その結果、会社は銀行からお金を借りたいと思ったら、決算書を銀行に提出する必要が生じるわけです。

3.取引先から決算書の提出をもとめられた?

取引を開始するにあたって、取引先が決算書の提出をもとめてくることもあります。例えば、取引先が売る側で大企業だったとします。それに対して自分のところは、規模の小さな会社だったとします。

そうすると、売る側の大企業は自社に対して、「この会社に商品を販売しても、きちんと代金を回収できるであろうか?」と不安を感じることがあるわけです。このような場合、取引の開始にあたって、売る側の大企業が自社に対して決算書の提出をもとめてきます。

売る側の大企業は、提出された決算書を分析して、支払能力があるか否かを判断するわけです。ちなみに、売る側のこのような行為のことを与信管理といいます。

4.まだまだ決算書の提出先はある!

上記以外にも、決算書を提出するシーンはあります。例えば、建設業の会社が公共工事の入札に参加する場合は、国や地方公共団体に対して決算書を提出します。あるいは、医療法人などの業種は、都道府県に対して決算書を提出することがあります。

また、社会保険料を納付していない会社などに対しては、社会保険事務所が支払能力の有無を見るために、決算書の提出をもとめてくることもあります。

このように、会社がさまざまな商行為を行おうとすると、いろんな場面で決算書の提出が必要となります。業績が悪いと、決算書を他人に見せたくないと思うのが人情だと思いますが、決算書の提出を行わないと会社が前に進んで行かないので、常に提出できる準備を心がけることが大切だと思います。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。