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第3章 決算書の提出 第1節 金融庁

1.どのような会社が金融庁に対して提出するのか?

株式会社は各事業年度終了後、3ヵ月以内に決算書(財務諸表)を金融庁に提出しなければならないのですが、これはすべての株式会社が対象というわけではありません。基本的には証券取引所に株式を上場している会社が対象となります。

日本で最も有名かつ大規模な取引所は、東京証券取引所です。東京証券取引所には、第1部、第2部、マザーズなどがありますが、それらの市場に上場している株式会社の数はおおよそ3,000社です。ですから、おおよそ3,000社の株式会社が金融庁に対して決算書を提出していると考えて良いでしょう。

2.なぜ、提出しなければいけないのか?

ではなぜ、株式を上場している会社は、決算書を金融庁に提出しなければならないのでしょうか。

それは、決算書が会社の状況を知り得る重要な手段となっているからです。株式を上場しているような大きな会社は、会社を取り巻く利害関係者が多数にわたります。株式投資に関する利害関係者は、現時点で株式を保有している株主やこれからその会社の株式を購入しようと思っている投資家などです。

株主であれば、今後もこの会社の株式を持ち続けても良いのだろうか、今のうちに売却した方が良いのではないか、という判断をする際に、投資家であれば、この会社の株式を買うべきか、いやいや他の会社の株式にするべきだろうか、という判断を行う際に、会社が公表している決算書を用いるわけです。

会社が金融庁に提出した決算書が、前述のEDINETなどで世の中に公表されるので、それを株主や投資家は利用して、投資意思決定に役立てるわけです。それゆえ、上場している株式会社は、決算書を金融庁に提出する必要があるわけです。

3.会社が提出した決算書にウソはないの?

株式を上場している会社は、決算書を金融庁に提出して、世の中に公表するわけですが、決算書の内容、特に利益は多ければ多いほど良いに決まっています。利益のたくさん出ている業績の良い会社は、みんなが株式を欲しがるので株価もグングン伸びていきます。

逆に業績の悪い会社の株価は、みんな手放そうとするので株価は下がっていきます。ですから、悪い経営者や魔が差した経営者によっては、決算書をごまかして、業績を良く見せかけようとすることがあります。これを粉飾決算といい、近年であれば東芝やオリンパスといった、日本を代表する大企業ですら、このようなことを行ってしまいました。

4.公認会計士がインチキを防ぐためにチェックします!

会社が公表した決算書にインチキが行われてしまっては、証券取引制度そのものが成り立たなくなってしまいます。

そこで、会社が公表した決算書にウソはないということを証明するために、会社とは利害関係のない客観的な第三者がチェックすることが必要になります。それが公認会計士による監査です。実際には、大企業の監査を公認会計士が1人で行うことは不可能なので、公認会計士が集まってできている監査法人が監査を行います。

公認会計士や監査法人が、この会社の作成した決算書にインチキが行われていないという証明を与えることによって、決算書の信頼性が得られることになります。

執筆者プロフィール

南 伸一
簿記の教室メイプル代表

1971年鹿児島県生まれ。
1995年公認会計士2次試験合格。大手監査法人に勤務後、1997年に簿記の教室メイプルを立ち上げる。大手町校(東京都千代田区)と草加校(埼玉県草加市)の2教室の他、通信講座も行っている。著書に「絵でみる簿記入門」(日本能率マネジメントセンター)、「超スピード合格日商簿記3級」(成美堂出版)、「ギモンから逆引き!決算書の読み方」(西東社)などがある。

現在は、教室の経営、講義、執筆の他に、大手TV局100%子会社の財務・経理の責任者業務、大手電力会社の審査担当部署の会計アドバイザー業務、監査法人での監査業務など、様々な実務にも携わっている。