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第2章 決算書の閲覧 第3節 信用調査会社や株主・債権者の権利を用いる方法

1.決算公告で決算書を閲覧できない場合

前節で中小企業の決算書の閲覧は、決算公告という手段があるものの、決算公告を行っていない中小企業も多いので入手できない場合も多いと話しました。では、決算公告以外で中小企業の決算書を閲覧する方法には、どのようなものがあるかを紹介したいと思います。

2.信用調査会社を利用する方法

まず1つめとして、信用調査会社を利用する方法があります。有名な信用調査会社として、帝国データバンクとか東京商工リサーチといった会社があります。特に帝国データバンクに関しては、経済ニュースなどでもよく出てくるので、ご存知の方も多いのではないかと思います。

信用調査会社は、いろんな会社の長年の決算情報等のデータを蓄積して持っており、あるいは現地調査を行って、その会社から直接ヒアリングなどを行って決算情報等を入手し、依頼者に情報を提供するわけです。

この方法は、上手くいけば閲覧したいと思っている会社の決算書を入手することができますが、多少コストがかかってしまうのが難点といえるでしょう。また、中には信用調査会社に情報の提供を渋る会社もあったりするので、必ず決算書を閲覧することができるとは限らないという欠点もあります。

3.株主、債権者の権利を用いる方法

2つめは、株主や債権者といった限られた立場の方のみ閲覧することができる方法です。会社法に、以下のような規定があります。

(第442条3項)
株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる(省略)。 一 計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧請求(以下省略)

よって、株主や債権者といった会社に近い立場の方であれば、このような権利を利用して、決算書を閲覧することができるわけです。

4.税務署、法務局では決算書は閲覧できない!

たまに勘違いをしている方がいるので述べておこうと思うのですが、税務署や法務局では決算書を閲覧することはできません。税務署の場合は、過去に提出した自社の分に関しては閲覧することができますが、他人は閲覧できません。また法務局では、会社の登記情報を他人であっても入手することができますが、決算書は登記情報に含まれませんので、閲覧することはできません。

決算公告を行っていない中小企業の決算書を閲覧する方法を述べましたが、株主、債権者の権利を用いる方法の場合は、その立場にないとできない方法なので、ちょっと特殊な方法といえます。ですから、一般的にはやはり信用調査会社を利用する方法になると思います。ですが、この方法でも完全に入手できるわけではないので、中小企業の場合は決算書を閲覧することができない可能性もあると思っておいた方が良いでしょう。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。