2018年2月2日
ぜひとも、厚生年金保険に加入していない中小企業の顧問税理士の方々に読んでいただきたい本です。
一口に、「社会保険」といってもその内容は、広義であるか、狭義であるかで、かなり範囲が異なります。本書では、狭義の社会保険、つまり、厚生年金保険について、マイナンバー制度導入後の加入督促が厳しくなる状況をふまえ解説しています。
具体的には、①厚生年金保険に加入していない会社が、加入すべきかどうか、さらに、②従業員の家族を扶養対象とすべきかどうかの判定など、事例を交え検討しています。
冒頭で述べたとおり、本書の読者対象は、専門家である社労士から、この領域での知識があるに越したことのない、中小企業の経営コンサル的なニーズにも応えなければならない税理士の方々に加え、会社において社会保険の担当している総務部や財務部、あるいは経理部の方々に向けた内容といえるでしょう。
さて内容ですが、まずは上述①についてです。社会保険は会社であれば加入しなければならないものですが、多くの中小企業が長年加入せずに経営してきているのが現状です。なぜ加入しないかといえば、国民年金と違って、厚生年金は多くの場合、50%を会社が負担するためです。この負担分が12カ月続くと、カツカツで経営している中小企業には結構なダメージとなるのです。加入しないということは法に反しているわけですが、特に罰則もないので、真剣に加入の是非を検討している経営者は少なかったと思われます。そこへ、マイナンバーカード制度の導入で、俄然、日本年金機構による加入促進の頻度が増してきているなか、果たして、加入すべきか、個人事業に戻すか、さまざまなケースを掲げ、検討しています。
次に②です。①が会社の対応とすれば、②は個人の対応となるのでしょうか。しかし、個人差はありますが、それ程詳細な知識を持たない従業員の判断は、会社の社会保険担当者に頼らざるを得ないということになるのでしょう。その保険担当者の方にぜひとも知っておいてもらいたい第3号被保険者の条件や「106万円の壁」と「130万円の壁」などについて、本文は当然として、「女性社労士の眼」というコラムでも念を押している点が嬉しい配慮である。
全体を通して感じることは、遺族年金や障害年金などは中途半端な解説になっていないか、調査の記述が果たしてこの本に必要だったか、ということ。上述の①②に絞った内容にした方がこの本の使命を全うできたように感じます。
いずれにせよ、くどいですが、税理士の方々に読んでいただきたい本です。